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淄博(シハク)市「淄博陶磁瑠璃博物館」展示企画(前編)

 山東省にある淄博(シハク)市をご存知でしょうか?昨年、中国で爆発的な「淄博(シハク)バーベキュー」ブームが巻き起こり、淄博市は一躍有名な町となりました。日本のニュースでも取り上げられたことがあり、その名を知っている方もいるかもしれません。
 淄博には、2019年の秋に完成した「淄博陶瓷琉璃博物館」という博物館があります。多くの観光客が尋ねる人気ぶりだと中国のニュースで耳にし、「あの博物館も注目されるようになってきたんだな…」と感慨を覚えました。
 そう、実はこの淄博陶瓷琉璃博物館はナカシャとも業務で関わりのあった博物館なんです!

ことの発端は…

 少し前の事になりますが…….始まりは2018年の初め、南京大報恩寺遺跡博物館の王興平館長からのお誘いでした。当時、陶瓷瑠璃博物館はまだ計画段階で名前すら正式に決められていませんでした。当初の総建設面積は5万平米近く、展示面積は2万平米にも及び(四階建て、地下一階)、後に中国一級博物館となる巨大博物館です。

当時、建設設計会社が作った完成イメージ図


 その頃、王館長は淄博市や設計会社から依頼を受け、館全体の展示計画を監修されていました。企画案では、地上は歴史文化を紹介しながら実物を展示し、地下一階では子どもたちが楽しめる体験館を予定していました。
 海外のアイディアを取り入れたら面白いのではないかという王館長の考えで、当社に展示コンテンツの共同提案の相談がありました。
 これも何かのご縁ということで、ナカシャ初めての中国での展示企画に挑むことになりました。

まずは知ることから

 企画提案のためにまず、淄博や陶瓷瑠璃に関する情報収集と調査から始めました。
 淄博市の日本での知名度はそう高くはありませんが、市の歴史は古く、かつて陶磁器絹織物で栄えた町です。現在は、工業都市として発展しています。また、「陶瓷」というのは日本語の「陶磁」と同じ意味で、粘土などを主原料にした焼き物の総称です。そして、「瑠璃」はガラスを意味しています。中国の瑠璃業(ガラス工業)の歴史は古く長い歴史があります。発掘された考古資料によると、山東省にある博山の瑠璃業は千年以上の歴史があるそうです。清代までにはすでに全国の瑠璃業の中心地となっており、淄博市を含めた山東省が名実ともに「瑠璃の郷」であることがわかりました。

つぎに、提案の対象となる展示の一部である体験館の情報整理です。
 体験館の予算:約3.6億円
 展示室の広さ:800㎡
 博物館の要望としては、海外の先進技術を導入したいということで、3DプロジェクトマッピングやARの技術などを視野に入れて検討しました。
 できる限り陶磁や硝子を表現できるコンテンツを考えて40個近くの案を出し合い、その中から更に抜粋し、より良いアイデアを提案書に落とし込むことにしました。では、当時の提案をご紹介します。

企画段階の案の一部


ナカシャクリエイテブが考案したメイン企画

その一 瑠璃の世界を楽しむ 西遊記<竜宮の旅>
西遊記に登場する竜宮城の空間を瑠璃で再現し、体験する企画です。自身を投影した孫悟空と東海竜王が会話を実際に交わすなど、物語世界に入り込める内容を考えました。動画やAR機能の組み合わせも検討しました。

自分の顔となった悟空が竜宮に行くイメージです


その二 瑠璃を作っちゃおう デジタル瑠璃工房
 デジタル上で瑠璃の原料を合成や、瑠璃の器の設計などが体験できるコーナーです。材質や形状、文様、色などを選ぶことができオリジナルの器作り体験ができます。

自分のオリジナル瑠璃器を作ることができるデジタル瑠璃工房
タッチパネルで好きな色や模様などを選び、目の前の職人さんに作ってもらうイメージ


その三 瑠璃の音色を聞く
 瑠璃(ガラス)は楽器にもなります。陶磁素材や硝子素材、叩いて音の違いを楽しみ、また、壁や床に映像を映し出し流れる音楽とともに聴覚だけでなく、視覚でもるりの音楽を楽しめる空間です。

投影と光の演出で、様々なガラスや陶磁器の音色を楽しむイメージです。


その四 「瑠璃」を食べてみる
 ガラスの欠片そっくりな瑠璃糖を実際に作ることができるコーナーです。企画のために飴細工など商品を購入し、社内で比較検討し瑠璃博物館に合いそうなものを提案書に取り入れました。

琥珀糖の提案
最終段階の提案資料


 そうして、ようやくナカシャの提案書が完成しました。いざプレゼンへ!関係者たちの反応に期待しつつ、中国の現地に向かいました。
 どのような結果になったのか、プレゼン提案のお話は「淄博(シハク)市の「淄博陶磁瑠璃博物館」にご提案(後編)」で詳しく説明します。

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