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【森がいく!!#2】全国の博物館がつながり合う3日間


はじめに

 学会というのは主に春と秋に実施されます。そのため、この時期は学会ラッシュで1週間おきに学会に参加するということも珍しくありません(参加したい大会やイベントが重なることもしばしば…)。前回のNOTEではデジタルアーカイブ学会の参加報告をしましたが、今回は全国博物館大会での企業出展について報告したいと思います。

1.博物館業界の一大イベント

 全国博物館大会は、公益財団法人日本博物館協会が主催する大会です。日本博物館協会とは、博物館関係者が入会している団体で、博物館に関する諸事業を通じて博物館や文化の発展などに寄与することを目的として活動しています。

 全国博物館大会は毎年1回開催されており、大会には全国から博物館関係者が集まり講演、フォーラム、シンポジウム、分科会などを通して博物館の課題について研究、協議がおこなわれます。第71回目を迎えた今年の大会メインテーマは「博物館法改正元年―つながり、交差する―」。節目の年に皆が集い博物館の未来を考える、まさに博物館業界の一大イベントです。(大会の詳細は公式HPをご覧ください )

 会場には企業ブースもあり、収蔵品管理システムや博物館の運営をサポートしてくれるシステムなど、博物館に関わる商品を取り扱う企業が多数出展しています。今回、文化情報部でも近年主力のデジタルアーカイブシステムを中心とした商品をご紹介するため、企業出展をしました。

博物館法の改正は文化財関連の業界では大きな話題の一つ

2.博物館とデジタルアーカイブの間にある課題

 大会は11月15日(水)から17日(金)までの3日間、千葉市文化センターを主会場として開催されました。(実は、千葉県は今年誕生150周年という記念の年でした!)企業出展は15、16日の2日間です。大会のプログラムでは博物館が直面する様々な課題が採り上げられますが、デジタルアーカイブやDXについても注目が集まっており、フォーラムや分科会でも議題となっていました。

会場にもチーバくんが

 その背景には、本大会のメインテーマにも示されている博物館法の改正があります。改正により第三条(文化財の事業)三「博物館資料に係る電磁的記録を作成し、公開する事。」が新たに追加されたため、博物館は収蔵資料のデジタルアーカイブについて考える必要が出てきたのです。もちろん、既にデジタルアーカイブ化を進めている諸施設はありますが、方法や進め方など疑問や課題を抱える施設も少なくありません。

 デジタルアーカイブについては文化情報部でも、おだわらデジタルミュージアムをはじめとして、文化財の紹介と共に3DやVRなどさまざまなコンテンツを搭載した文化財鑑賞システムを商品の一つとして扱っています。そこで今回の出展では、収蔵品をデジタルアーカイブで公開活用する魅力を、博物館関係者の方々にPRすることにしました。

 また、前段階にあたる資料整理や資料撮影も含め、デジタルアーカイブをトータルでサポートできるという文化情報部のポイントも紹介しました。出展にあたっては、文化情報部の取り組み全体を知ってもらえるよう、事業紹介を中心としたA1×3枚分の大型ポスターを製作しました。

準備は完璧!

3.出展ブースは情報交流の場

 大会当日、ブースは多くの方々が行き交い、あちらこちらで情報交換がおこなわれる賑やかな場となりました。参加者がシンポジウムや講演などを聞いている時間帯は企業の方同士が語り合い、お互いの事業説明や仕事で協力できる点などについて話を交わしました。よく知っている身近な企業の方とはお互いを再認識し、今まで関わりのなかった企業の方からは、自分が知らなかった技術や取り組みを教えていただき、時に和気藹々と、時に刺激をもらうことができました。

久しぶりの方との出会いもあれば、初めての出会いもありました

 一方、企画の合間の休憩時間には、博物館関係者の方々がブースに集まります。訪れた方々から施設やデジタルアーカイブに関する悩み、相談をお聞きし、デジタルアーカイブで何ができるのかご提案しました。中には「やらなければならないとは思っているけどなかなかできていない」「どのようなデジタルアーカイブが良いのか検討中」などデジタルアーカイブに対して様々な思いが聞かれました。

 そのため、ブースではチラシを配布し、VRや3Dも紹介しつつ、デジタルアーカイブでこんなことができる、という可能性を感じてもらいました。実際にデジタルアーカイブを鑑賞した方からは、「こんな見せ方ができるんだ」「こんなにキレイに画像が見られるんですね」など関心の声もいただけました。

ブースには多くの方々に訪れていただきました

 2日間を通して多くの博物館関係者の方々と交流することができました。ただし、一口に博物館と言ってもすべての館が文化財を展示しているわけではありません。美術館、資料館、科学館など展示物は館によって千差万別で、課題もまた館の数だけあります。課題を適切に汲み取った上で、どのような提案をすべきなのか。学ぶべきことがまだまだあると実感しました。

4.博物館の役割と「つながり」とは

 最後に、大会の企画内容をいくつかご紹介します。基調講演は「つながりをつくる博物館―多世代共創とウェルビーイング―」と題して、国立アートリサーチセンターの稲庭彩和子氏がミュージアムの社会的役割の一つが人々の間に「つながりをつくる」ことであると、実践事例を交えてご講演いただきました。事例の一つ、新しい学びの機会を創出する「Museum Start あいうえの」は、子供たちの美術館体験を高める取り組みとして非常に効果的であると感じました。

「ウェルビーイング」とは心身、社会的に満たされた状態のこと

 全国博物館フォーラムでは「改正博物館法を現場の運営に活かす」をテーマに、博物館運営状況の点検・評価や改正博物館法の解釈など、複数の視点から博物館運営の今後を考える議論が交わされました。

いずれも興味深い内容であるとともに、博物館には課題もありますが、それ以上に多くの可能性があると感じました。

おわりに

 今回の博物館大会の出展は非常に多くの事を学ぶことができたと思います。日々業務をしているだけではわからない博物館関係者のリアルな声を聞けただけでなく、博物館の世界では何が考えられておりどのような取り組みが進んでいるのかなど、様々な角度から博物館の現状を知ることができました。

 博物館に携わる皆様の課題を解決できるよう、今後も業務に取り組んでいきたいと気持ちを新たにした、そんな2日間でした。

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