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大企業とベンチャーの違い、フィットしやすい人の違いとは?

こんにちは。

私が就活していた2006年頃はまだベンチャーへの就職がそこまで大きな選択肢ではなく、とりあえずみんな大企業を目指して就活するという時代でしたが、この15年で様相が大きく変わり、就活や転職活動の際にベンチャーを志す人もかなり増えてきている印象です。
(実際私も今まで所属してきた4社のうち2社はベンチャーです)

ただ、大企業とベンチャーの社風や風土の違いはかなり大きい一方、具体的に何が違い、そしてどんな人が大企業に/ベンチャーにフィットしやすいかという説明は思ったほどされていないように思います。

そこで、大企業にもベンチャーにも所属経験があり、それぞれの企業で人事として何千人という方々とお会いしてきた経験を元に、上記の違いを明らかにしていこうと思います。

大企業とベンチャーの事業面における違いとは?

まず、大企業とベンチャーの線引きも実は明確ではないように思うので、この記事での定義を決めたいと思います。

まず大企業について、
法律で「大企業」そのものが定義されているわけではなく、中小企業基本法第二条で定義された「中小企業」の反対解釈として「大企業」とみなすのが一般的である。その場合、大企業の定義は以下のようになる。

1.資本金の額又は出資の総額が3億円を超え、かつ (and) 常時使用する従業員の数が300人を超える会社及び個人であって、製造業、建設業、運輸業その他の業種(次号から第四号までに掲げる業種を除く)に属する事業を主たる事業として営むもの
2.資本金の額又は出資の総額が1億円を超え、かつ (and) 常時使用する従業員の数が100人を超える会社及び個人であって、卸売業に属する事業を主たる事業として営むもの
3.資本金の額又は出資の総額が5000万円を超え、かつ (and) 常時使用する従業員の数が100人を超える会社及び個人であって、サービス業に属する事業を主たる事業として営むもの
4.資本金の額又は出資の総額が5000万円を超え、かつ (and) 常時使用する従業員の数が50人を超える会社及び個人であって、小売業に属する事業を主たる事業として営むもの
出典:wikipedia

なので業界によって定義は異なるものの、全てを包含すると資本金の額又は出資の総額が3億円を超え、かつ常時使用する従業員の数が300人を超える会社でしょうか。

続いてベンチャーについては、
企業として新規の事業へ取り組むことをいう。このような事業をベンチャービジネス(英:Venture Business)という。事業は新規に起業した企業によって行われるものを指すことが多いが、既存の企業が新たに事業に取り組む場合も含む。
なので、本来的には新規事業のことを指すが、新しい事業を起こした企業をベンチャーと指すことが一般的になっているように思います。

ちなみにベンチャーとスタートアップが同じ意味で捉えられることも多いですが、厳密にはスタートアップとは「まだ世の中にはないアイデアを新しいビジネスにすることで市場を開拓する企業」のことなので、ベンチャーの中の更に一部分という認識が良さそうです。

では上記も踏まえ定義を決めたいのですが、大企業とベンチャーという2つの区分だけでは網羅的でないので、中小企業やメガベンチャーという区分も含めて整理してみます。

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この違いをテキスト化すると、
大企業:企業規模が大きく、稀に新規事業も発生するが事業の新規性は概ね小さい
ベンチャー:企業規模が大きくはないが、事業の新規性は大きい

中小企業:企業規模が大きくはなく、事業の新規性は基本的に小さい
メガベンチャー:企業規模が大きくなり事業の新規性が小さくなりつつある
となります。

もちろん大企業で社内ベンチャーが立ち上がることもあるし、時代に合った/時代を先取りした新規事業を作ろうという意識もあるとは思うのですが、それが実際に形になることはどうしても少ない印象です。

ではなぜ大企業では新規事業が形になりづらいのか。その理由を紐解くために「企業」という存在の特性や社会的使命についても念のため確認しておきたいと思います。

企業とは、
営利を目的として一定の計画に従って経済活動を行う経済主体(経済単位)である 出典:Wikipedia

なので、「営利を目的として」つまり利益を出すことが目的という点が大きな特徴です。

また、経営学では企業の寿命30年説が割と一般的だと思うのですが、日本では30年スパンでスクラップ&ビルドする考え方はあまりなく、50年でも100年でも企業を存続させることが当たり前になっている印象です。
したがって、日本企業は
・利益を出し続けること
・30年と言わず、50年でも100年でも存続すること

を使命として負っていて、大企業ほどその傾向が強いように思います。(ベンチャーはほとんどが3年や5年以内に存続できなくなっているので)

では、大企業が上記使命を達成するために経営者が何を考えるかですが、恐らく
・安定的に利益を生み出せる既存事業に引き続き注力していく
・新規事業にトライして失敗し、利益を圧迫するリスクは取りたくない
という思考になりやすい気がしています。

一方でベンチャーはどうか。
新規事業に積極的に取り組むのは当たり前ですが、裏返すと安定的に利益を生み出す事業が少ないとも言え、創業後3年、5年、10年と経っても安定的な収益の柱が立たない/増えないベンチャーは、収益の柱を見つける/増やすべく新規事業にトライし続けているのではないでしょうか。

と、少し長くなってしまいましたが、改めて整理すると
大企業:企業規模が大きく、相応の利益を出し続けるために既存事業への注力が優先され、リスクを取って新規事業にチャレンジするケースは少ない

ベンチャー:企業規模が小さく、安定的な収益の柱がまだ見つかっていないため、その柱を見つける/増やすためにリスクを取って新規事業に積極的にチャレンジし続ける
という違いがあると考えます。

続いて、ある意味みなさんが一番気になるかもしれない、大企業とベンチャーの報酬水準や働き方の違いについても比較してみます。

大企業、ベンチャーの報酬水準や働き方の違い

一般的に想像/認知されている内容とあまり相違ないと思いますので、知ってるよ!という方は読み飛ばしていただいても問題ありませんが、せっかくなので「なぜそのような違いが生じるのか」についてもご説明します。

ではまず報酬水準の違いですが、
20~30代:基本的には大企業>ベンチャー
40代以降:ベンチャーでCXOレイヤーに到達したり、ストックオプションを付与されるとベンチャー>大企業になるケースも一定出てくるが、大企業の部長以上、特に役員になるとまた大企業>ベンチャーになる
といった感じで、同年代で比較すると8割方は大企業>ベンチャーと言えるでしょう。

このような違いが生じる理由は、大きくは事業構造の違いにあると考えています。
事業は大きく
1.0から1を生み出すフェーズ
2.1から10や100に拡大するフェーズ
3.100を100のままで維持するフェーズ
4.現状維持できず縮小や撤退するフェーズ に分けられ、4は一旦議論の対象から外すと
大企業:2、3がメイン
ベンチャー:1がメインで一部2に移行できている

という違いがあります。
(2や3をたくさん作り出せたから大企業になったとも言えるでしょう。)

で、2や3の事業が増えている過程で社員の給与水準をそれなりにアップさせ、それが今も維持されているケースが多いように思います。
(日本では基本給を下げるハードルが高いですし、大企業だと組合があって賃上げ要望や賃下げへの圧力が強い場合も多いです)

一方ベンチャーの場合、大きく利益を稼げる事業がまだあまりなく、社員の給与を上げる余裕がまだない場合が多いです。高単価なビジネスに特化している企業を除くと、大規模な資金調達やIPOを実現するまでは劇的な給与UPは期待しづらいと考えた方が良いでしょう。

次に働き方の違いですが、
労働時間:ベンチャー>大企業
研修や福利厚生の充実度:大企業>ベンチャー
働き方の自由度:ベンチャー>大企業
といったところでしょうか。

まず労働時間について、大企業でもハードに働いている人はもちろんたくさんいますが、どうしても残業時間の上限(36協定)を遵守せよという大きな命題があるため、月間労働時間の上限に収まる範囲において最大限頑張るという考え方になりやすいです。

一方ベンチャーですが、労働時間が長くなりやすいのは明確な傾向です。
新しい事業や社内制度の導入などにチャレンジし、学習効果による効率化が働きづらい状況で仕事をすることが多く、成果を出すためには量でカバーせざるを得なくなるわけです。

研修や福利厚生の充実度については詳しく説明するまでもないと思いますので割愛します。

続いて働き方の自由度ですが、大企業でもフレックスや裁量労働を採用していると一定ありますが、平日日中にしっかり働くことが当然という空気は根強く、朝、夜、土日も含めて好きに働ける雰囲気ではないように思います。
その点でベンチャーは自由度が高く、成果を出せばいつどのぐらい働くかは本人の自由という、本質的な意味での裁量労働が機能しやすい印象です。

大企業、ベンチャーにはどんなタイプの人がいて、どんな人がフィットしているのか?

大企業、ベンチャーにどんなタイプの人が多いか?と聞かれたとき、恐らくみなさんは
大企業:安定志向で失敗を嫌い、リスクを取りたがらない人たち
ベンチャー:チャレンジ志向が強く、どんどんリスクテイクする人たち
とお答えされるのではないでしょうか。もちろんそれで大筋合っていると思いますが、私自身が大企業やベンチャーで様々なタイプの方々とお会いした経験を踏まえもう少し詳細に考察したいと思います。

a)大企業の場合
タイプ1:規模や影響範囲は小さくてもどんどんスピーディーにチャレンジしたい人
大企業向きではないとほとんどの人が思うのですが、チャレンジングな社風や文化に少しでも変えるために企業が意図的に採用することがあります。
(私が過去所属している会社でもありました。)
結局マッチせず辞めることが多いため、在籍社員における出現率は5%程度の印象です。

タイプ2:大企業のリソースや看板を活用して色々なことにチャレンジしたい人
リスクテイカーに見られがちですがとてもバランスに優れていて、自分の身一つで無謀なチャレンジはしないが、企業をうまく使いながらチャレンジするタイプです。成果も出していて、いい意味で大企業を選択して良かったと感じる方が多い印象です。
出現率は10~20%のイメージで、同じ企業に長く勤続するケースが多いです。

タイプ3:やりたいことはあまりなく、周りの顔色を見ながら出方を決めていく人
元々やりたいことがあったかなかったかは分かりませんが、結果として働くことに前向きではなくなったタイプです。ただ、組織の中での居場所を確保するために、周りを見ながらうまく生き抜いていこうとするため、ややマイナスの意味で大企業に入っておいて良かったと感じている方が多そうです。出現率は50~60%のイメージです。

タイプ4:大企業のメリットにとにかくしがみつきたい人
タイプ3より更に働くモチベーションがなく、とにかく大企業の年収水準、福利厚生、退職金などのメリットを享受しようとしがみつくタイプです。周りからの見られ方なども気にしなくなっているケースが多いですね。出現率は10~20%のイメージです。

b)ベンチャーの場合
タイプ1:新しいことにチャレンジし続けていないと気がすまない人
特にスタートアップに多い印象ですが、新しいことにチャレンジするモチベーションが高く、何かビジネスを始めても一定まで成長するとすぐ別のチャレンジにシフトしてしまうタイプです。CXOクラスに多いですが、プレイヤーレベルでも一定は存在する印象です。出現率は10~20%のイメージです。

タイプ2:やりたいことがある程度固まっていて、スピード感やフレキシブルさを好む人
やりたいこともある程度はっきりしており、特定のことを突き詰めて極めていくタイプが多い印象ですが、ベンチャー独特のスピード感やフレキシブルさが好きでベンチャーにいる人たちです。CXOの右腕的な立ち位置でコア戦力になっていて、ベンチャーを選択して良かったと感じている人が多い印象です。出現率は20~30%のイメージです。

タイプ3:やりたいことは決まっていないが、とにかく早く成長したい人
新卒や第二新卒でベンチャーを選んだ人に多く、やりたいこと云々より早く成長することが目的化しがちなため、思ったように成長できなかったり空回りするケースも割と見かけるタイプです。キャリア迷子になっている人も多い印象で、出現率は20~30%のイメージです。

タイプ4:規模の小ささ等が魅力で飛び込んだが、前向きな方向性が見つからない人
大きな組織への苦手意識があり、規模の小ささに惹かれてベンチャーに飛び込むタイプです。ただ、スピード感などにあまりフィットできず、今さら大企業に移るのも難しいため、自分の進むべき方向性を見失っている/見つけることを諦めているケースが多い印象です。
出現率は10~20%のイメージです。

ということで、大企業にもチャレンジ志向の強い人はいるし、ベンチャーにもリスクテイクが苦手な人は結構いますが、私の中ではフィットする≒一定の成果を出すなので、その観点ではチャレンジができる、したい人がフィットしやすいという共通項がありそうです。

一方、何にどのようにチャレンジできるかは違いがあると感じていて、
<大企業>
何に:自分のやりたいことというよりは企業の方向性に沿ったことに
どのように:時間をかけて(社内決裁の時間も含む)多くの金額やリソースを投じて

<ベンチャー>
何に:自分のやりたいこと(を会社にうんと言わせる)に
どのように:極力スピーディーにスモールスタートで
といった違いかなと感じています。

まとめ

最後に簡潔にまとめると、

・大企業とベンチャーの事業面での違い
大企業:企業規模が大きく、その規模に見合った利益を出し続けるために既存事業への注力が優先され、リスクを取って新規事業にチャレンジするケースは少ない
ベンチャー:企業規模が小さく、安定的な収益の柱がまだ見つかっていないため、その柱を見つけるためにリスクを取って新規事業に積極的にチャレンジし続ける

・大企業とベンチャーの報酬水準や働き方の違い
報酬水準:同年代で比較すると、8割方は大企業の方が高い
労働時間:概ねベンチャー>大企業。大企業が少ないというわけではないが、残業の上限を厳しく守らされるため一定を超える可能性は低い。
研修や福利厚生の充実度:言うまでもなく大企業>ベンチャー
働き方の自由度:概ねベンチャー>大企業。大企業も柔軟になってきているが、やはりベンチャーの本質的な自由さには及ばない印象。

・大企業、ベンチャーにはどんなタイプの人がいて、どんな人がフィットしているのか?
総論:大企業にもチャレンジ志向の強い人はいるし、ベンチャーにもリスクテイクが苦手な人は結構いますが、フィットする≒一定の成果を出すと考えるとチャレンジができる、したい人がフィットしやすいという共通項がある

何にどのようにチャレンジできるか:
<大企業>
何に:自分のやりたいことというよりは企業の方向性に沿ったことに
どのように:時間をかけて(社内決裁の時間も含む)多くの金額やリソースを投じて
<ベンチャー>
何に:自分のやりたいこと(を会社にうんと言わせる)に
どのように:極力スピーディーにスモールスタートで
といった違いだと考えています。

ちなみに、就活の時点でやりたいことが本当に決まっている人はほとんどいないと思っていますので、色々チャレンジしながらやりたいことを探すために大企業に進み、やりたいことが見つかったらそれをスピーディーに実行できるベンチャーに行くという順番が黄金ルートなのかなとこの記事を書きながら改めて感じました。

全体を通じて言えることですが、大企業とベンチャーのどちらが良い悪いではないので、みなさんそれぞれにとってどんな環境が良さそうかを考える一つのきっかけにしていただければ幸いです。

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