見出し画像

2030年、農家に求められる事。予測

こんにちは、こんばんは、雇われ有機農家 Notari です。

2020年はコロナウィルスの年になりましたが、

今回は遠いようで近い2030年に、農家に求められる事を綴ろうと思います。


2030年までに農業界で起こる変化

まず、2030年までに農業界で起こる変化をザっと上げます。

農業人口の減少、農業法人の増加は当然考えられますが、

「2030年のフード&アグリテック~農業の未来を変える世界の先進ビジネス70~佐藤 光泰、石井 佑基 、野村アグリプランニング&アドバイザリー株式会社2020」によると、

①次世代ファーム→植物工場
②農業ロボット→ドローン、収穫ロボット、ロボットトラクター
③生産プラットフォーム→ビックデータの収集・運用
④流通プラットフォーム→オンライン・オフラインを融合したO2O型、ECサイト、B2C型、C2C型
⑤アグリバイオ→代替タンパク質、ゲノム編集

などの技術イノベーションによる変化が起こると予測されています。

①次世代ファーム

次世代ファームとは植物工場や陸上養殖場です。

2020年現在、植物工場産野菜の占める割合は約14%となっていますが、2030年までに最大40%になり、2020年代後半は定植から収穫・包装までフルオートメーション化すると予測されています。

植物工場での生産が難しい根菜類や穀物は変化に乏しいですが、植物工場で生産できるレタス類などは生産コストが低くなると考えられます。

②農業ロボット

2030年までに青果18品目を作る農業経営体の20%が自動収穫ロボットを利用し、トラクターの4割はロボットトラクターになると予測されています。

また、農業用ドローンによる農薬の代行サービス、栽培状況や成育診断を行うサービスが2020年代後半に伸びると予測されています。

③生産プラットフォーム

生産プラットフォームとはクラウドやセンサー、ビックデータやAIなどのデジタル技術を活用して「生産プロセス」の効率化と省力化を資するオンライン上のプラットフォームです。

生産プラットフォームは気象予測や衛星・センサーを参考に過去の栽培履歴から収穫量の分析・予測をするサービスを提供しています。

日本では馴染みがないですが、2020年現在、アメリカではトウモロコシと大豆の栽培面積のうち45%は生産プラットフォームのサービスを受けており、今後も広がると考えられています。

④流通プラットフォーム

流通プラットフォームとはオンライン上で農作物・水産物・畜産物の流通させるプラットフォームです。

2030年までに流通プラットフォームの市場規模は現在の3倍になり、農作物のEC化率は2.27%になると予想されています。

ECサイトとは自社の商品やサービスをインターネット上に置いた独自運営のウェブサイトです。

⑤アグリバイオ

アグリバイオとはバイオテクノロジーを活用して農業や食品分野の生産性や効率化・省力化に資する分野で、昆虫食・植物肉(代替肉)・培養肉などの「代替タンパク」と、「ゲノム編集」などが含まれます。

環境問題や世界的な人口増加からタンパク質クライシスやエシカル消費への対応が求められる中、

2030年までに日本で畜産品に占める植物肉の割合は10%、アメリカでは50%になると予測されています。

また、2030年までに日本で種子・植物苗市場がゲノム編集に置き換わる割合は15%、陸上養殖の品種は70%、花卉は食品衛生法外なので、さらに浸透している可能性があると予測されています。


より詳細な情報が気になる方は「2030年のフード&アグリテック: :農業の未来を変える世界の先進ビジネス70」を読んで下さい。

2030年のフード&アグリテック: :農業の未来を変える世界の先進ビジネス70

最先端のビジネスを紹介しているのでとてもおススメです。今この時にこの本を読めて良かったと思っています。


2030年に向けて有機農家が思うこと

①農作物の品質は均一になる

農林水産省は「2025年には農業の担い手のほぼ全てがデータを活用した農業を実践する」と掲げています。

生産プラットフォームの拡大や育種技術の発展伴って、ある程度の地域性はあるものの、どこで何を作ってもほとんど同じ品質になる時代が来ると思います。

明治以前、北海道でお米を作るなど夢のまた夢でした。しかし、現在では日本を代表する品種「ゆめぴりか」が生産できるようになりました。

今後はゲノム編集などにより育種技術が進歩し、地域に根差した品種が開発されると同時に、生産プラットフォームによりその地域で最適な栽培手法が共有された結果、全体として今より高い品質の農作物がどの地域でも安定して生産できるようになると考えています。

②人間の農家よりロボットが優れている

これは農業システムにおけるデジタル農業技術を示した図です。

画像1

AntleBasso and JohnBruno. Digital agriculture to design sustainable. comment, nature sustainable, 2020.

畑で農家がこのような三次元的な理解ができるでしょうか。そして理解した上でピンポイント灌水や最適な肥料散布ができるでしょうか。

僕には無理です。できたとしても、ロボットよりコストが高くなると思います。

収穫ロボットの利点は人件費の削減だけはなく、収穫量、歩留まり、土壌、病害虫などのデータを同時に回収できることです。

この論文では、人工衛星から空間時系列データを分析することで、米国中西部での窒素肥料量の36%を軽減できる可能性があり、共同メリットには3200 MJ/haのエネルギー節約と、CO₂は1890kgの削減効果があるとしています。

つまり、ロボットにやってもらった方が環境にも優しいんです。


将棋のプロがAIに勝てなくなる時代です。

農業もゆくゆくは、、、

全俺、ぴえんって感じです。(笑)


③農家の仕事は畑から離れていく?

では2030年、農家に求められる事はなんでしょうか?

僕は

1、ビックデータの意味を理解できること

2、他のサプライチェーンとのコミュニケーション能力

3、付加価値のディレクション

だと思います。

ビックデータの意味を理解できること

生産プラットフォームを利用すると、データと向き合う時間がふえます。

農業におけるデータは3種類に分類され、

①気温・肥料・土壌などの環境データ

②葉色・葉数・収穫量などの作物データ

③肥培管理などの労働・作業データ

があります。

③は比較的容易に理解できますが、①と②を理解するには農学の知識が必要だと思います。

2030年に後れをとらないよう、しっかり勉強しておきたいです。


他のサプライチェーンとのコミュニケーション能力

現在は生産現場で「できた分」を売る農業が多いですが、

将来的には各サプライチェーンの連携が進み、

お店の棚からキャベツがなくなりそうだから必要分を播種する、というふうな農業に変わると思います。

2030年のフード&アグリテックの著者も言うように、生産・加工・流通プロセスの現場を深く理解し、生産プロセスなどでの失敗が他の分野にどのような影響を与えるか予測できる能力が求められ、

その上で他のサプライチェーンに関わる人と円滑なコミュニケーションする力が必要になると思います。

人格やユーモア、畑では培うことができない交渉術やプレゼンテーション能力も必要になってくるのでは?と思います。

付加価値のディレクションと情報発信能力

肥料撒き・耕耘・定植・灌水・収穫などの生産作業はロボットが代替し、2030年の農家の大きな仕事は農業の付加価値をディレクションすることだと思います。

そこで2030年に求められそうな付加価値を考えてみました。

1、農業の仕方

特別栽培、自然農法、有機栽培、植物工場などをはじめ、

気候変動の緩和を促す環境再生型農業

消費者との交流で価値を生む都市型・体験型農業

RE:100などを取り入れた物質・エネルギー循環型農業

地域の文化や景色を残すための伝統的・景観型農業

固定種などを利用した多様性・生態系保全農業

環境に良い高収量農業

高齢者のいきがい農業

お店で農作物を作るインストア型農業

自宅で農作物を作るインハウス型農業

シェフや細かい依頼に合わせたオーダーメイド型農業

が考えられます。

2、消費者のニーズのあった農作物

低価格、鮮度、高品質、健康志向、機能性農作物、カット野菜など利便性農作物、おしゃれ農作物、SDGs・エシカル農作物、安心・安全性、地産地消、アニマルウェルフェア―などなど、

この辺りは、今も未来もあまり変わらないかもしれません。

3、農作物の売り方

地域のブランド、個人ブランド(ex.有名人やアイドルが作った野菜)、
知人・友人の農家の作った顔の見える関係、高級レストラン・著名人と取引、リテールブランドなどが考えられます。

2030年までには、

自己実現共有型のムーブメントとしての農作物

アグリバイオの原料となる農作物

食べることに興味がない人・忙しい人向けの完全食

3Dプリンター用の農作物

などなど。色々な売り出し方が考えられます。


生産はロボットが担うので、それ以外のところで価値(違い)を生み出す必要があります。

農家はこの方向性の農業がしたい!という情熱や意志がこれからの時代には不可欠なのでは?と思います。

また、それに基づいた情報発信能力が求められるのではないでしょうか。

こだわりを持って美味しい農作物を作っても、手に取ってもらわなければ意味がありません。

伝え方、SNSの使い方、写真や動画の編集などの技術は学んでおいて損はないかなと思います。


昔は100の仕事ができたから百姓と呼ばれていました。

2030年。百姓の本来の由来からは遠ざかりそうですが、

農家には、いつの時代も幅広い能力が求められるのかもしれません。



Notari

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?