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【訪問記録】動物園・水族館等施設展示を掘り下げる。

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動物園・水族館・博物館の訪問記録は数あれど、「展示施設の微細な心遣い」に焦点を当てたルポは案外少ないのではないでしょうか。本マガジンでは、これまで訪問した園館等施設の「ここ好き」… もっと読む
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#持続可能性

【園館訪問ルポ】詩のある動物園――到津の森公園「種田山頭火歌碑」/「森の音楽堂」/「いとうづのもりがたり」(福岡県北九州市)

【園館訪問ルポ】詩のある動物園――到津の森公園「種田山頭火歌碑」/「森の音楽堂」/「いとうづのもりがたり」(福岡県北九州市)

 「キリンもゾウもいない、そんな動物園があってもいいじゃないか。」印象的なフレーズが話題となった動物園があります。

 この園は、福岡県北九州市の「到津の森公園」(いとうづのもりこうえん)。西日本鉄道が運営する「西鉄到津遊園」としての開園は1932年と、非常に歴史のある動物園でした。経営不振により1998年に閉園が発表されるも、北九州市民を中心に26万人もの存続を求める署名が集まり、市の動物公園「

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【園館訪問ルポ】詩のある動物園(Ⅱ)―― 徳山動物園「まど・みちお詩碑」/「ぞうさんの鉄琴」/「種田山頭火句碑」(山口県周南市)

【園館訪問ルポ】詩のある動物園(Ⅱ)―― 徳山動物園「まど・みちお詩碑」/「ぞうさんの鉄琴」/「種田山頭火句碑」(山口県周南市)

 2019年の夏、北九州は到津の森公園で動物園と「詩」が響き合う風景を目の当たりにしてから、動物園が詩歌を通じてより多様な解釈可能性に開かれていく萌芽を見出していました。
 この感覚は後に私自身が短歌を作り始めたこともあっていっそう確かなものになっていきましたが、到津への旅以降この主題を掘り下げていくためのきっかけがなかなか得られず、個人的な探究の主題としては次第に後景化していました。

 しかし

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【園館訪問ルポ】さいはての野生、すぐそこにある野生(後編)ーー釧路市動物園「コハク舎」(北海道釧路市)

【園館訪問ルポ】さいはての野生、すぐそこにある野生(後編)ーー釧路市動物園「コハク舎」(北海道釧路市)

 「動物園が日本中、北から南に至るまでそれぞれの街で、『保全センター』ではなくあくまで『動物園』の看板を掲げ、人々に生きた動物たちの姿を公開し続けているのは何故だろう」という命題は、より一層強い実感を伴って私に問いかけてきました。

 道東の希少鳥類保護の拠点施設として重要な役割を果たし、「動物園の新たな姿」を示すモデルケースとしても雑誌や書籍で紹介されていた釧路市動物園。

しかし、園内

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