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本棚の森 〜書評集〜

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動物本、動物園本を中心とした書籍のレビューをまとめました。
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脱線から始まる、発見と出会い――外山滋比古『思考の整理学』より「セレンディピティ」に寄せて

脱線から始まる、発見と出会い――外山滋比古『思考の整理学』より「セレンディピティ」に寄せて

 『思考の整理学』(ちくま文庫,1986)はとても長く読み継がれており、発想の入門書として高校や大学でもしばしば推薦される好著です。私が大学に在籍していた頃にも「東大・京大に最も読まれた!」という帯を付けられて、学生生協にずらり並んでいたのを覚えています。

 この本の中に、「セレンディピティ」ということばを紹介した一節があります。

 思いもかけない偶然から、まったく別の新しい発見が導かれること

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【ブックリスト】「個」を入口に動物園を楽しみたい人に贈る4冊

【ブックリスト】「個」を入口に動物園を楽しみたい人に贈る4冊

0.個体とナラティブ動物園の動物を、「かけがえのない個」と見て物語(ナラティブ)を紡ぐこと。ハード面での変化と並行して、ソフトの面でも動物園は変化している。

    園の発信の方向も私たち観客の関心も「『個』のライフヒストリー」に向かいつつある状況は、コミュニティの輪の中にいない人にはひょっとしたらなかなかイメージしにくいことなのかも知れない。しかし、着実に輪は広がっている。

   本稿では動

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【ブックリスト】「動物園のこれまでとこれから」の論点を押さえたい人に贈る4冊

【ブックリスト】「動物園のこれまでとこれから」の論点を押さえたい人に贈る4冊

0.動物園史はいいぞ

  「動物園史」と聞いて、ほとんどの人は「なんじゃそりゃ」と戸惑うだろう。動物園は、「今、ここ」に生きているいのちたちに会える場。過去ではなく現在に関心が集まる場だ。しかし、動物園にも歴史はある。

   いま、動物園は過渡期にある、と言われる。ポジティブな意味でも、ネガティブな意味でも。  

   かつての動物園に比べ現在の動物園は何が変わったのか、そしてこれからどう変

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