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無口な歌詞

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あの日から、やめられない作詞。 歌い出してくれたら嬉しいのに。
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#詞

そのまま

そのまま

心臓が笑う
もう終わり?と
行ける所まで
来ていたんじゃないの
.
二段飛ばしで
駆け上った
非常階段が途切れて展けた
.
そのまま飛んだら
そのまま行けたのか
濃度を変える
空のど真ん中まで
そのまま抜けたら
そのまま見えたのか
鮮度を保つ
青の裏表さえ
.
.
感情を失くす
また同じと
消えた付近まで
見ていたんじゃないの
.
自分本位に
撒き散らした
安い愛嬌が外れて砕けた
.
そのまま咲い

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さかなの涙

さかなの涙

冷たい水の中で
温かい雫を拭った
肌に触れた
それはもしかすると
涙だったって
.
.
今日は静かだから
太陽も大人しく揺れる
見上げたって
空はまだ遠いけれど
.
こうして
愛おしくて
たまらないと
何でも出来そうで
困るのです
.
冷たい水の中で
柔らかい言葉を放った
傍に落ちた
それはもしかすると
鱗だったって
知らないか
.
.
いつも真面目だから
優しさもそれなりに見える
集めたって

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Neutral World

Neutral World

君が作った世界で眠りたい
それは嘘になり
身に降りかかって
明くる日も
その次も
醒めない夢を綴らされる
.
.
水溜まりを避けて
歩くようになったのは
それは単に
長靴をもう履かなくなった
それだけではなくて
.
中止になった花火大会
そして暇そうにしている夜空
煙草でも吸えたら
そんな余白も埋められるのにな
.
君が笑った世界で倒れたい
それは花になり
背に伸しかかって
明くる日も
その次も

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宵越しの夢は持たない

宵越しの夢は持たない

思い切ってタクシーを拾う
歩いて帰れない訳じゃないけれど
.
時にはそうして
流れの中に
浮かんでいたい日もある
.
夢が夢を見させてくれている
だからきっと間違えられる
散々な気分の後味も
歯磨きの後には思い出せない
せめてもの願いは
同じような夢を誰かも
見ていないでということ
.
.
疲れ切って三秒で眠る
お風呂に入れない訳じゃないけれど
.
見えを切って確信が霞む
涙を流せない訳じゃないけ

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よもやまばなし

よもやまばなし

飛び立った鳩は無口
渡しそびれた八円
最後まで待っていただけ
通り過ぎた私も
知らない人ではなくて
.
瞬きの隙間に
あっけなく終わってしまった
ドキュメンタリー
.
盛り上がりに欠ける
会心のエンドロールに
わざとらしく足した次回予告
永遠なんてお願い
欲しいとは思わないから
誰か一人でも
忘れられなくなっておくれ
感動でもトラウマでも
何でもいいから
.
.
寄り添った猫は左
踊り疲れた再演

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トルソ

トルソ

音読をして埋める
不可解な空白
半分ずつ消える
一昨日の夢
.
最短距離ですれ違えば
浮かぶ風の中
弾ける声
.
好きにしなよ
望んだ通り
ここで行き止まり
テープも切れて
立ち止まり
軽くなるほど
自由と云うのか
それならば
少し考え物だ
.
.
妄想だけで食い繋げば
染まる午後の空
広げる屋根
.
庭先で佇むトルソ
意図も汲めず
着せられたワンピースの裾が
翻るだけなのに恥ずかしい
心しかない

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エキストラとして

エキストラとして

当たり前をあげる
ねぇだからさ
そんな顔はやめて
もう笑わないで
.
当たり前が揺れる
ねぇなのにさ
あんな夢も捨てて
まだ笑えるのね
.
スポットライトの外側は
より濃くなる暗闇が
.
際立つと気になる
何もかも一つ残らず
手に取るように
見えていたはずが
ただそれは
一面に過ぎなくて
違和感は確実に
輪郭を持ち始めていた
.
.
当たり前は変わる
ねぇそれでも
こんな日々について
また笑いたい

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Bm7/Night

Bm7/Night

こんな夜にギターを弾いた
そんなことも知らずに鳴いた
喚いて戻ってくる世界で
暮らせないのだから
そろそろ諦めて布団に入った
.
.
いつかの缶コーヒー
思い切って開けてみる
想像通りのその味に
どうしてがっかりするのだろう
.
こんな夜にギターを弾いた
そんなことも知らずに泣いた
嘆いて帰ってくる弱さで
掬えないのだから
いよいよ飲み干して忘れてしまった
.
.
ひなびた国道沿い
思い立って寄っ

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どくれたピース

どくれたピース

虹日和
だから出掛ける
置いて行きたかった
荷物の分だけ
軽やかな足取りは
月面のそれ
.
濡れた道路と
子どもたちの声
見つけられなかったのに
違うものが見つかる
.
わがままと
ありのままの差を
まだ知らない
まだ知らない
そのまま帰れなくなり
茫然と立ち尽くし
半泣きでどくれたピース
いつかと同じ
.
.
発泡酒
持ってさまよう
派手に消えたかった
気分を忘れた
健やかな面持ちは
水面のそれ

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ヒーローのヒーロー

ヒーローのヒーロー

たまには僕も救ってよ
甘えたっていいと
すぐに駆けつけてよ
マイヒーロー
.
.
画鋲から外れて
顔が見えないポスター
直すふりをして確かめる
名前から浮かべた表情
.
そしたら知らない人に
褒められちゃって
まあでもそれは素直に嬉しくて
控えめに照れてみる
ああ、何だかな
.
世界が広すぎるの
半径2メートル
それで精一杯
だからこの部屋は落ち着く
今日も許してくれる
そうやって
たまには僕も守

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雨宿り

雨宿り

全てが嫌になるけれど
あの日がなかったら
今もないなんて
悔しいね
可笑しいね
.
.
花盛りの早送り
見逃したと
二度見をするのに
もう何もない
.
風向きはやや雑で
左肩が濡れた
.
全てが嫌になるけれど
あの日がなかったら
今もないなんて
淋しいね
可笑しいね
泣き真似をする雨空
下手な嘘より
ずっと優しかった
.
.
綱渡りの巻き戻し
手放したと
焦ってみるのに
もう怖くない
.
溜め息は

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ジントニック

ジントニック

積もる話の棒倒し
大事なところを
崩してしまわないよう
壊してしまわないよう
遠くなったタケナワ
.
空いたグラスを
何度も口へ運ぶものだから
そろそろかってね
.
最後の一杯
ジントニック
頼む唇が少し震える
きっと明日には
思い出せるものも
多くはないと
置いた手に重なったのは
同じ温度の他の肌色
.
.
最後の一杯
ジントニック
緩むネクタイに軽く零れる
きっとこれから
口火を切ることが

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試着室

試着室

いつになく心細いのに
いつになく清々しい
いよいよ自分が
よく判らなくなる
.
差し込まれた衣装に袖を通す
着せ替え人形になっても
表情が見つからない
.
ハローハロー
ハローハロー
増えるばかりのバリエーション
溢れ返るのはクローゼット
泣きそうな曇り空
ハローハロー
ハローハロー
消えるばかりのイミテーション
花が開くのはリローデッド
転けそうな下り坂
.
.
いつになく涙脆いのに
いつになく

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98%

98%

忘れられたように
誰かの家の窓辺から
こちらを見ている
あの人形の瞳が
誰かに似ている気がした
.
そうか
今朝の歯磨き
すすいだ後に上げた顔
.
彼女は淋しくしていたか
私がそう思っただけか
窓にもたれて眺める街並み
立ち止まっただけで
初めから知らないふりをして
こぼさないように
また笑う私たち
.
.
忘れられたように
静かな部屋のテレビから
だらだら流れる
再放送のドラマを
ぼうっと見ない

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