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無口な歌詞

1,605
あの日から、やめられない作詞。 歌い出してくれたら嬉しいのに。
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2020年6月の記事一覧

はじめまして

夢が醒めた
星の砕けた粒を
ほんの一つ
食べただけだった
.
闇は優しい
見たくないものは
見えないから
.
繰り返す戸惑いは
いつもはじめましてで
大袈裟なくらいに
真面目に驚かされる
夢を見ないで済む方法を
そろそろ誰か知りませんか
.
.
夢が醒めた
星の流れた痕を
ほんの軽く
撫でただけだった
.
月は眩しい
穴の向こうには
行けないから
.
蒸し返す諦めは
どれもはじめましてで
斬新なく

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singer

歌うことで
救われた時間が
確かにあって
.
歌うことで
許された世界が
幾つもあって
.
何にも変え難いその
輪郭だけを柔らかくなぞる
.
ここからだったら
届きそうな青空
飛びつけばもっときっと
遠くまで行けるから
だからやめておいた
まだ楽しみは取っておく
同じ目線の彼女たちが
朝陽に照らされて
微笑んでいたから
.
.
歌うことで
戻された景色が
僅かにあって
.
誰にも言い難いその
裏側

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空想が捗る日

空想が捗る日
青空が少し淡くて
空想が捗る日
木陰がより涼しい
.
歩き疲れて腰掛けた花壇の縁
長々と連なる蟻の列の中に
自分を見つけた気がした
.
無限過ぎて怖い
急に止んだ風だって
何を語る訳でもなくて
一つ一つに悉く触れていたら
何も彼も足りなくて
あっという間に暮れてゆく
無限過ぎて怖い
.
.
空想が捗る日
星空が少し遠くて
空想が捗る日
夜風がより優しい
.
眠り疲れて寄り掛かる南の窓

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色々

永い夢の中
目を開けたまま
眠り続ける
.
もう何年も雨晒しになった
公園の遊具の赤色
.
.
浅い夢の中
背を向けたまま
語り続ける
.
そう簡単に泣き寝入りもできず
持て余す旌旗の白色
.
.
ずっと帰り道
やっと曲がり角
きっと懐かしい
.
.
せめて染めて
その色彩で
気がつかせて
鈍感な私に
.
せめて染めて
その色彩で
気がつかせて
鈍感な私に
.
.
すぐに消えて
その存在で
気を逸

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紫陽花慕情

夕立のような溜め息が
勢い任せに洩れる
まだ好きにはできない
.
無口な方が聴いてもらえる
.
この葉には毒がある
殺めてしまえる程ではないが
何も無害な訳でもないの
こうして雨が降る度に
思い出してとは言わない
だからせめてその花を
見つけたらそっと笑いかけて
.
.
夕闇のような危うさが
想像通りに浮かぶ
また好きにはなれない
.
一人の方が泣いてしまえる
.
この手には傘がある
隠してしまえ

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しみじみ

喜びが散り散り
隅っこに集まって
何を話している
テレビも点けないで
静かに耳を傾ける
.
掃除機に吸われないようにね
賑やかな井戸端会議
.
きらきらと光り
さらさらと流れる
麗しきしみじみ
愛おしい
嗚呼愛おしい
どうかそのままで
.
.
喜びが散り散り
部屋中を彷徨って
何を捜している
気持ちも知らないで
花瓶の水が揺れている
.
正直に呑まれないようにね
穏やかな作戦会議
.
ゆらゆらと映

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シークレット

春はとうに過ぎて
夏の香り滲む雨
正しい朝に向かって
背を伸ばす隣りの家の猫
.
綺麗な横顔
とにかく綺麗な横顔
ばかり見ている
.
シークレットは要らない
隠すことにもはや色はない
黙っているだけも
笑っているだけも
そう見えているのならば
そうなのでしょう
そうでなくても
そうなのでしょう
.
.
熱はとうに冷めて
夢の続き誘う風
淋しい時に限って
手を伸ばす昨日の夜の裾
.
綺麗な溜め息

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隙間が間れる

ああ一人きり
そう思えるのは
素晴らしい
笑顔がリーサルウェポン
.
幸せについて
物怖じもせずに
考えられるという強さ
.
戦え戦え戦え
望み通りは難しい
それでも休まないで
前を向き続けると
それが確かな勇気になる
聞き飽きた言葉も
今は素直に受け入れられる
隙間が生まれる
.
.
ああ一度きり
そう思えるのは
新しい
気持ちがリーサルウェポン
.
幸せについて
躊躇いもせずに
諦められるとい

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a beautiful

透明なフィルムに
焼き付いた笑顔
もう決して
色褪せることはない
そう信じている
.
別れ際にならないと
判らないような
まだ小さかった憧れ
.
一体いつまで
持ち続けられるだろう
埃を被ったとしても
大切に守り切れるのか
美しさとは見た目よりも
それを見た時の自分の瞳の輝き
.
夕暮れはお預けの代わりに
夜空に虹が架かる
.
.
さようならも言えないと
終われないような
ただ短かった幕切れ
.

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クローバー

公園のベンチに座り
青くなれなかった曇り空を
ただじっと見つめては
何気なく下唇を噛む
.
足許にクローバー
気づけば一面に
唐突に始まる四葉探し
.
いつ頃に誰がどうして
それを幸せと呼んだのか
違うということを
特別というものを
そう思える心があるのならば
どちらかである必要はないにしても
幸せに繋がる方が嬉しい
.
.
公園でぽつんとしゃがみ
声にならなかったクエスチョンを
まだずっと抱えて

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片隅

見渡したところで
見つけられるものでもない
何処であっても片隅
一人ぽっちになるのに
特別なことは何も要らない
.
見透かしたところで
どうにかなるものでもない
何と言っても片隅
自分勝手であるのに
特別なことは他に要らない
.
甲斐甲斐しく
太陽が地球の片側を照らし
それに倣ってまた
朝が来たと微笑みを見せ
大きな深呼吸を一つ
なんて今日もするつもり?
.
.
見逃したところで
忘れられるもので

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Collection

愛している 愛している
愛している 愛している
.
愛している 愛している
愛している 愛している
.
過っては掴まえられなかった
言葉を剥製にしている
.
その中でも一際多く
一際簡単な言葉
また笑って蔑ろにする
.
飾っても美しくはなかった
言葉が点滅をしている
.
.
愛している 愛している
愛している 愛している
.
愛している 愛していた
愛している 愛している
.
過っては掴まえられな

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sunday night

ギターの鳴り止んだ部屋
さっきまでの音楽は
そのまま消えてしまうのか
換気扇の回る音だけが
降り積もっていく
.
第三日曜日
明日は不燃物
柔らかいだけの指先
.
生まれた歌が
どうだろうとも
僕の暮らしが
変わるわけではない
編み込まれた絨毯のように
一つ一つで一つなんだと
言ってしまえるほど
立派でもないから
.
.
残りを飲み干した缶
さっきまでの恋しさは
このまま溶けてしまうのか
換気扇の

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運命の予め

ハッピーバースデイを
イントロから歌う人
ふとそんな瞬間に
ときめきを感じていた
.
ハッピーバースデイと
手拍子まで鳴らす人
ふとそんな瞬間の
ときめきを信じてみた
.
喜びを喜んでくれるとか
淋しさを淋しがってくれるとか
願うよりも先に叶ってしまうこと
.
運命と名づけた
予め知っている気持ち
とにかく今は
理由が欲しかった
きっかけを捜していた
判り易く恥ずかしい
でも幸せで仕方がない
.

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