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絵師は生成AIの前に滅びるのかAI時代に生き残る絵の仕事は何か

AIの進歩は凄いもので、絵に携わっている人間ならそれは認めざるを得ない事実だと思います。

いわゆる「絵師」の方々には「AIはけしからん」とキャンペーンを行っている人も少なからずいますが、いかに進んでもAIは絵師の多くの仕事を奪うことはもう決まったようなものです。

では、そういったAIの時代に絵師はどうなるのか、特にこれからいわゆる絵師の職業を目指している人に降りかかる運命はどういうものか、見てみましょう。

絵師が何を言おうとAIの時代が来る

絵師の方々は「生成AIは既存の絵師の絵を学習して真似しているに過ぎないからランクが低い」とか「生成AIが作った絵はどこかしらおかしいから絵師が手書きすべきである」といった主張をお見掛けします。

しかしながら、エンドユーザーやクライアントの多くは「そんなこと知ったこっちゃない」のが本音です。

仕事として成り立つにはエンドユーザーやクライアントの納得が必要で、仕事として成り立つかは絵師ではなく買い手が決めることです。

そして買い手が「イエス」なら絵師が「ノー」でも「イエス」で進みます。そうして進んでいるのが生成AIです。

日本政府もAIをどちらかというと推進する姿勢を示していますし、買い手たちも生成AIを特に気にしていません。

「生成AIだから買わない」という判断は狭い絵師間の市場では見かけますが、世の中の大半、オタク文化やサブカルチャーの外では少なくとも「なんでもよい」という姿勢です。

絵師の生殺与奪権を持つ人々で絵師の保護を考える人はいるが多くない

エンドユーザーたちは「安ければよい」という原理で進んでいて、決して絵師の仕事を保護しようなんて考えることはありません。

絵師の仕事が確保されるが100円のものが101円になるなら、100円で絵師が絶滅する方を選ぶユーザーは多いです。

超高額な金額でやり取りされている芸術はいざ知らず、絵師の仕事の99%を占めるであろう部分はコスパも重要な市場原理で動いています。

例えばかつてあった「レタリング」や「POP職人」といった仕事は、大半がCG等に置き換わって、市場として成り立たなくなって久しいですが、絵師以外はもちろん、絵師の方々も彼らを保護するために動いたでしょうか。

例えばスーパーで手書きのPOPであるがゆえに人件費が嵩んで商品価格が値上がりすることを、多くのユーザーは赦したでしょうか。

それは赦されなかったから、ごく一部の会社を除いて、価格表示はデジタル化され、他の仕事の人が片手間で行う内容になり、その仕事に賃金がほとんど発生しなくなりました。

生成AIは十分に仕事を熟せる

世の中の99%の絵の仕事は、100点を得る必要はないものです。その絵に与えられた基準さえクリアできればなんでもよい。というのが事実です。

生成AIというのは、90点の絵をなんでも瞬時に作れる機能です。

芸術家という仕事は、100点の絵を求められます。その代わり1枚単価が非常に高いです。

だから生成AIは芸術家の代わりにはなりません。今後も、芸術家という手書きの職業は必ず残るでしょう。

一方で絵の99%の仕事は芸術家ではなく職人です。求められる絵は60点から90点でよく、ごくたまに95点の仕事があるだけです。

例えばお店の価格表示のPOPの仕事(一部除く)は、100点の絵や技術を求められません。そんなことしたらPOP1枚に何十万円と掛かってしまいます。
なのでお客さんが見て機能するレベルの内容であればよいのです。

例えばお店のインスタグラムを運用する際に、必要な絵やイラストの技術は90点未満で十分です。

100点の絵が描ける世界的芸術家が描いた。という宣伝文句は効果がありますが、この場合、こういったこととは別の話です。

1枚制作するのに1か月と50万円が必要なフィードを用意するなんてありえないことです。

それはインスタグラムの投稿が絵の宣伝をする絵師アカウントではなく、絵で他のことを紹介するためのものだからです。
なので絵にそこまで拘りを持つ必要はありません。

「いらすとや」さまのイラストが官公庁から報道まで幅広く使われているのがその証拠です。

必要な動作を説明するイラストを求めているのであって、超上手い100点の絵を求めているわけではありません。

アニメの世界も手書きがほとんど減ってCG化されましたが、今は95点の絵が作れない生成AIでもいずれも99点の絵が作れるようになって置き換わることが起きえるでしょう。

完全な描写が可能な写真が100点の絵になれないように、生成AIも100点の絵にならないでしょう。

しかし、だからと言って「生成AIは100点の絵が出せない。この絵は90点だ。だからだめだ」なんてことはあり得ません。それは絵師の単なる嘆きの声です。「auの電波は質いいから音がいい」みたいなもはや宗教じみた主張になります。

生成AI時代に生まれる職業

写真が登場した時、写真は絵のほとんどの仕事を奪いました。例えばお見合いには必ず絵を交換し合っていた貴族ですが、現代でそれを行う人は稀でしょう。お見合いはお見合い写真に成り代わりました。

戦争や事件を記録したりしていた絵も、写真に置き換わりました。

瞬時に完璧な写実絵を描ける写真という、当時の生成AIに絵の仕事はほとんど奪われ、カメラマンや現像といった仕事が生まれました。
生成AIについてもプロンプターやAIプログラマーといった仕事が生まれています。

では絵の仕事はどうなるのか

もっとはっきり言えば「今から絵を仕事にするべく学ぶ意味なんてあるのか?」ということです。

現代でも、例えば色の混ざり合いは計算したり技術習得せずともCGで簡単に答えを出せます。

今でもごく一部に本等の印刷の色を確認する専門職はありますが、その天才的な才能の一部であるいかなる色も言い当てるスキルも、一応スポイトツールで誰でも実現できます。

絵の仕事を目指すべきか

じゃあAI関連の仕事を進路にしたほうが現実的では?
と思うかもしれませんがその通りです。

では芸術家志望を除いて、職人としての絵の仕事を目指している方々に問います。
「それならAIとか関係なくとも、そもそも絵以外のもっと堅実な仕事を選ぶべきでは?」
と。

絵しかできない、やる気が無い、絵に高い才能がある…
理由は分かりませんが、絵の仕事を目指している人って別の道が提示されていても進んできたでしょう。

そもそもそんなことは織り込み済みな方がほとんどだと思います。

仮に、「楽して大金を稼ぎたい」とか「人を感動させたい」とか「親を楽させたい」なんでもよいですが一般的に「憧れの人生」とされる道に、絵師はほとんどの場合繋がっていません。(芸術家志望を除く)

よほど才能が突出してでもない限り、絵の道でそれを目指すより、他の道でそれを目指した方が圧倒的に効率もよく成功率も高いです。

絵を仕事にするというのは「ライバルが多くてツライ上に才能が必要でひと握りの人間だけが成れて他は人生から落伍するような危険な道を歩む」ことです。
スポーツ選手とかに近いですね。

そんな賭けを歩まれている絵の仕事希望の方々に、生成AIなんてものは「何を今さら。自分の人生はすでにそれ以上の賭けをしているのだ」と思うことでしょう。

効率がいいからAIの仕事を目指そう。なんて考える人はそもそも絵の仕事なんて目指してないはずです。

この先も通用する絵の仕事

一部の例

プロンプター

AIプロンプターと言っても、ある程度人間の発想やコンテが無いと大したことはできません。
例えば「RPGツクール」などのツールが昔からありますが、それを用いた有名作品は多くなく、そもそも完成品を見つけることも難儀します。
誰でも簡単に作れる内容なのに、誰もゲームを完成させられないのは、設計能力がないからです。

絵の仕事も同じです。
絵の単品を出力するなら、おそらく誰でもできるようになります。

しかし、それを組み合わせたひとつの作品にしたり、設計段階からプロジェクトを進めたり、理論に則って絵を生成するには絵描きとして習うべき構図や発想力、そのための知識等も必要になります。

出力が完全に自動であっても、作品をポン出しするものでもありません。
カメラも簡単に写実絵が出力できますが、カメラマンという専門職があるように、絵の観点から専門的な知識を持つプロンプターという道も十分にあり得ます。

アートディレクター

ディレクターは多数の絵や人を活用し、クライアントの指示を具現化する仕事です。

いかに生成AIが完璧な出力を行うとしても、実際にどのような場面でどういった絵が必要で、どういった流れで行うべきかを考えるのは専門家である必要があるでしょう。

生成AIでも元絵からAIで清書するタイプがありますが、ある程度の絵の知識やコンテを作成する技術がないと、顧客との打ち合わせで案を提示したりできません。

即座に頭の中の内容をビジュアル化したり、相手の言い分を絵にするという技術は、現在の絵の仕事にも未来の絵の仕事にもある程度共通することでしょう。

新しい仕事も生まれる可能性は十分ある

写真が広まってそれまでの絵の仕事はほとんど駆逐されました。
しかし絵の仕事は終わるどころかむしろ種類が増えて活発化しました。

アニメや現代的なファンタジー小説などは、写真技術が完成した後に生まれたジャンルであり仕事であり、写真が生まれた当時の人は想像すらできなかったことです。

多くの絵の仕事が無くなるかもしれませんが、それ以上に絵の仕事が生まれる可能性は、十分にあります。

しかし、現代の人がその仕事は何か、言い当てることはできませんし想像もできません。

だからこそ、人生を絵に懸けた方々は、そのまま懸ける価値はあるかもしれないです。

不思議の国のアリスの作者ドジソン(ルイスキャロル)は写真と絵の過渡期の作家でした。

彼は写真家としても有名でした。

写真がすべてを駆逐するかもしれない。という世の中で彼の創った物語は、絵の世界に大きなインパクトを与えるモチーフ「アリス」で、それを元にした作品は数多作られ、彼も誰も予想しなかった遠く日本のサブカルチャーにも息づいています。

彼の生きた時代と今は、一部似た状況にあるかもしれません。その後の世界がどうなったのかを見れば、絵の未来も多少、占えるかもしれませんね。

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