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第一話 「悪政リンパ主」 4/5


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「なに!? 暴動だと!」

 リンパの声。おちつていて深みがあるが、部下はこの反応をきいただけでとがめられているとおもってしまう。高慢な声。

「はい、たったいま覆面をした町のものが十数人、武器をもって奉行所や寺やドージマに立ち入りまして、ブッポーが対応に回りましたが、人数がたりません」

「そうか、運が悪かったな」
「どうしますか」

「奉行所長はどういう判断をくだしている」
「村の捜索はひきあげると」

「ポリス所長は」
「武力制圧も考えると」

「警察所長は」
「川の清掃をしています」

「なるほど、ごくろうだ」

 リンパは帯をゆるめてたちあがると、

「村の捜索は必要だ、あの旅人は逃すな、徹底的に探せ、そのかわりにエカシャ城の護衛から四十人派遣する」

「わかりました」
 部下はけいれいしてから機械のようにくるりと反転した。

 そのとき、あらたにべつの部下がはいってきた。
「旅人が現れました!」

「どういうことだ」
「消えた旅人がさきほどエーカの西大橋から歩いてきたという報告が!」
「で、どうなった」

 またあらたに部下がはいってきた。
「旅人を捕らえました」
「よくやった」
「旅人はのこのこ西大橋をわたって——」
「それはいい、きいた話だ。私はこれから予定通り昼食をとる。処刑の準備と暴徒の制圧にわけろ。とりわけ暴徒は全員捕らえるように、牢屋の整理にも数人をさけ」

「はい」
 三人はそろえてへんじをした。褒められているような気がしたのだ。

 そして四人目の部下がはいってきた。
「暴動です。図書館が落とされました」

「知っている。図書館など落ちてかまわん、それだけの報告をしにきたのか」

 四人目はけいれいして、
「すみません」

「とにかくドージマは落とされるとやっかいだ。かたくしておけ」

 椅子からおりたリンパが部屋をでようとしたときだった。

 やにわに四人目のブッポーがはしりだし、リンパを襲った。手ににぎった短刀をリンパのわき腹につきさした。が、うまくはいかなかった。短刀のさきっぽこそ血に濡れたが、骨に阻まれ内臓にはとうたつせず、うしろから三人のブッポーにとりおさえられた。リンパは隣のへやへころがって、盆ごと昼食をぜんぶはじきとばしたのだった。

「謀反人とらえましたー!」

 ブッポーがさけぶ。

「よくやった。旅人とまとめて、夕方にでも絞首刑だ。準備しろ」

 ブッポーが謀反人の顔をもちあげた。

 苦痛と不条理にいびつにねじれたような笑顔をうかべるのは、古いブッポーの制服をきたオーシオ・ディ・ヘーハチ・ローだった。



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