文章のトーンを変える(1)やさしく
原文は「枕草子」で
広告文、俗に言う「コピー」がエッセイや評論、
あるいは小説と異なるのは、
発信者が書き手(コピーライター)ではなく、
広告主である企業・団体である点です。
コピーライターは、その関係のなかで発信される
商品やサービス、メッセージにふさわしい
「トーン(文体)」を選びます。
ここでは、トーンを変えるという行為を
note上で行ってみることにしました。
変更前の原文は清少納言「枕草子」現代語訳。
インターネット上の訳を、
さらに自分で手を加えてまとめたのが、
下記の[原文A]です。
もとより例文を用意するのが目的なので、
訳としては正確でない表現が含まれることをお許しください。
↓
[原文A『枕草子』自己流訳]
春は、夜明け。
あたりがだんだんと白んで、
稜線で切り取られた空がほんのりと明るくなって、
淡い紫色に染まった雲が、細くたなびくような景色がいい。
夏は、夜。
月がきれいな日はもちろん、新月もいい。
たくさんの蛍が飛び交かう情景も、
ほんの一匹二匹が、ほのかに光りながらただようのもいい。
雨が静かに降る闇にいるのも好きだ。
秋は、夕暮れ。
夕陽が赤々と射して、山の輪郭にいまにも沈もうというとき、
古巣へ帰る烏が、三羽四羽、二羽三羽と急ぐ風景さえ、
しみじみとした趣がある。
まして、連なってはばたく雁が、
遠くに小さく見える景色はたのしい。
日がすっかり落ちて、風の音、虫の音などが響く時間は、
言葉に尽くせないほどだ。
冬は、早朝。
雪が降る朝はもちろん、霜が一面に白く降りている朝も、
そうでなくても、
凍えるように寒い夜明け、大急ぎで起こした炭火を
運んで回る動きは、いかにも冬の朝らしい。
昼になっていつの間にか寒さが緩んで、
火鉢の炭火が白く灰をかぶってしまっては興ざめだ。
文章のトーンを変える(1)やさしく
さて今回は、この[原文A]を“やさしいトーン”に変えてみます。
広告で言えば、自然派化粧品やシンプルなライフスタイル、上品な銘菓などについて書く場合は、こんなトーンを使います。
「枕草子」の世界がそもそもやさしいのですが、
漢字はひらきつつ、同じ意味のよりやさしい表現を用いて
よりやさしいイメージを追いかけてみました。
↓
春は、夜明けがいい。
窓の外がゆっくりと明るくなって、
遠くに見える山が空と溶けあうあたりが、
ほんのりとあたたかくて、
淡い紫色に染まった雲が、
細くたなびくような景色もたまらない。
夏は、夜がすき。
月がきれいな日はもちろん、新月もいい。
たくさんの蛍がふんわりと飛ぶ姿も、
ほんの一匹二匹が、ちいさく光りながらただようのもいい。
雨がしっとりと降るなかで感じる闇も、すき。
秋は夕暮れにうっとり。
夕陽の赤が空を染めて、いまにも山にかくれそうなとき、
なじんだ巣へ帰る烏が、三羽四羽、二羽三羽と急ぐうごきにさえ、
じんわりとする趣があって。
もしも連なってはばたく雁が、
遠くに小さく見える景色に出合うときには、おもわず見とれてしまう。
日がすっかり落ちて、風の音、虫の音などがひびく時間は、
もう言葉になんてできない。
冬の朝は早いほどいい。
雪が降る日はもちろん、霜がいちめんに白く降りても、そうでなくても、
こごえるように寒い夜明け、大急ぎで起こした炭火を
運んで回るうごきは、とても冬の朝らしい。
昼になっていつの間にか寒さがゆるんで、
火鉢の炭火が白く灰につつまれてしまってはつまらない。
↓
「トーン」については、こちらのnoteでも語っています。
リライト論[第二章]リライトの定義(1)トーンを変える
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