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「得も言われぬ味」と、物書きなら絶対に書くな。

角田光代さんが、開高健さんのこの言葉を紹介していました
(2009年10月17日の『週刊ブックレビュー』開高健特集)。
俳優の児玉清さんが司会をしていた「週刊ブックレビュー」がまだ放送されていた頃、私の以前のブログで紹介していた言葉です。
開高さんなら、似た意味の「筆舌に尽くし難い」も、恐らくこう言われるでしょう。つまり「言葉にできないほどいい」などと言わず、
物書きなら自ら生み出した言葉でその味に迫れ、と断じているのです。
私も慣用句を使うことがあります。いけません。
ステレオタイプな表現なら、頭を使わず書くことができる。だから人は
慣用句を使うのですが、反対に意味が通じるレベルの別の言い方を探すと、一気にハードルが上がります。

ステレオタイプを超えた日本語

いま、何らかの状態、方法、機能、形式、結果、考え方などを表すときに「かたち」が大活躍しています。そしてその範囲は無限に広がっています。
また、衣食住遊の各分野の体験に、「楽しむ」が頻繁に用いられます。
いろんな洋服を着る、豪華なディナーを味わう、経年劣化のよさを感じる、サーフボードに乗る。これらは各々、動詞が違うし、動から静へ感覚の
強さも奥深さも異なるのに、全て「楽しむ」と言っています
このような、使いこなされる表現の貧しさを前にすると、
「物書き」が多様な表現を探るのは無論ですが、そうでなくても
日本人なら、もう少し多くの豊かな日本語表現から選んで
使いこなしてほしい、と思うのです。
私自身も肝に銘じます。

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