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アムステルダム “スロー” ガイド。観光名所を通りすぎ、暮らすように旅する人へ

とてもありがたいことに、オランダ・アムステルダムに住んでいると、日本やそのほかの国から友人が遊びに来てくれたり、ときにはわが家に泊まりに来てくれたりする。お互い日本に住む者同士だったら、一緒に飲みに行かなかったかもしれないのに、わざわざ遠く離れたヨーロッパで時間をつくって会ってくれるなんて、嬉しいことだ。

”スロー”なガイド?

 すると、現地のおすすめスポットを聞いてもらえることがある。日本という常に新しく、ハイクオリティーなモノであふれる国から来る人たちに、なにかを「おすすめ」するのはいつも気が引けるんだけれど・・・ そんな時、僕はいわゆる「観光スポット」ではなく、街の空気や現地の人の営みをゆっくりと感じられる場所をおすすめしている。

 出張などでオランダに短期滞在する友人のうち、少なからぬ人が「次は長期滞在で訪れたい」と言ってくれる。現地在住者にとってこんなに嬉しいことはない。たしかに、東京やニューヨークほどには見どころは多くないかもしれない。けれど、たとえそこが外国であったとしても「長くいればいるほど好きになる」、不思議な魅力がここにはある。

 アムステルダムの若者に人気のレストランでランチをしてくつろぐもよし、本や雑誌、美味しいコーヒーを持って子どもと公園にぶらっと出かけるもよし、近所に暮らすクリエイターたちに交じってカフェで仕事をするもよし――。今回は、アムステルダムを暮らすように楽しみたい人のための「スローガイド」をまとめてみた。

レストラン

Instock
オランダらしく、「食品ロス問題」の解決を目指して作られたレストラン。スーパーマーケットの傷んで売れない野菜や曲がって見てくれの悪い魚、熟したマンゴなどを「救済」し、美味しい料理に生まれ変わらせ、リーズナブルな値段で提供している。ジャガイモの皮で作られたビール「Pieper Bier」もユニーク。

Mama Makan
植民地支配の名残か、オランダには数多くのインドネシア料理レストランがある。中でも「ハイアット リージェンシー アムステルダム」の一階にあるこの店は、清潔感にあふれ、日本人にとって使い勝手がいい。ランチメニューの「Indolicious Platter」(15ユーロ)を頼めば、いろんなインドネシア料理を少しずつ気軽に試せて、それでいてボリュームも十分だ。

LITTLE COLLINS
国際都市、アムステルダムらしい、“ダムっ子” に人気のレストラン。「リトル・コリンズ」とは、オーストラリア・メルボルンにある通りの名前。「世界のカフェ都市」として名高い、メルボルンの食文化に影響を受け、メニューが開発されている。旬の食材を使ったフュージョン料理が多く、どれを頼んでも美味しい。こだわりの「ホワイトレーベルコーヒー」も絶品。

Batoni Khinkali
今、ヨーロッパ市民の間で旅先として人気上昇中の国が、ワイン発祥の地、ジョージア(グルジア)。その地元料理を楽しめる店。ジョージアは知られざるワイン王国で、世界4000種のブドウのうち525種がここから生まれたという。ここのジョージアン・ダンプリング(餃子)はマスト。ジョージアに行きたくなること、間違いなし。

カフェ&バー

Lot Sixty One
オランダ人にはおしゃべり好きな人が多いためか、アムステルダムも実は、美味しいカフェが立ちならぶカフェ都市だ。そんなアムステルダムのカフェといえば、ここ。独自に焙煎されたこだわりのコーヒーがとにかく美味しい。コーヒー豆は周りのカフェに卸したり、ショップで販売したりもしている。コーヒー業界の若いバリスタ育成にも貢献している。

Bocca Coffee
「bean to cup(豆からコップへ)」をモットーに、エチオピアやブラジルの農場から直接仕入れた選りすぐりの豆を自社で焙煎。美味しいコーヒーを楽しめる上、とにかく広い店内が心地よく、ゆったりできる。注文したコーヒーに豆のルーツなどを書いたカードが付いてきたり、目の前でコーヒーを淹れる過程が見られたり、コーヒー好きにはたまらない。

TOKI
アムステルダム中央駅から西に向かって徒歩15分ぐらいのところにあるカフェ。クリエイター風の人たちがよく、ここでコーヒーを飲みながら仕事をしている。こだわりのパティスリーも美味しい。ベルリンの人気カフェ「bonanza coffee」とは姉妹店のようで、たしかにベルリンっぽい雰囲気を感じる。

GlouGlou
アムステルダム南部のワインバー。フランス語で「ゴクゴク」を意味する。以前、ハーグに住んでいたころは、この店でワインと「鴨のコンフィ」を楽しむため、わざわざ電車で一時間かけて訪れていたほど、おすすめの店。バイオダイナミック農法によるこだわりのブドウだけで作られたワインを取り扱っており、その果実くささや荒っぽさが味わい深い。姉妹店の「Bar Centraal」は日本酒やオレンジワイン(白ワインのブドウを使って、赤ワインの製法で作られたワイン)をいち早く取り入れるなど、トレンドセッターでもある。

ラーメン屋

SORA
日本人が経営する本格札幌ラーメンの店。暮らすように旅をする中では、時々ラーメンも食べたくなるもの。そんな時、数あるアムステルダムのラーメン屋の中でも、ここはおすすめ。

Men Impossible
ヴィーガン
グルテンフリー「つけ麺」を専門とする予約制のレストラン。サステイナブルで美味しい食事を提案しており、ヴィーガンにもノンヴィーガンにも絶大な人気を誇る。オーナーの日本人は僕の友人。

ショップ

The Maker Store
アムステルダムのクリエイターたちが作るアイテム
ーーインテリアや服、地元の廃材を使ったアクセサリー、ハーブとスパイスを使った地ビールなどが集合。サーキュラーエコノミーサステイナビリティを意識した商品も多く、アムステルダムの「今」が凝縮されている。

DENHAM
アムステルダムは実はデニム・シティー。そのアイコン的存在で、ハサミのトレードマークで知られるデニムブランド。創業者のジェイソン・デンハム氏は日本ファンとしても知られており、日本のモチーフをデザインしたアイテムも多い。店舗に酒樽がディスプレイされているなど、日蘭友好を感じさせる雰囲気が楽しい。

Miscellaneous
アムステルダム西部にある静かな雰囲気の文房具屋。店は決して大きくないが、雑誌『MONOCLE』と商品を共同開発するなど、存在感、影響力は十分。ここのオーナーも日本ファンのようで、厳選されたハイクオリティの文房具の中には、日本の商品も多い。

オーガニックマーケット

Biologische Noordermarkt
毎週土曜日に開催されるオーガニック市場で、有機農法による食材だけを取り扱っている。アムステルダムではいくつかマーケットが開かれるが、ここが一番ヘルシーで、気分も盛り上がる感じがある。パンやチーズの種類も豊富で、クオリティも抜群。アムステルダム中央駅から徒歩10分。

ホテル

Hotel De Hallen
昔トラムの車庫だった建物がリノベーションされ、現在は映画館やフードコート、デザインショップなどが入る複合施設「De Hallen」の一角。内装もモダンで、居心地がいい。Wi-fiのつながり具合が実は抜群で、ラウンジでコーヒーを飲みながら仕事をするにも快適。僕にとってはサードプレイス。

Pulitzer Amsterdam
17~18世紀のオランダ黄金時代の面影を残すホテル。アムステルダム中心部のプリンセン運河に面した25軒の家を改装して作られた。「ブックコレクターズ・スイート」や「アートコレクターズ・スイート」など、一つひとつの部屋が異なるデザインになっている。一度は泊まってみたい憧れのホテル。

公園

Vondelpark
アムステルダムを代表する公園。ゴッホ美術館やライツェ広場にも近いが、近所の繁華街を感じさせないほど緑が多く、自然の中でゆったりと過ごせる。

Westerpark
アムステルダム西部に広がる広大な公園。園内には子どもが遊べる遊具もあるし、ムール貝の美味しいレストランMossel & Gin」やコーヒーが美味しいカフェ「Espressofabriek」もある。年間を通じてさまざまなイベントも開催されており、多目的に使える楽しいスポットだ。

子どもカフェ

Blender
アムステルダムには子どもを遊ばせつつ、親たちがくつろげる子どもカフェが点在する。ここもその一つ。遊戯スペースで子どもたちを遊ばせながら、お茶やランチが楽しめるほか、子ども服や雑貨のショッピングもできる。子ども向けのダンスレッスンや料理のワークショップなども開かれている。

Candy Castle
アムステルダム西部にある大規模な子どもの室内遊技場。ボールプールやジャングルジムなど、赤ちゃんから小学生まで安心して遊べる遊具がそろっている。入場料は1歳未満が2.5ユーロ、1~12歳が8.5ユーロで、一日中遊べる。保護者は入場無料で、まわりの椅子に座って、お茶を飲みながら歓談できる。Wi-Fiも通っているので、仕事をしている親の姿も。

まだまだ紹介したいところはたくさんあるので、この記事は随時更新していこうと思う。アムステルダムの住民のようにカフェや公園を散策してみれば、きっとこのフレンドリーな街がより身近に感じられるはず。

みなさんのお越しをお待ちしています。

編集者/Livit代表 岡徳之2009年慶應義塾大学経済学部を卒業後、PR会社に入社。2011年に独立し、ライターとしてのキャリアを歩み始める。その後、記事執筆の分野をビジネス、テクノロジー、マーケティングへと広げ、企業のオウンドメディア運営にも従事。2013年シンガポールに進出。事業拡大にともない、専属ライターの採用、海外在住ライターのネットワーキングを開始。2015年オランダに進出。現在はアムステルダムを拠点に活動。これまで「東洋経済オンライン」や「NewsPicks」など有力メディア約30媒体で連載を担当。共著に『ミレニアル・Z世代の「新」価値観』。
執筆協力:山本直子フリーランスライター。慶應義塾大学文学部卒業後、シンクタンクで証券アナリストとして勤務。その後、日本、中国、マレーシア、シンガポールで経済記者を経て、2004年よりオランダ在住。現在はオランダの生活・経済情報やヨーロッパのITトレンドを雑誌やネットで紹介するほか、北ブラバント州政府のアドバイザーとして、日本とオランダの企業を結ぶ仲介役を務める。

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