見出し画像

水のない川 暗渠でたどる東京案内 (本田 創)

(注:本稿は、2023年に初投稿したものの再録です。)

 いつもの図書館の新着本リストの中で見つけた本です。

 こういう感じの “街歩き” 本は、今から15年以上前に読んだ中沢新一さんの「アースダイバー 」、最近では、高橋源一郎さんの「失われたTOKIOを求めて」等を読んだことがありますが、本書は「暗渠」をテーマに東京を巡ります。

 まず、序章「暗渠スケープと景観・空間・時間」で本田創さんはこう語っています。

(p17より引用) とくに大部分の川が暗渠となり、川を介した土地のつながりが見えなくなってしまっている東京では、暗渠をひもいていくことで、今、目の前に見える東京とはまったく異なる都市の相貌が立ち現れてくる。いったんそれに気がついてしまうと、あなたはもう、今までのまなざしで東京のまちをとらえることはできなくなるだろう。

 時代を追ったその街・土地の変化の様はとても重層的で興味深いものがありますね。「水」は、まさにそこに暮らす人々の生活に密着しています。

(p197より引用) そして、人と川との関係も変化していく。かつては生活や産業に必要な水を取り入れるためのインプット源の存在であった川や水路は、都市の発展につれて不要な水、やっかいな水を排出するア ウトプット先へとシフトしていく。
 これに伴い、人々の川に対する意識もありがたいもの、不可欠な存在から邪魔なもの、迷惑な存在へと変わっていく。
 その帰結として、大正時代半ば以降、川や水路の暗渠化がはじまっていく。

 生活水を得るために人は「水路」を作る。そして、その地の生活様式の変遷に応じて「水の扱い」が変わり、それに伴い「水路の位置づけ」も変わっていきます。

 東京の場合は、こういった流れです。

(p198より引用) 川の暗渠化は東京のまちの拡大に連動している。江戸時代から、明治から、関東大震災後、高度経済成長期、その後の都市拡張と、東京のまちは拡大し続けてきた。 そして川の暗渠化は、その歴史の裏返しでもある。

 そして現在では、多くの水路は人々の視界から消えていきました。ただ、中には、その土地の地形や風景、遺構といった手がかりのあるところもわずかに残っています。
 本書はそれらを辿る貴重なガイドブックなのです。




この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?