見出し画像

ことばの教養 (外山 滋比古)

(注:本稿は、2013年に初投稿したものの再録です)

 ちょっと軽めのエッセイを読んでみたくて手に取った本です。
 今までも外山滋比古氏の著作としては、「ちょっとした勉強のコツ」「日本語の作法」などを読んだことがありますが、本書もそれらと同系統です。

 一昔前の古風なちょっと気難しいお爺さんのひとり語りという趣の内容です。そうですねと思えるところもあれば、そうかしら?と首を傾げるところもあります。

 首肯できるところとしては、たとえば「読書の楽しみ」のこういったくだりがそうです。

(p165より引用) 違ったことをしている人間同士が集まって雑談するのが楽しいのと同じように、読む本もなるべく職業や専門から離れたものがおもしろい。

 私の読書も雑食ならぬ「雑読」です。強いて言えばやはりビジネス書系が多いのですが、哲学・科学といったジャンル、また純文学・エッセイ等にも意識して手を拡げようと思っています。そういった馴染みのない分野の本で、思いがけない発見に出会うと、確かにとても嬉しく感じます。

 他方、「知り合い」に係る外山氏の実感は、そうかしら?と同意しかねるものでした。

(p64より引用) 若いときは、すこしでも広い世界へ出たい。ひとりでも多くの新しい知り合いがほしい、と思う。それがあるところへ来ると、逆に、世界を狭くして生きたいと思うようになるから不思議である。

 私もそろそろいい年になりかかっていますが、まだ「知り合いを絞っていこう」と思ったことはありませんね。年賀状をはじめとした葉書・手紙のやりとりはほとんどなくなりましたが、SNSでのつながりはまだまだ拡大中です。
 本書においてよく取り上げられている「手紙」や「電話」といった「コミュニケーション」をテーマにしたくだりを今読むと、ともかく時代感覚のずれを強く感じますね。概ね20~30年ぐらい前という中途半端な過去が舞台なので、かえってその違和感が際立つのでしょう。

 ただ、こういった本の楽しみは、相似と相違を体感することにあります。貴重なのは、年齢・経験・立場・・・といった自分とは異なる背景を持った先人の考え方を知り、そこからいろいろな意味での刺激を受け気付きを得ることですから、その点では有益な本だと思います。

(注:著者の考えには同意しかねると書いた「知り合い」についてですが、今、2022年の暮れ、本書を読んでから10年近く経ちました。SNSでの友人拡大は完全に峠を越し、最近は、母数は減らしながら構成を変化させはじめたといったフェーズですね。とはいえ、馴染みのないジャンルの方とのつながりを増やせればと思っているのですが、なかなかそういった機会に巡り合えないというのが実態です・・・。)



この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?