バカと無知 (橘 玲)
(注:本稿は、2023年に初投稿したものの再録です。)
以前聴いていたTokyo FMのpodcastの番組「未来授業」で橘玲さんが講師として出演したとき紹介していた著作ですが、その内容が面白そうだったので読んでみたものです。
かなり評判になっている本なので図書館での貸出の待ち行列が長く、手にするまでにかなりの時間がかかってしまいました。
刺激的なタイトルですが、内容も橘さんの主張がストレートに表明されていて思い切りの良さを感じますね。
それらの中から特に印象に残ったところをいくつか書き留めておきます。
まずは、“ほめて伸ばす子育て/教育” についての考察。「やっかいな自尊心」の項からです。
1970年代にアメリカ社会で “自尊心ブーム”があり、“ほめて伸ばす教育” が提唱されました。しかしながら、 近年の研究では、ほめる(=自尊心を高める)教育は学業の成績とは無関係だというのです。
よくある “相関関係と因果関係のいたずら(混乱)” ですね。
もうひとつ、脳科学で考察された「記憶の仕掛け」について。
さらに、解説は続きます。
これは、記憶を呼び起こそうとするとき、何等かの刺激(電気・薬剤・視覚等)が与えられると、その影響が記憶内容を歪めてしまう可能性を指摘しています。
このような経緯で生まれる “虚偽記憶” が、「冤罪」やPTSD等の「精神疾患」の原因にもなっているというのはショッキングですね。
さて、本書、タイトルは「バカと無知」というかなり乱暴でなもので、読む前は(勝手に)昨今のSNS上の「炎上問題」や「フェイクニュース」といった問題を扱っているのではと思っていたのですが、それは見当外れでした。
「差別」「偏見」といった人間の感覚や行動を、脳科学や心理学・行動経済学的視座から橘さん流に解説した小文集です。
「週刊新潮」の連載の再録とのことで、テンポよく話題が展開するので取っつきやすい著作だと思います。
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