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無心になってトリトンブルーを塗った

ゴールデンウィークは仕事だったり休みだったりしたので、休みのタイミングで、かねてから計画していたお古のタンスを蘇らせる計画の準備に取りかかった。
お古のタンスと言うべきか、チェストと言うべきか、とりあえずぼろぼろの引き出しはこちら。

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妹が学生の頃からずっと使っていたこれを捨てると言うから、ちょうだいと言って、10年前にもらったやつである。妹のお下がりである。
ホームセンターなどで5000円弱で売ってそうな、どこにでもある安っぽい物で、5年くらい前に引き出しの板が毎回外れるようになり、接着剤で貼り付けてまだ使える状態に戻した。
それにしても表面がみすぼらしいくらいぼろぼろなので、さすがに私もそろそろ捨てようかなと思ったが、意外と大きくて捨てるのも面倒なので、ちょっと色を塗って蘇りを試みることにした。

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ブルーシートを敷いて、買ってきた電動ドライバーで引き出しの取っ手を外した。これくらいは電動じゃなくても手動で楽々にやれる作業だが、ウィーンとネジを外せるのは楽しい。結構大きくてスペースをとるのだが、ボルンバのおかげで床にスペースがある生活を送れていたため、準備はスムーズで良かった。
ありがとう、ボルンバ。
だけど、お前が先週コンセントに絡まって一番大事なコンセントを引っこ抜いたこと、それがよりによって火曜日の夜で、そのせいで「大豆田とわ子と3人の元夫」の第3話が録画できていなかったことをまだ許していない。
Tverで見れたからいいけど、ハードディスクのコンセントは私の命綱だということを覚えておくように反省させるために、自粛を命じた。
本当のところは、塗料をこぼされると困るので、しばらく予約タイマーをオフにしてボルンバにはお休みしてもらうことにしたわけだけど。(数日後、大豆田とわ子の再放送がやっていたからボルンバを許すことにした。)

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塗るのは、検索に検索を重ねた結果、一番ヒットした「ミルクペイント」という塗料。
今、ペンキって言わないんだね。塗料には水性と油性があること、この世に森永乳業の牛乳原料で出来た天然由来の塗料があること、それがDIY業界で天下統一しかけていることを学んだ。


色は、悩んだ末「トリトンブルー」にした。
青に塗るとは決めていたが、青にも「ターコイズブルー」「インディアンブルー」「ディクシーブルー」など色々あって、どの青にするかで相当な睡眠時間を削ってトリトンブルーに決めた。
また、何にでも濡れるようにする下地をこぞって先人が勧めるため、「ミッチャクロン」といういかにも密着しそうな下地を買って、まずはそれを塗った。
これを塗らないとはじいてしまって上手く塗れないものがあるらしいが、逆にこれをまず塗れば何にでも塗れる優れものらしい。
スプレータイプが楽チンかと思ったが、ムラができるので次買うときはぜったいにスプレーじゃない方を買おうと思う。何事も使ってみないと分からないものである。



そして、一晩置いて、ようやくミルクペイント塗りに取り掛かる。
刷毛とペイント用のローラーとその替えなどは全て100均で購入。使い捨てできる値段。何でも100均で買える時代に感謝である。
結論だが、刷毛よりもローラーだけで良かった。
ローラー最強説。
簡単だしムラがないし、早い。良い。
ちなみにローラーのための容器を買い忘れたのでタッパーで代用。

取っ手も同じミルクペイントのメーカーの、「アイアンペイント」の色はアンティークブロンズをチョイス。
アイアンペイントってやつもこれまた凄いやつで、プラスチックや木材に塗っても金属っぽい仕上がりになるという錬金術のような塗料。
そのアイアンペイントを金属に塗ったため、仕上がりもちゃんと紛うことなき金属だった。アイアンペイントの無駄遣いだ。アイアンもガッカリしていると思うので、今度は本領を発揮できるように、金属じゃない物に塗ることにする。許してね、アイアンペイント。



トリトンブルーは、蓋を開けた時に、あれ?と思った。
塗ってみても何となく違和感がある。思っていた青とは違っていた。くすんでいてグレーっぽい。
うーん。
もっとパキっとした冷たい感じのするモロッコのシャウエンを旅した時に味わったあのブルーの世界、それこそタンスの下に敷いているブルーシートみたいな色にしたかったのだが・・・。塗るたびに落胆した気持ちを打ち消せないでいる。しまったなぁ。テンションが下がっていく。

そもそも「トリトン」って何や。
中断して気分転換に「トリトン」調べてみることにした。
すると、「トリトン」とは、海神ポセイドンの息子で半魚人の姿をした深海を司る神らしい。なんやかんやあって、最終的に溺死しているらしいトリトン。
うーん。
調べなきゃ良かった。ブルーな気持ちになる。

念のため今度は「トリトンブルー」で調べてみると、ANAの飛行機の青色塗装の色をそう呼ぶらしかった。
ANAの機体の青色は、嵐を鎮める「安全の神」として崇められ、船の航行の安全を守っていたとされるトリトンを、海から空に変わっているものの、「旅の安全」の願いを込めてトリトンブルーと名付けたものらしい。
なるほど。
ブルーな気分が一気に晴れてきた。
トリトンブルーの奴ってば。
これは悪くないね。
むしろ、私のためのブルーである。
旅情を感じるじゃないか。
ANAのマイルを貯めている者として縁も感じる。
トリトンブルーに対して急に納得したし、何なら急激に深く愛し始めていた。
調べて良かった。

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そして2度塗りして、一晩置く。
ついでに20代の頃、ポップなアメリカンぽい部屋にしたくてヴィレヴァンで買った白と黒のチェック柄のちゃぶ台にもトリトンブルーを塗ってみた。
そしてちゃぶ台にはミルクペイントの「アンティークメディウム」を重ね塗りしてみた。
このアンティークメディウムをシャーっとポイント的に塗ると、アンティークっぽい汚れたシャビーシック感を表現できるらしい。
わざわざ汚すという作業に戸惑いを隠せないが、シャビーに憧れはある。
タンスにやってみる勇気はなかったので、ちゃぶ台にだけシャビーをほどこしてみたら、シャビー感というよりもうす汚れ感が出てしまった。
少しモロッコをイメージしたマスキングテープを中に貼って、しゃれた感じに一応仕上げたが、薄汚れ感が半端ない。シャビーとは一体…。
改めて「シャビー」の意味を調べてみると、「みすぼらしい」とあった。もともとの意味通りになってしまった。
手間暇かけてみすぼらしくしてしまった。
まあいいや。
シャビーってことでOK。

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タンスはシャビーにせずに、ベタ塗りのままでいく。

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そしてニス(トップコートと呼ぶらしい)を塗ってまたまた一晩置いた。
ちょっとテカっていい感じ。
いよいよ完成。
私のトリトンブルーがそこに仁王立ち。

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引き出しの3段目の割れた箇所は隠せなかったが、それ以外のボロボロ感は見事にトリトンブルーに包まれて生まれ変わった。
取っ手はブロンズよりも黒が良かったかも知れない。
飽きたらまた取っ手だけ黒に塗り直そうと思う。

それにしても、この巨大な達成感は何だろう。
塗っている間はとにかく無心になれた。
色んなストレスやネガティブ思考や邪念を吹っ飛ばすには、
没頭だ。
没頭こそ正義。
何かに悩んだり疲れている人はみんな、何かに色を塗ったらいいと思う。
悩める全人類にオススメしたい。最高だから。
整えられていくし、美しい色の表面を見ていると惚れ惚れする。
実はトリトンブルーのタンスを見ながらご飯を3回食べて、ビールも飲んだが、最高だった。
こちらも酒のつまみとして、オススメしたい。

なんだか凄く嬉しくてニヤけてくる。
ただ、ぼろい傷だらけのタンスに色を塗っただけだが、古いものが新しく蘇ったことが嬉しい。
新しい物好きな私なので、「古いものを大切に長く使おう」という世間で奨励されていることに喜びを感じているのではない。
自分の手で自分の好きな形に変えられたことが嬉しい。
その結果、すっかり新しくなったから、新しい物好きの私の欲も満たされている。
10年住んでいるボロボロの築40年を超えているマンションの私の部屋も、私の手で新しく、私の好きな場所に変えていけるような、そういう手応えを感じた。
トリトンブルーが、私の新しい船出を見守ってくれているような気がした。


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