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まったくどうなってんの、が鳴り止んだ時

まったくどうなってんの、ということがよく起こるコロナ禍なう。

医療従事者がワクチン最優先のはずが、1割位にしかいきわたっていない中での高齢者のワクチン接種スタート。
我が職場で働く高齢者でもある看護師さんたちが、どちらでワクチンを受けたらいいのか相談に来られて、色々行政に問い合わせてみると、医療従事者として受けるよりも高齢者として受けた方が早いからそっちで受けてくださいとの見解。なんじゃそりゃ。それ打つの看護師さん達なんですけど。
で、どこに申し込むんですか?といった疑問に関しても、医療機関は自分たちも受けていないワクチンを高齢者に接種する羽目になるものの、いつからどうやって接種するのかも医療の端っこジャンルのわが職場にお達しなど来るはずもなく、1100人と発表するのをかろうじて避けられる、1000人越えと発表できる1099人の陽性者を叩き出した大阪。

過去最多なのに緊急事態宣言じゃなく新たにまん延防止措置なんちゃらを発令させ、吉村ちゃんの評価は地に落ち、会話の中で「マンボウ」というワードを用いる時、ウ〜!と助走をつけてマラカス持ちたくなる自分を抑えきれず、1人恥ずかしくなってマンボウと言うことを憚られる今日この頃。

大阪とか東京とか感染者の多い地域からワクチンを回せばいいのに、と素人考えでそう思うが、世界的に見て感染者の少ない国である日本になかなかワクチンが回ってこない状況から考えると皮肉なものだなあと思う。

そういえば、すぐ近くの万博公園ではラブリンこと愛之助が聖火を持って走り、後々、兵庫県加古川の聖火ランナー陣内智則へと受け継がれるという、紀香と逆方向の聖火リレー。まったく、どうなってんの。

大阪は医療が逼迫しているとのことだが、何を今更とも思う。急性の胃腸の病気になり入院を希望した若い男性がいたが、PCR検査を自力でどうにかして受けて陰性を出してその3日後に入院を受け入れます、それから手術を行います、それまで絶食でお願いします、って簡単に言われてびっくりしたケースがあった。
高齢者ではなかったが、3日間絶食では死なないけど、コロナでは死ぬってことなのか。手術が必要なくらいの病状で自宅で3日間絶食はなかなか辛いと思う。
これが医療が逼迫ってことなら、もうだいぶ前からあちこちで起きている。

最寄り駅のスタバにも梅田にもむちゃくちゃ人がいるよ。
岸和田でだんじりをしたみたいだし、琵琶湖でBBQパーティーは行われていたし、私は1人で富士宮焼きそばを食べたけど、やたらと官僚や公務員は送別会をしたがるみたいだし。まったく、どうなってんの。

かと思えば、皇族と結婚したい男がA4の用紙28枚6万字を費やして自己弁護している件についてあれこれ言われている。まあ、どうなってんのという憤りをただつらつらと2000字以上書き連ねている長文野郎の私が言うのもなんだが、面白くもないオチもない自分の家族の話を6万字も使って説明して、まず当たり前に国民に読んでもらえると思っているあたりが凄いなあと思うし、自分と自分の家族の弁護もこんなに下手なら、弁護士として相当無能な男だなと思ってしまうあたり、私もゴシップに踊らされている愚民だわとも思う。さすがに1枚も読まなかったけど。

さらば青春の光の東ブクロの妊娠騒動もあった。東ブクロと言えばスキャンダルだし、セフレが山ほどいることで有名(ブクロ自体知らない人は知らないだろうが、ブクロを知っていて好きだと言う人の中では彼がゲスだということは超有名な事実)なのに、相手の女性が、SNSで東ブクロにDMを送って関係を持っておきながら、遊んでいる男だと思わなかったって被害者となって言っているのも、どうなってんのと思う。妊娠は1人でできないし、避妊は女性からも言えばいいと思うが、ブクロは元々クズキャラなのでどうなるのかなと静観している。マリエの告発(昔、枕営業をけしかけられた)を揉み消すために個人事務所のさらばが利用されたのではとも邪推する。どうなってんのかね芸能界。

アメリカのドラマ「ウォーキングデッド」のメインキャラ、ダリルが、これまで恋愛なんてせずに仲間のためにただひたすらゾンビと人間と戦い続けていたのに、最近放送されたスピンオフ的なエピソードで、実は、ゾンビを殺しながらもどこの馬の骨ともわからん女とちゃんと恋愛をしていたことが分かり、戸惑い過ぎて友達のしめちゃんと長々とメールを送り合って、まったくどうなってんのよ、どうしちゃったのよ制作陣、とお互いの動揺を沈めたり。
ゾンビの世になろうとひっついたり別れたり恋愛しまくっているアメリカ人のコミュニティーで、俺たちのダリルだけは風呂にも入らず恋もせず、仲間を助けヘビを食って生きていると信じたかったよ。まったく。まあ恋ぐらいさせてやろうか。

もう世の中はどうなってんのの連続で、オードリー春日とフワちゃんのペアが、9か月の特訓でエアロビ全国3位に入賞したのを見て感動してしまい、私も腹筋しようと決意したり(すぐその決意は破れたけど。私の決意なんてそんなもん…)、坂元裕二脚本のドラマが始まるということで楽しみができてうきうきしていたり、3年前の大阪北部の地震でガタがきている我が家のベランダに、突然今更のように、ようやく補修工事が入ることになったり。
買ってから3年も寝かし続けていた仮想通貨のコインがいきなり爆上げしていて、私の財布は恐ろしく潤ったり。あくまで現時点だし、今後またどうなるかは分からんが。
どうなってんのと憤りを感じる中にも、嬉しいタイプのどうなってんのもあったりして、悲喜こもごもである。


そんな中で読み始めた朝井リョウの新著の「正欲」。
まだ読み終えていない本について、あれこれ言うのは慎重にいきたい派だが、この本は間違いなく、読み終わる前だが断言できる。
えげつない本である。
私が以前noteに書いた「多様性」についてのもやもやを冒頭でスパっと簡潔に言葉にしてくれた。

多様性、という言葉が生んだものの一つに、おめでたさ、があると感じています。  

初っ端からグサリ。

清々しいほどのおめでたさでキラキラしている言葉です。
これらは結局、マイノリティの中のマジョリティにしか当てはまらない言葉であり、話者が想像しうる〝自分と違う〟にしか向けられていない言葉です。  
想像を絶するほど理解しがたい、直視できないほど嫌悪感を抱き距離を置きたいと感じるものには、しっかり蓋をする。そんな人たちがよく使う言葉たちです。

もう、まったくどうなってんの!な雑念や雑音に取り憑かれていた私を一気に静寂の世界へと吸い込んだ。
浴槽の栓を抜いたような勢いで。
ああ、私はこういうことが書きたかったのです、うまく書けなかったけど。

ほっといてほしいんです。
ほっといてもらえれば、勝手に生きるので。  
でもどうしてか、社会というものは、人をほっといてくれません。  
特に組織の中で働いていると、本当にそう感じます。
人は詮索が大好きです。

すごい本だとページをめくるたびに思う。
朝井リョウという人間が、私のように、いや私の何倍もひねくれた思考を持っていることが手に取るようにわかる。
どの表現も面白い。
人間の嫌な部分の描写が特に興味深い。
以前、オードリー若林と朝井リョウとDJ松永の3人(ネガティブ繊細三銃士)が集まると「こういう人は苦手だ」という話ばかりしている、というのを聞いたことがある。むちゃくちゃ親近感が湧いた。私もそうだから。


雑念と雑音が一気に消えた。
私の脳が静かになって、すごい大きな一つの波がきた。
「正欲」の世界にずっぽりと入った。
まったくどうなってんの、の大合唱はピタリと止んだ。


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