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インドで、もれなく白く加工された私

インドに行くと、
かなりの人数のインド人から言われるのが、
「写真を撮って(ただ撮って欲しい)」というのと
「一緒に写真を撮って」というセリフ。
インド人は写真に写るのが好きな人が多いような気がする。
日本人ということでいいカメラを持ってそうということも関係しているかも知れない。
昔はたいしたことないデジカメでも珍しがってくれて
「写真を撮って。そして住所を教えるから日本に帰って印刷したら送って。」と頼まれたものだった。
いにしえの時代だ。
数年前からそれは「メールで送って」に代わり、
昨年は、WhatsApp (海外で主流のLINEのようなコミュニケーションツールアプリ)でその場で送りあう最新の時代になっていた。

なので集団に話しかけられると大体写真を撮る。

インドのアムリトサルの女学生たち。

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ハンピのハヌマーン寺院の岩山の上で会った家族。

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みんなで一緒に、無料で振る舞われたカレーを食べた時のもの。

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気付いた人もいるかも知れないが、
インドにはショートヘアの女性はほぼいない。
ショートヘアの若い子に会ったことはない。

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バラナシのお祭りの夜に会った女の子。
このくらいの歳の子で時々髪の短い女の子はいるが、それもごく僅か。伸ばす過程なのだろう。
またボランティアをしている時に「死を待つ人の家」に入所していたおばあさんの何人かがスポーツ刈りのようなヘアスタイルだった。それは恐らくシラミ対策で、頭を洗ってあげやすいための必要に迫られた理由だったと思う、本人の意思では決してない。

それ以外は、
若者も年寄りもみんなこぞってロングヘアである。
茶髪、金髪もいない、
前髪を作っている人もほぼいない。
真っ黒なロングヘアか、白髪のロングヘアだ。
流行とかではなく、もはやそういう文化?なのだ。
このことに気づいた時は衝撃だった。

ありのままの美しさを大事にしているんだろうか、
いや、
インド人女性のステレオタイプから外れることは許されない空気があるのかも知れないな、
なんて考えたりもしていた。

だから、日本でも公開されたボリウッド映画の「pk」を見た時にびっくりした。


ヒロインのアヌシュカ・シャルマがショートヘアだったから。こんなの初めてではないか!と驚いた。

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でも予想通り、思いっきりウィッグでアヌシュカちゃんは綺麗なロングヘアを維持しているし、映画での設定は、インド人だけど、インドではなくベルギーに留学していて、バリバリ仕事に生きている女性だった。

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あと、インド人女性は海に来ても水着で泳がない。
これもインドのビーチに行って初めて知った。
そもそも人前でガシガシ泳ぐことはないし、一部の女性が、サリーやパンジャビのまま、膝くらいまで海に入っていたくらい。
ガンジス川の沐浴も服のままドボンだ。
そんな訳で、髪の短いジャパニ女、時に一人で来てビーチで水着(と言っても短パンとタンクトップ)で泳いでいる女は目立つのだろうなと思う。

もし私がインドで女に生まれたら、やっていけるだろうか…と思ったりしていた。
焼肉を定期的に食べたいから、インドでやっていけないのは明らかだが。

昨年、ボリウッドスター、シャールク・カーンの誕生日に、彼の豪邸へ冷やかしがてら見学に行った時に、インド人の男性ファンが何千人も集まっていた場に居合わせた。
その時の臨場感あふれる実録ブログはこちら↓


シャールクが、誕生日を祝いにやって来た何千人ものファンの前に現れた時に、一斉に男性ファンたちがスマホを掲げて撮影していた。
それ自体は、野外フェスなんかでよく見る風景だったが、何となく違和感があった。何かが違った。

そのスターが家の中に戻りイベントは終わり、帰路に向かう途中、何十人もの男性ファンが今度は珍しい一人でやって来たジャパニ女に目をつけて、
「一緒に写真を撮ろう!」と言われまくった。
何人もの男子とセルフィーを撮る時に違和感の正体が見えてきた。
Whatsapp で即座に私に送ってくれた写真を見て確信した。

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美白、美肌加工がえぐい。

私のiPhoneで撮った写真とあまりにも違った。
どの男の子も、デフォルトで色白加工がされていたのだ。いちいち後で加工を重ねる日本のギャルとは違って、最初からそういう設定にしているらしい。
スターにスマホを掲げた時に感じた違和感は、みんなのスマホに写る人物がもれなく色が白いという点だったのだ。
Whatsapp で送ってくれたインド人男子たちの肌の色がみな等しくツルピカに薄くなり、誰が誰だか分からなかったし、私は鈴木その子みたいに真っ白オバケになっていた。今の時代、色白の人は桑田さんちのmattで例えるべきかも知れないが、鈴木その子で例える40代を許してほしい。
その白オバケの写真を口々に「beautifulだ」と囃し立てていて私はなんだか虚しかった。まるでmattの横に写っているおじさん芸能人みたいな不自然さがあるのに。

そうか。そうなのか。

インドのカースト制度では、下層に行くほど、色が浅黒い人が多い。物乞いや、掃除の仕事をしている人たちの色の黒さは群を抜いている。
一方で、テレビや映画に出るボリウッドスターの肌の色は男も女も白く滑らかだ。黒くても織田裕二くらい。そのスターが美白クリームのCMに出ている。
スターのように肌の色が白くなることがインドの男性にとってもステイタスなのかも知れない。

私だって、友達と撮った写真を少し露出を上げて白くすることもなくはないし、化粧品に「美白」と書いてあるとついつい釣られるが、旅の途中、面倒で顔以外には日焼け止めを塗らなくなり、もちろん日除けのアームカバーなんてしないから、腕が真っ黒になるがそれほど気にしていない。あーあ、焼けたなぁと思う程度。多民族国家ではない日本において、肌が白くないと差別されるなんてことはほとんどない。
しかし、白い肌が美とされていることは重々承知しているし、憧れもする。

最近では「肌色」という日本語は「うすだいだい」「ペールオレンジ」と言い換えられ、顔の絵文字も肌の色が何パターンも作られるなどの配慮がある。

否定したいルッキズムに、私自身もある程度汚染されている部分もあるが、
自分で選択する自由もあり、
個性を大事に、そのままでも十分、
外見で人を差別しないように、と思っている。
ブルーハーツの歌を時々口ずさむくらい、
生まれた所や皮膚や目の色でいったいこの僕の何がわかるというのだろう、という気持ちを持って生きているつもり。
しかし視覚から判断するのがほとんどの生物・人間としては、ルッキズムを丸ごと排除するのは至難の技だ。

そのままでも十分素敵な子たちだったのにな。
このインドという国では、
たとえ男に生まれたとしても苦労するのだなぁと、
スマホの画面に思わぬ新たなインドの一面を見せつけられた気がして、心がざわついた。

インドという国は、何度行っても、
私が普段目を閉じて見ないようにしていることを、
新たな気づきとして
思わぬ形で突きつけてくるから、
刺激的ではあるのだけど。



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