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台湾茶を買いに

私は麦茶が好きではなくて、もう近年はずっと家のお茶は台湾で買ったお茶っ葉を沸かして飲んでいる。
麦茶の麺つゆ色の茶色でも、緑茶の緑でもない、あの輝く黄色のお茶がとても好きなのである。香りを嗅ぐだけでぶっ飛びそうなくらい好きだ。
もうずっと毎年、定期的に台湾に行っているので、私は台湾で茶葉を業者の人みたいに買い付けていた。
お茶っ葉がなくなりかけたら台湾に飛ぶ。
その前に小籠包が食べたくなったら、ふらっと台湾に飛ぶ。そしてお茶っ葉を買う。
そんなペースで訪台していたから台湾茶のお茶っ葉を切らすことは無かった。
しかし、このコロナ禍で、2020年1月に台湾に行ったのを最後に、お茶を仕入れに行けていないのである。

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(台北の茶藝館にて)

その時はチラホラ台湾でもコロナの感染者が出ていたが、まさか世界がここまでの鎖国になるとは思っておらず、台湾に住む友達に会いにまたすぐ台北に行くつもりだったから、買い付け業者レベルに大量にお茶っ葉を仕入れてはいなかった。それでも夏頃までは在庫は持ったのだが、いよいよ在庫が切れるという時が来てしまった。
私の好きな台湾茶は、阿里山高山茶と東方美人茶、凍頂烏龍茶(清香)なのだが、日本のスーパーなどで売っている烏龍茶とかは全く別物で、香りも味もかなり落ちるし、台湾のあの乾燥して丸まっている茶葉が愛おしくて好きで、そういうタイプはあまり日本で売っていない。ちなみに、台湾の阿里山に登って雲海と日の出を見た寒い朝に、そこで飲んだ阿里山高山茶が人生で1番美味しいお茶だと思ったから、阿里山という名前が付いているお茶は全て信用している。間違いなくお茶界のNo.1だと信じている。

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(阿里山で見た朝日と雲海。)

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(台湾のファミマで必ず買うお茶。ペットボトルなのに台湾茶のお茶っ葉入ってるのがすごくいい!)


阿里山高山茶はネットで探したらかなり高価だったため、仕方なくメルカリで買うことにした。現地の値段よりは高いが背に腹はかえられない。誰かが台湾で買ってきて飲まずに開封していない阿里山高山茶の茶葉を150g買って、しばらくしのげることになった。お茶のポット1.5リットルくらいに一回5gくらいしか茶葉を使わないから30回分くらいいける。ちゃんと現地の味で美味しかったから、これがなくなったらまたメルカリで買おうかなと思っていた。

私はコロナが落ち着いたら、まず最初の海外旅は台湾と決めている。台湾はコロナ感染拡大をかなりコントロールできている優良国だと思うから、スペインかインドに行く前に、まず台湾で慣らし運転をしようと思っているが、それでも今の情勢を考えると、台湾に行ける日はまだまだ先になりそうだ。
困ったなぁ、と思っていたら、カミーノ仲間で台湾好きのTwitterのフォロワーさんが同じように自宅の台湾茶の在庫が切れることを嘆いていて、「私も家の台湾茶の在庫が切れたからメルカリで買い足したよ」と言うと、「台湾茶を買うなら池田市にある『時光舎』という台湾カフェがおすすめ」と向こうも教えてくれた。
池田なんて行く用事もないし、電車に大分長く乗ったりして、家から1時間近くかかるしなぁとスルーしかけていたが、何となく心に引っかかった。
旅好きでスペインと台湾好きの、色々話が合う人が薦めるお店に興味が湧いて、行ってみることにした。よく知らない場所に行くのもまるで旅みたいで面白いかも、と思った気がする。

Google mapsの言う通りに電車を乗り継いで降りて歩いて1時間かけてやってきた時光舎は素敵な一軒家のお店だった。

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看板も台湾の切り絵文字。懐かしい。
扉を開けるとそこは台湾だった。

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素敵。
靴を脱いであがり、階段の下の狭いスペースをわざわざ自分で選んで座った。
店に広がる揚げ物か炒め物の匂いが、台湾で嗅いだ匂いと同じだった。
台湾の代表的な凍頂烏龍茶の清香がちゃんとメニューにあり、店員さんが火にかける小さい囲炉裏のようなセットを置いてくれ、その上にヤカンを乗せてくれた。ヤカンがガラスじゃなけりゃもっといいんだけどね。

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蓋のついた湯飲みでちびちび飲むのが、台湾で入る茶藝館によく似ていて良かった。
ちなみに台湾の凍頂烏龍茶は、あの有名なサントリーの烏龍茶とはもう全くもって別の飲み物で、色も茶色ではなく透き通っていて、苦いどころか甘い、本当にスイート。香りもすごくいい、全くの別物。これよ、これこれ。頷きながら飲む。通ぶっている人と思われないように口には出さずに。

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ちゃぶ台もテーブルランプも、台湾語で書かれたレシピブックの本も台湾の地図のポスターも、インテリアも。
ああ、台湾の旅先でふらっと入るちょっと綺麗めの古き良きカフェとかごはん屋さんの雰囲気そのままだ。
晩ごはん前なのに、ついつい点心セットまで頼んで口の中まで台湾滞在モードになった。

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(春巻、水餃子、マンゴープリン、パイナップルケーキ)


やかんが空っぽになるまでお茶を何杯も飲んで、現地よりもメルカリよりもはるかにお高い値段の凍頂烏龍茶(清香)を購入した。普段はケチな私だが、ここは太っ腹で、値段を気にせずに買った。
どう考えたってわざわざ来る価値があったなぁとしみじみ思ってしまっていたからだった。
家でスマホでポチりとメルカリで買うのは簡単だが、メルカリではこの台湾の匂い、雰囲気、空気は味わえない。
これを味わうのが旅の醍醐味だし、これを現地で味わえないから今辛いのだ。
時光舎は限りなく台湾に近い場所だと言えたし、台湾に行きた過ぎてどうにかなりそうなこの気持ちを鎮めることができたような気がするし、また真逆なことに、よけい台湾に行きたいわん!という気持ちが強まってしまったような気もする。不思議だけど相反する気持ちが両立している。
それでも、わざわざやって来たことに対して満足感と教えてくれた人に感謝の気持ちでいっぱいだ。
自分と似たようなタイプの旅をする旅人のオススメは信用できるなぁと思ったし、一方で、メルカリで買ったよと旅人仲間にアドバイスした自分が、ちょっとだけ格好悪く感じて恥ずかしかった夜だった。

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