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「島はぼくらと」を読んで ※だいぶネタバレあり 

最近読んだ本。「島はぼくらと」


中学生くらいまでは本当に本の虫で、海外の作家さんの本も日本の作家さんの本もとにかく何でも読んでいた。
日本の作家さんで好きなのは、有川浩さんだ。
中学に上がって「図書館戦争」シリーズにどハマりして以来、有川さんの本しか読まなくなってしまった。


そして高校に進学すると、進学校だったことと部活に情熱を燃やしていたこともあって、本を読まなくなってしまった。
大学に入って大学図書館で本を探しても、そもそも大学図書館の文庫や単行本の配置が好きじゃなかったのか、それとも大学図書館だからそもそもあんまりそういう本を取り扱っていないのか、読書が面白いと感じられなくなってしまった。

一回活字から離れると、また本を読みたいと思っても、昔のように自分の好きな本を探す段階から下手くそになってしまうのかと、心底落ち込んだ。


さて。現在はカナダのバンクーバーで留学生活を送っているわけですが。
暇だからやっぱり本を読みたくなって。
けど合わない作家さんて、とことん合わないじゃないですか。
そこでようやくインターネットの力に頼ってみることにしたんです。

「有川浩 好きな人 読む本」
みたいな感じで検索したと思う。

そこで出てきたお名前の一人が、「辻村深月さん」だった。
彼女の名前で再度代表作などを調べてみた物の、残念ながらおすすめされていた作品は図書館にはなくて。
ぱっと見の本の表紙が素敵だったからという理由でこの本を手に取ってみた。



舞台は、瀬戸内海にある(多分架空の)島、冴島。
幼なじみの高校生4人組、それぞれの視点から通して見える島での生活、人々の葛藤、そして自身の葛藤などが描かれている。


物語の序盤は霧崎という、脚本家の男が島にあると噂される「幻の脚本」を求めて島にやって来た様子についてが書かれているんだけど。
その霧崎という男が島の島民でもない私でさえちょっとおかしい人だなって感じて。もちろん、主人公の4人組もそうなんだけど。
けどあまりにもその話がゆったりと続くものだから、「これってどういう話の流れになっていくんだ…?間延びに感じて、若干飽きてきたんだけど…笑」って感じで、あんまり一気読みって感じではなかった。

けど、ちょっと勘づいてはいたけどちゃんと伏線になっていて。後半はおぉ~!!ってなったからよかった。中盤から私も流れをつかんできて、最後は圧倒されたなぁ。ある意味、アニメのヒロアカみたいな(全然違うけど。ヒロアカは雄英体育祭までは正直私にとってはつまらなかった…笑)


個人的に面白いなぁって思ったのは、小さな島ならではの人間関係や昔ながらの慣習。
島にはもともとずっと島に住んでいる住人の他に、Iターンでやってきて移住した新しい世代もいて。それぞれがそれぞれに悩みや不満があったりして。
そこの難しさとか。

あとは主人公4人組も、同級生ではあるんだけど、それぞれ「家」としての立場があったり、個人的な考え・性格もあったり。

中でも印象的だったのは、これも島ならではのことなんだろうけど、たとえ島の住民同士で争いごとがあっても、「最終的には友好関係に戻っている(表面上だけかも知れないけど)」ということ。

やっぱり狭い世界。何かと思うこともあるだろうけど、何かあればすぐに広まるし、ずっと遺恨が残りそうじゃん。小さい島だし。

それでも、たとえば喧嘩した次の日には既にからっと今まで通りに戻っていたり。
Iターンでも来てすぐの人は、なかなかこれに慣れない人もいたって書いてあった。
私も、実際に体験したらえっ?怖ってなるだろうなぁ…
私、根に持つタイプだし。
一回嫌いになったら、フェードアウトするし。


けど、小さい島だから、完全に縁を切るのも難しいんだろうね。
その人のこと、ここは嫌いだけどここは好き、あるいは尊敬する、とかもあるし。
そういう不完全な感じというか、人間くさい感じが、きれい事ジャ内観があって、好きだなぁって思ったし、私も学ばせられたかな。


人の一面だけ見て好き嫌い決めて、すぐにフェードアウトする必要も無いのかなって。



(※このあと二つ感想書くんだけど、かなりのネタバレ含むから見たくない人は回れ右してね!!)



もう一つ。
霧崎に帰ってもらうため、新が「幻の脚本」を書いて霧崎に渡した結果、なんと賞を取った話。
新は自分の実力に自信が無くて、きっと霧崎が島を出る直前まで一緒にいた医者の本木が少し改変したんだろうと思って本木に聞くシーン。
本木の言葉が刺さった。

「医者になることを頭がいいと思ってくれていることは光栄だけど、だからといって、僕に脚本家の能力があるかどうかはまた別の話だよ。医者の勉強をするのに向いている頭の良さもあれば、文章を書くのに向いている頭の良さもある。一つが出来れば全部出来るなんてことはないし、ついでに言うと、僕には恐ろしく文才がないよ。」

「島はぼくらと」辻村深月(講談社、2013年) p.226

そう。まさにそう。
日本にいたときは、何か出来ないことや周りと比べて劣っていることがあれば、「周りと同等になるまでは最低限努力する」ことが暗黙の了解だった気がする。
それはそれでいい。
けど、それをずっと続けていると、常に「自分は人と比べてどこが劣っているんだろう、どこを直さなきゃいけないんだろう」って常に考えるようになっちゃって、結果的に自己肯定感が下がった。少なくとも、私は。


けど海外は違った。
自分の得意をとにかく伸ばす。
苦手なことは、得意な人に任せる。


実際その方が効率的だし、パフォーマンスとしてもいい。
だから人間は一人一人違うわけだし。
同質になってもしょうがない。



そして最後に一つだけ。※結構なネタバレするので、注意!

新~!!ついポロッと衣花ちゃんのこと好きって伝えちゃうのは反則なんよ~~/////////
え~~~~もう急な爆弾落としてくるじゃん~~~好き///////
あと、源樹が朱里に好意を打ち明けるシーン絶対あると信じてたのになかったのにはちょっと悲しかった…(それとも私が読み落としただけ…??)

とにかく、4人とも、ずっと幸せでいてくれよなっっっっ!!!(ヲタク)

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