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深秋は午睡と風味絶佳に満たされる


未だ猛暑が残る頃に高松でうどんをたんまりと食べた。お店によって異なるうどんの食感とお出汁と天麩羅の余りの豊富さに店内で感涙してしまいそうになる。
その時に造形が美しい和三盆を幾つか購入した。季節を感じる菊の形のものや檸檬ピールが含まれたものと様々だ。その繊細な美しさにずっと見ていられるなあとたくさんある和三盆をじっくりと鑑賞した。しみじみと優しい甘さと幸福感に恍惚とする。


𖡼.𖤣𖥧𖡼.𖤣𖥧


◎たぶん彼女は豆を挽く - 庄野雄治

徳島県にお店を構えるアアルトコーヒーの店主の庄野雄治さんの著書。以下の天然生活のサイトの庄野さんの一日を取材したものはまさに理想そのものでした。

本書は自身の好みに合う珈琲の作り方を細やかに柔らかくも芯のある文章で教えてくれます。最中に珈琲を淹れたくなり、読み終わった時にはまた別の珈琲が飲みたくなる、罪深い一冊となっています。

そういえば以前、大阪のある喫茶店で女性店主がコーヒーに一つまみの塩を入れてくれたことがあった。店主は「これでコーヒーの甘さがわかるわよ」とにっこり言ったのだが、確かに甘味が増したような気がした。

コーヒーは懐の広い飲み物なのだ より

こちらにも紹介されている様に、珈琲にひとつまみのお塩を入れると甘みやコクがより感じられるそうなのだ。半信半疑の夫を横目に丁寧にドリップしてみると、まるで違う珈琲を飲んでいるかの様なまろやかさ。ふたりとも目を丸くする。まったりとした珈琲を好むであろうこれからの季節にぴったりだなと干し柿のお菓子を摘む。
珈琲にはほんの少しのお塩を。新しい発見に心が踊る。


◎シェニール織とか黄肉のメロンとか - 江國香織

三人娘と呼ばれていた女性たちが織り成す、たくさんの美味しいものに溢れた些細な日常を描いた物語。

江國香織さんが描く健やかに生きる女性たちが好きだ。
十人十色な恋愛をして美味しいものを食べてお酒を嗜む姿は気持ちがいい。年齢を重ねても少女らしさが垣間見得る愉しそうな女性たち。こういったのびのびとした生活が好きだなと生きるということが好きになる。

ともだちは季節に咲く花である

深沢七郎 より

人生のどのような場所に居ても細々としたことを話すことは非常に難しいことで、そんな風に接することが出来る友人というものはとても貴重なのだな、と年齢を重ねていく度にひしひしと感じる。きっと今、わたしにとっても友人らにとっても季節の変わり目なのだろう。


𖡼.𖤣𖥧𖡼.𖤣𖥧


窓を開けてみると暖色のやわらかな光と金木犀の香りのする風が部屋を満たすようになった。わたしにとって金木犀は秋を強く感じさせてくれる好きな香りなので嬉しい。橙色の小さな花も可愛らしくて頬が綻ぶ。

穏やかな気候に微睡みながらの読書が楽しくて、ついつい甘いものも摘んでしまう。ふと顔を上げると淡い色をした空にふわふわと雲が浮かんでいる。真っ白なそれは何だかお祭りで食べたわたあめのようで愛おしい。今晩は何を食べようかなと食べることばかり考えている自分が愉快だなと思いつつ冷めてしまったカフェオレを飲み干す。



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