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記憶の行方

──前書き──
3年ほど前に書いた文章が出てきた。
読み返すと、かなり今の自分にも刺さったのでここに残したいと思う。

──記憶の行方──
2020年、6月20日。
6:00am 起床。
顔を洗って歯を磨く。
コップいっぱいの水をぐいっと飲み干すと、
少し頭がすっきりとして、1ヶ月前に逝ってしまった愛おしいフワフワのことを思い出した。いつか自分が死んだ時、会えるだろうか。
亡くなってしまった大好きな存在には、自分が生き抜いた最期に会えると信じているけど、なんの確証もない。ただそう信じていないと、壊れてしまいそうな時がある。生きる意味を残せたら会えると思い毎日を過ごす。忘れずに。

珈琲を入れ、パンを焼き、卵を焼き、きゅうりを切る。どうも切れ味が悪く、包丁を研いだら指を切ってしまった。あぁ...今日は...だめな日か。と、思う。
習慣として型についているものがうまくいかないと、だいたいそういう風に考えてしまう。きっと思い込みだ。何か1つうまくいかなくたって、その1日がすべてうまくいかないなんて考えは、もうやめよう。
なぜか、卵もうまく焼けなかったけど。パンで挟んでしまえば分からないだろう。
出来上がったサンドイッチの味は、ここ最近で1番美味しかった。

梅雨時期にもかかわらず、今日は晴れるらしいから布団を干す。
部屋を片付けて、掃除機をかけて、布団のカバーを外して洗濯、ベランダで布団を干す。
敷布団を叩くと、あり得ない量のホコリと対面した。でももうさようなら。
叩かれる布団がどうにもかわいそうに思えてくるけど、このままホコリと共生なんて、たまったもんじゃない。申し訳なく思いながらも、叩く。叩く。
ついでにレースカーテンも洗った。どう頑張っても湿気がすごくて、すぐにカビる。

そうこうしているうちに、12時。

ペットの餌を買いに行かないといけないんだった。思い出し、準備をして家を出る。
移動手段はだいたい自転車。乗ろうとすると、前のタイヤがしぼんでいるのに気づいた。空気を入れようとするけど、どういうわけか全然入らない。パンク?
近所の自転車屋さんまでは、15分くらい。目的地とは反対方向だけど、仕方がなく向かう。
見てもらうと、「パンクではなく金具の具合が悪いのかもしれません。一応見てみますが、先にお客様がいるので40分待ちです。」と言われた。
近くのショッピングモールで時間をつぶす。歩き回ると足が痛いサンダルを履いてきてしまって後悔。結局何も買わずにモールを出て、自転車屋さんへ行く途中「ペットの餌買ったよ。」とLINEが来た。外出の意味が無くなってしまった。
何がどうなってたのかあまりよくわからないまま、550円払って、お礼を言って帰る。ただただ日光浴だけで終わる外出も悪くはないけど、意味が欲しくて最近通っていなかった商店街を通って帰ることにした。

家から自転車で行ける圏内に、商店街が二箇所ある。一箇所はほぼ毎日通るのだが、今日通った方は5年ぶりくらいに通った。
変わっているようで、変わっていなくて。愛おしかった。
狭い道、自転車を押して歩く人々。
八百屋のおっちゃん、お花屋さんのおばちゃん。
お風呂の椅子などを売ってるお店の一角に、包丁研ぎのおじさんがいて、驚いた。包丁研ぎのおじさんは、小学生の頃、通学路に居た。この商店街から10分くらい歩いたところ。
ここ何年か、通学路を通っても、包丁研ぎのおっちゃんが居なかったので心配していた。
赤の他人だし心配しても、どうしようもないことだけど、居場所が分かって安心した。
もう一人の通学路の主。"うんばぁ"と呼ばれていたお婆さんの居場所は、まだ分からない。
ずっと昔からあるパン屋さん。お花屋さん。喫茶店。
ミックスジュースは420円。飲んで帰ろうかと思ったけど、なんとなく、やめた。
入り口の分からない、おじいさんの営む古着屋さん。フィッシングベストが1400円で売っていた。
お茶屋さん。本屋さん。
商店街の終わりが見えてきた。
次ここを通るのはいつになるのだろうか。
変わらずに、いつまでも、あって欲しい。
エゴだ。
5年前にここに来たときは、そんなふうに思わなかったのになぁ。
愛おしい場所と、いつまでも生きていきたい。

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