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詩日記

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2022年6月の記事一覧

影と日向

影と日向

南から照付ける太陽
北に涼みをつくる影

影に沿って歩くお姉さん
影に沿って漕ぐおばさん

近づく距離
狭まる距離

斜めに漕いで日向に出るおばさん
真っ直ぐ影に沿って歩くお姉さん

斜めに漕いで影に沿って漕ぐおばさん
斜めに歩いて日向に出る母親とこども

影と日向の境目を歩くぼく

しのぐ

しのぐ

来る夏は暑い
降る雨は止まない
進むトンネルは長い

ピンチは続けて来る

涼しくなるまでしのぐ
止むまでしのぐ
出るまでしのぐ

しのいだ先をみる

喉が渇く
服が汚れる
歩き疲れる
不安になる
下を向く

立ち止まる

振り返る

前を向く

涼しくなる
晴れている
光が見える

また一歩

灼熱の憂鬱

灼熱の憂鬱

暑い
暑い
暑い

まだ6月
まだ6月
まだ6月

異常
尋常
非常

雨降れ
雨降れ
雨降れ

過熱
炎熱
灼熱

憂鬱

梅雨明け

梅雨明け


くもり
くもり
くもり
晴れ
くもり
晴れ
晴れ
晴れ

梅雨は何処へ
探しているうちに
夏が来る

静けさ

静けさ

東京のど真ん中
ヒトとモノが混沌とする東京のど真ん中
静けさとは到底駆け離れた東京のど真ん中

ど真ん中にひっそり佇む図書館
ど真ん中の穴にポカンと置かれたような図書館
都会の喧騒と背中合わせにして静けさを纏った図書館

木々が風に揺れる音
体感よりずっとゆっくり流れていく時間
建物で影を作り風が隙間を抜けていく空間

静けさは喧騒の裏に
静けさは喧騒の背中に
静けさはど真ん中に

クーラー

クーラー

夏日
真夏日
通り越して猛暑日

もうクーラーを付けたい

扇風機と窓から入る風で凌ぎ過ごしたあの夏
寝る前にひとつ氷を口に含んで寝床に就いたあの夏
夏休みまでは絶対にクーラーをつけないと決めたあの夏

毎年初めてクーラーを付ける時
あの夏たちを思い除湿のスイッチを押す

一杯

一杯

新宿に向かって走る電車は人一杯
スマホの暗証番号を解除するだけで精一杯
スマホを開くのをやめて車窓から見える景色は車一杯

降車した先の駅内もまた人一杯
改札を抜けた先の商店街は物一杯
東京で暮らしていくのは一杯一杯

自分のために自分で淹れたコーヒーで一杯
疲れ切った身体に染み渡るビール一で杯
自分のために作ってくれた晩御飯でお腹一杯

何でもない日常に胸一杯

仕事終わりのビール

仕事終わりのビール

暑い
とにかく暑い
とんでもなく暑い

汗で濡れたシャツ
汗で湿ったジーパン
汗で蒸れた靴

暑い
ひたすら暑い
ひくくらい暑い

汗臭い身体
疲れ切った身体
アルコールを求める身体

暑い
暑い
暑い

数ヶ月前から冷蔵庫に眠るビール
今日のために準備万端で待ち構えるビール
仕事終わりとりあえず働いてよかったと思わせるビール

梅雨

梅雨

蒸れて臭う靴、汗でじんわり湿ったシャツ、他人の傘が当たって濡れる満員電車、半日かけても乾かない洗濯物、シャワーを浴びてもまたベタつく肌、梅雨。

雨に降られても堂々咲く紫陽花、いつもより並んでいないラーメン屋、家に籠って浸る読書の時間、肩は濡らしても荷物は濡らさず玄関前に立つ配達員さん、梅雨。

どっちも梅雨。

コップ

コップ

コップの中では、ヒトとヒトとが競い争いコップの外に追い出し合う。容量が決まっているコップからヒトは溢れていく。学のないヒト、使えないヒト、就職できないヒト、売れないヒト、頑張れないヒト、話せないヒト、お金のないヒト、ないヒトはコップの淵の方に追いやられる。ヒトはコップから溢れないよう必死になって絶望の淵にしがみつく。手を挙げられず、声を上げられず、やがて力尽きる。力尽きて絶望の淵から手が離れ、コッ

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梅雨の朝

梅雨の朝

日曜の朝
休みの日の朝
小鳥の鳴き声が聴こえる朝
シーツが気持ち良く干される朝
窓から微風がそっと入ってくる朝
アスファルトの濡れた匂いが残る朝
梅雨前線の隙間を縫って晴れ間が顔を出す朝
光と音と香がいっぺんに身体の中に入り混じる朝

事象

事象

人は間違える
人が間違えたとき人は人を見る
間違えたことではなく間違えた人として見る

人は成功する
人が成功したとき人は人を見る
成功したことではなく成功した人として見る

間違えたことも成功したことも
そのまま人格になっていく
たった一度であっても

大人

大人

いつからか、好きではないことを好きと言えるようになった。
楽しくないことも楽しいことと、面白くないことも面白いことと、やりくないこともやりたいこと、と言えるようになった。
ちょっと大人になれたと思った。

同じくして、辛いことを辛くないと、悲しいことを悲しくないと、痛いことを痛くないと、言えるようになった。
随分大人になれたと思った。

いつのまにか、好きなことを好きではないと言うようになった。

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