岡田光信

株式会社アストロスケールホールディングス 創業者兼CEO。1973年生まれ。兵庫県出身…

岡田光信

株式会社アストロスケールホールディングス 創業者兼CEO。1973年生まれ。兵庫県出身。東京大学農学部卒。 国際宇宙連盟(IAF)副会長、英国王立航空協会フェロー、世界経済フォーラム(ダボス会議)宇宙評議会共同議長等を兼務。 著書「愚直に、考え抜く。」(ダイヤモンド社)

最近の記事

12.世界で最も影響力のある100社

花の都はまだ肌寒かったです。2022年3月30日、私はパリのセーヌ川沿いを歩いていました。国境が開いたとはいえ、まだビジネスマンの往来しかないので、ふだんなら観光客で溢れているはずのこの場所はとても静かでした。 突然、私のApple Watchにプルッと通知がきました。アストロスケールが米タイム(TIME)誌の「世界で最も影響力のある100社」に選ばれたと。Apple、Google、ウォルマート、Sonyなどと並んでアストロスケールは世界に最も影響力を与えていると!?すぐに

    • 11.コロナ禍のスーツ

      コロナで対面会議が減り、在宅勤務の割合も高まる中、私はスーツを着続けています。 これまでスーツだった相手がウェブ会議だと軽装シャツやパーカーになるのはよくあること。私は敢えてその逆です。フルオーダーのスーツに、シルクのネクタイ、シャツの襟にはカラーキーパーをいれています。 海外との会議は21時以降に集中します。朝から着ているスーツを深夜まで着るのはなかなか大変です。それ以外の服も持っています。それでもスーツを着るのは、経営上2つの大きなメリットがあるからです。 2つのメ

      • 10. 2022年所感

        あけましておめでとうございます。 昨年、2021年は最悪な年でした。宇宙環境という意味においてです。 打上げ回数・打上げ衛星数ともに過去最高。世界のどこかで、2.5日に1回はロケットが打ち上がり、1,400機以上の人工衛星が軌道に投入されました。 宇宙業界は盛況で、おそらく宇宙業界以外の方でも多くの宇宙関係ニュースをご覧になったと思います。その一方、活動中の人工衛星とスペースデブリ(宇宙ごみ。以下、「デブリ」)は増え続ける一方です。 2021年10月末に発表された論文¹

        • 9.模擬デブリの捕獲に成功!(2)

          (前回のブログから続きます) さて、25日の夜になりました。夜になり、様々なチェックを終え、いよいよ実証開始目前となったとき、チームから緊急の連絡がありました。それは予想していなかった不具合でした。 「模擬デブリの管制センターのシステムが落ちました!」 ELSA-dを打ち上げてから5ヶ月あまり。一度も起きなかったこの不具合ですが、こういった事象は事前に想定しており対処策は準備済みでした。順番に、原因追求、復旧、そして衛星との通信確認を行う手順を整えていました。 しかし

        12.世界で最も影響力のある100社

          8.模擬デブリの捕獲に成功!(1)

          2021年8月25日はとても大事な日でした。 デブリ除去技術実証ELSA-d(エルサディー)が初めて宇宙空間で模擬デブリを切り離し、再捕獲をするという実証を行う日でした。デブリ除去に必要であるさまざまな技術をいよいよ宇宙空間で実証する日なのです。この日のために、8年以上と多額の研究開発費を費やしてきたのです。 25日は日本時間16時から衛星の運用を開始し、英国チームとの共同運用で、すべてがうまくいけば、深夜に実証を終える予定でした。 当日15時くらいに、ELSA-dの責

          8.模擬デブリの捕獲に成功!(1)

          7.宇宙のロードサービス

          私には、創業当初から宇宙ゴミ除去が大きなビジネスになるという確信がありました。 現在世界5ヶ国で220名の社員が働いています。プロジェクトの数が増え続けており、チームは忙しくなるばかり。採用も加速していかねばなりません。これからの契約増加を見越して、いかに成長プロセスを仕組みにしていくのか。これは簡単ではなく、日々試行錯誤です。 こういった成長痛は喜びであり、会社を始めた2013年、宇宙のゴミの除去がビジネスになると、心から信じてくれる人はほぼいなかったと思います。 誰

          7.宇宙のロードサービス

          6. 東大生は調査だけ

          1991年4月、私は晴れて東京大学に入学しました。 友人が皆、部活やサークル活動で交友を広げる中、最初のゴールデンウィークに私は一人で熊本県水俣市を訪れていました。高校時代から環境問題に興味を持ち、学校で割り箸を竹箸に変える活動を行ってみたり、pHセンサーを使って酸性雨調査を行ったりしていました。水俣病の本は何冊も読んでいたにも関わらず、現地を見たことがなく、現地に行きたいと思っていました。 行きの機内で、「水俣病が発生してもう30年以上経つのに、今更行って何になるだろう」

          6. 東大生は調査だけ

          5. 下町と呼ばれて

          神戸生まれ神戸育ちの私には「下町」という概念は馴染みがないものでした。私にとっての町の区分は、繁華街、住宅街、団地、郊外、工業地帯、田舎だったと思います。「下町」という言葉を聞いたのは、東京に出てから。イメージも曖昧でした。 ところが、アストロスケールの日本法人を作ってから「下町」を明確に認識しなければいけなくなります。私達の本社は墨田区の錦糸町駅のそばにあります。住所を伝えるたびに、「へ〜。下町なんだね〜」「まさに小説『下町ロケット』だね」という反応をいただきます。 下

          5. 下町と呼ばれて

          4. ワールドカップ級のチーム

          アストロスケールは、宇宙にまったくの素人である私が一人で始めた会社です。 8年がたち、今は世界5拠点に200名の社員がいます。エンジニア率約70%と技術主体の会社です。女性比率約30%、国籍10カ国以上と多様な人材の集まりです。社内公用語は英語です。 私はこのチームが自慢です。ワールドカップ級じゃないでしょうか。世界のどこに出しても恥ずかしくないチームだと思います。時々国連などの国際機関でスピーチする機会を頂きますが、私の代わりに、堂々と登壇できる人材も10名以上います。

          4. ワールドカップ級のチーム

          3. 日本のロケットを使う日

          1970年、日本で初めての人工衛星「おおすみ」が打ち上がりました。宇宙開発において世界で4番目の衛星保有国となったのもすごいのですが、実はこの「おおすみ」、日本のロケットで打ち上げているのです。衛星だけでなくロケット技術も日本は持っていたのです。 半世紀たった今も、世界でロケットを打ち上げられる国は10カ国のみです。それだけロケット技術とは難しいものなのです。10カ国の中で、私達のような民間事業者が打上げ契約を締結できるのは、ロシア、アメリカ、フランス、日本、インド、ニュー

          3. 日本のロケットを使う日

          2. 極限の緊張下で見る夢

          ゴルフの松山英樹選手がマスターズで優勝するのを見て、感動して、このブログを書いています(2021年4月12日)。最初の扉を開けるのは本当に難しい。開拓者と移住者、探検家と旅行家は違います。彼はゴルフメジャーで日本人が優勝できるという史実を作ってくれました。 私達アストロスケールは、スペースデブリ問題を解決するために全力で走っていますが、ゴルフで言えば、千里先のグリーン目指して、何千回、何万回とクラブを振っているような感覚です。しかもフェアウェイでなく、ジャングルの中で。

          2. 極限の緊張下で見る夢

          1. 宇宙のゴミ掃除、はじまる

          はじめまして。アストロスケールの創業者でありCEOの岡田 光信(おかだ みつのぶ)です。 まもなく、世界で初めて、宇宙のゴミを除去する技術実証が始まります。スペースデブリ除去実証衛星「ELSA-d(エルサディー)」の打上げが2021年3月20日(土)に迫ってきました。 スペースデブリとは宇宙に漂うゴミのことです。「ELSA-d」は、人工衛星やロケットを宇宙で使い終わった時に、そのままゴミにならないように回収するための技術実証です。 昔は宇宙には一つもゴミがありませんで

          1. 宇宙のゴミ掃除、はじまる