岡田光信
8.模擬デブリの捕獲に成功!(1)
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8.模擬デブリの捕獲に成功!(1)

岡田光信

2021年8月25日はとても大事な日でした。

デブリ除去技術実証ELSA-d(エルサディー)が初めて宇宙空間で模擬デブリを切り離し、再捕獲をするという実証を行う日でした。デブリ除去に必要であるさまざまな技術をいよいよ宇宙空間で実証する日なのです。この日のために、8年以上と多額の研究開発費を費やしてきたのです。

25日は日本時間16時から衛星の運用を開始し、英国チームとの共同運用で、すべてがうまくいけば、深夜に実証を終える予定でした。

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当日15時くらいに、ELSA-dの責任者である、プロジェクトマネージャー(PM)が私の席にやってきて、「いや〜、思わず緊張しすぎて12時間も寝てしまいました(笑)起きたら13時でやべっ!遅刻だわって焦りましたよ〜」とのんきなことを言ってきました。

世界の宇宙機関や政府当局も注目するこの日を前に、私は眠れない日が続いていたのに、この度量の大きさには感心するしかありません。

技術の細かいところまで、突っ込んだ質問を繰り返す私に、「あ、大丈夫っす」「それも、大丈夫っす」「はい、そのケースも完璧にリハーサルやりました」と答え続けるPM。

彼の堂々たる態度をよそに、私は捕獲失敗の場合のプレスリリースを英語と日本語で見直していました。

さて、夜になり、様々なチェックを終え、いよいよ実証開始目前となったとき、チームから緊急の連絡がありました。それは予想していなかった不具合についてでした。

ELSA-dというのは、2つの衛星でできています。デブリを捕獲する衛星と、模擬デブリの衛星です。模擬デブリは、切り離したあと、ちゃんと地上とは通信できるようにして健康状態をモニターし続けています。 

捕獲衛星の運用には世界で12箇所(南極や北極圏を含む)、模擬デブリの運用には別途4箇所の地上アンテナを使っています。捕獲衛星の管制センター(非常に複雑)と模擬デブリの管制センター(簡易)は別のシステムを用いて衛星運用を行います。 

この技術実証は実質上2機の衛星を使っているのでそもそも複雑です。逆に、複雑だからこそ、入念にいろんな不具合想定をしたリハーサルを繰り返してきました。ですので、準備万端、安心のはずでした。

この、何ヶ月、いや何年も準備してきた実証の瞬間の、まさにその直前に、想定外の緊急事態が発生です。

次回、「模擬デブリの捕獲に成功!(2)」に続く

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岡田光信
株式会社アストロスケールホールディングス 創業者兼CEO。1973年生まれ。兵庫県出身。東京大学農学部卒。 国際宇宙連盟(IAF)副会長、英国王立航空協会フェロー、世界経済フォーラム(ダボス会議)宇宙評議会共同議長等を兼務。 著書「愚直に、考え抜く。」(ダイヤモンド社)