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2. 極限の緊張下で見る夢

ゴルフの松山英樹選手がマスターズで優勝するのを見て、感動して、このブログを書いています(2021年4月12日)。最初の扉を開けるのは本当に難しい。開拓者と移住者、探検家と旅行家は違います。彼はゴルフメジャーで日本人が優勝できるという史実を作ってくれました。

私達アストロスケールは、スペースデブリ問題を解決するために全力で走っていますが、ゴルフで言えば、千里先のグリーン目指して、何千回、何万回とクラブを振っているような感覚です。しかもフェアウェイでなく、ジャングルの中で。

さて、最新技術を詰めた世界初のデブリ除去実証衛星ELSA-d(エルサディー)は、2021年3月22日、カザフスタンのバイコヌール宇宙基地から、ソユーズロケットによって無事に打ち上がりました!!パチパチ!!

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体というものは正直で、打上げの前後3週間は毎日2〜3時間しか眠れませんでした。

ELSA-dの開発には膨大なお金をかけてますし、世界中の宇宙業界や関係者からの期待も大きいです。背後には投資家もいます。ELSA-dを完成させただけでも成果は沢山あるのですが、打上げに成功して運用しなければ価値も半減するのでは、という不安がよぎります。とても緊張していたのだと思います。

ELSA-dの総責任者(プロジェクトマネージャー)はようやく30代になったような若者ですが、打上げ後に、打上げ前は寝られなかったでしょう?と聞いたら「毎日ぐっすりですよ(笑)毎晩、ミッションが成功するという最高の夢を見るから、朝起きて、また夢だったのかよってガックリですよ!!」とのこと。なんという能天気!この鈍感力は見習いたいです。

一方、この複雑な衛星のすべて機器を見守る要職であるELSA-dのシステムエンジニアに打上げ前は寝られたのかと聞いたら、「全然寝られませんでした。毎晩、ありとあらゆる故障が起きる夢ですよ。たぶん、ほぼすべての故障パターンの夢を見ました(笑)」と。たぶん、彼の感覚の方が普通だと思います。

私達には過去に打上げの失敗という経験があります。2017年11月、私達の最初の衛星IDEA OSG 1(イデア・オーエスジー・ワン)を載せた衛星は打上げに失敗しました。小さなスペースデブリを観測する衛星でした。私達に非はないとはいえ、多大なる支援を頂いたOSG社の皆様には大変なご迷惑をおかけしました。

ELSA-dはIDEA OSG 1のロゴも載せて、現在、順調に宇宙空間を飛んでいます。デブリ除去に必要な技術の実証というミッション(=任務)の準備を行っているところです。

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次回は、「日本のロケットを使う日」

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