岡田光信
7.宇宙のロードサービス
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7.宇宙のロードサービス

岡田光信

私には、創業当初から宇宙ゴミ除去が大きなビジネスになるという確信がありました。

現在世界5ヶ国で220名の社員が働いています。プロジェクトの数が増え続けており、チームは忙しくなるばかり。採用も加速していかねばなりません。これからの契約増加を見越して、いかに成長プロセスを仕組みにしていくのか。これは簡単ではなく、日々試行錯誤です。

こういった成長痛は喜びであり、会社を始めた2013年、宇宙のゴミの除去がビジネスになると、心から信じてくれる人はほぼいなかったと思います。

誰がお金を出すのですか?技術は難しいですよ?宇宙機関が検討を始めているので、民間がやることじゃないですよ?ましてスタートアップでは無理でしょう?宇宙エンジニアですか?あなた、お金持ちですか?など、否定する声がどれだけ多かったことか。

ですが、私には確信がありました。宇宙にはロードサービスが必要だと。これは、絶対に大きな社会基盤インフラ事業になると。

高速道路の例をあげましょう。

自動車が増え、渋滞や事故が増えても、決して「運転をやめましょう」との流れにはなりませんでした。道路交通法というルールを作り、道路交通情報センターで交通状況のモニタリングをし、JAF(日本自動車連盟)やアメリカだとAAA(アメリカ自動車協会)が故障車をレッカーし、ガス欠の車には燃料補給をすることで、「ちゃんと車が流れるようにした」のです。


図1

宇宙でもまったく同じことが起きるに違いないと思ったのです。

衛星の数は増加する一方です。より多くの国や民間企業が衛星を打ち上げます。打ち上げれば打ち上げるほど、ゴミになるロケットの上段や古い衛星が増え、稼働中の衛星の安全な運用を妨げます。

人工衛星にとっての軌道は、自動車にとっての高速道路です。軌道の場合はもっとやっかいで、故障衛星も秒速7〜8kmで飛び回りますし、高速道路のように白線は引かれておらず、デブリは四方八方から(時には上や下から)衝突してきます。

だからこそ、宇宙にはロードサービスが必要なのです。

少し、数で補足します。

高速道路が開通した1960年代半ば、まだ国内自動車保有台数は800万台でした。今はその10倍、8,000万台です。それをルールと、監視システムと、ロードサービスで回しています。(参照:一般財団法人自動車検査登録情報協会
宇宙を見ると、現在飛んでいる衛星の数は4,600機です。今後10年間で46,000機が打ち上がると考えられています。まさに10倍ですね。(参照:欧州宇宙機関(ESA)


衛星の流れを安全に保つには、宇宙交通管理のルール(Space Traffic Management = STM)と、宇宙物体を監視するシステム(Space Situational Awareness = SSA)と、ロードサービスの宇宙版である軌道上サービス(On-Orbit Servicing = OOS)の3点セットが必要になります。

アストロスケールは、OOSを世界でリードしているところです。STMとSSAの議論は「待ったなし」ということで世界中で議論されており、私たちはいろんな国際会議に呼んでいただけており、大忙しです。

いよいよ、軌道上サービスが宇宙の社会基盤インフラになるという、世界の共通認識が生まれてきました。

次回は「模擬デブリの捕獲に成功!(1)」をお送りします。


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岡田光信
株式会社アストロスケールホールディングス 創業者兼CEO。1973年生まれ。兵庫県出身。東京大学農学部卒。 国際宇宙連盟(IAF)副会長、英国王立航空協会フェロー、世界経済フォーラム(ダボス会議)宇宙評議会共同議長等を兼務。 著書「愚直に、考え抜く。」(ダイヤモンド社)