【小説】健子という女のこと(28)
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田端はタオルケットを、一枚だけ掛けられた冴子の胸元あたりに、そっと手をかけた。静かに眠っているようでもあり、朝が来れば何でもなかったように、起きてくるようにも思えた。
「冴子!逝かないでくれ!」田端は確かに、そう呟くのだった。口煩いばかりの<母親>だった筈の冴子が、居なくなるかも知れない状況が、現実味を帯びて田端の優柔不断で、脆弱なこころに、食い込んでくる。
穏やかだったサラリーマン生活を捨てて<脱サラ>しょうかと、悩ん