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『さようなら、ロビンソン・クルーソー』 ジョン・ヴァーリイ(著)

傑作短編集。以下感想。

びっくりハウス効果

彗星を改造した宇宙船で太陽観光クルーズへ! しかしエンジンは取り外され、乗組員も消え、救命艇まで消えてゆく。果てはテロリストたちからの占拠アナウンス。船の軌道も変わり太陽へ突っ込んでゆく!
どうなるのかドキドキしてたら、あっけなく宇宙船大破で度胆を抜かれ、その後のオチまで予想外だが、なるほどと思うと同時に、主人公に同情しちゃってなんとも悲しい読後感。

さようなら、ロビンソン・クルーソー

冥王星の地下にあるディズニーランド(この世界では地球の環境を再現したリゾート施設のこと)でエラのある半魚人として南国の海で遊ぶ少年が主人公。
幼馴染の少女、新しくバカンスに来た女、岩盤崩落事故、津波、その他八世界との経済的軋轢、等々、映像をイメージするのが本当に楽しい。主人公の長いバカンスは終わりで残念だが、経済戦も読んでみたい気がする。

ブラックホールとロリポップ

ブラックホールハンターの少女にブラックホールからの通信が舞い込む。
ブラックホールに自我はあるのか? 孤独な少女の幻想なのか? 通信の目的は? これとは別にクローンの扱いについてもテーマで、そちらも不穏極まりなく、相乗効果でかなり不気味な話に仕上がっている。

イークイノックスはいずこに

土星の環に住む、植物と人間の共生体のお話。
この共生体自体は1巻にも登場したが、もうちょっと掘り下げられている。完全に人間を包み込み、全内臓に入り込む。脳にも侵食し、タイムシェアリングで別人格が目覚め、真空での相棒となってゆく。植物は光合成と人間の排泄物、排気を吸収し、人間は植物の生み出す酸素や養分で生きる。外光もとりこまず、植物からの信号を脳で解像するところが凄い。
このアイデアだけでお腹一杯だが、これでは土星リングに住む2つの宗教団体の敵対の様子が描かれる。B環をすべて赤く塗りつぶす、というスケールの大きさに眩暈を覚えた。
さらに完璧なオチまで用意されており、大満足の一篇。

選択の自由

真の意味での性転換を容易にする<変身>が登場してまもなくのお話。
テーマは性というより愛なのかな? LGBTの人の感想が聞いてみたい。

ビートニク・バイユー

プロの子供という概念に驚きと恐怖を感じた。教師が肉体を子供と同年齢に変更して、子供と友人となりながら導いてゆく、という未来の教育が描かれる。教師側のミスや苦悩も描かれ、ますます不気味。この方式は良いところがあるのだろうか?
自分がこの教育を受けた場合、年を取り親友が実は教師でしたと言われたらトラウマで人間不信になること必至だよ。

解説

通常の解説のほかに、年表や用語集もあり。でも長編のネタバレは勘弁してほしかった。

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