『わが母なるロージー』ピエール・ルメートル(著)橘明美 (訳)
パリで爆破事件が発生した。直後、警察に出頭した青年は、爆弾はあと6つ仕掛けられていると告げ、金を要求する。カミーユ・ヴェルーヴェン警部は、青年の真の狙いは他にあるとにらむが…。『その女アレックス』のカミーユ警部が一度だけの帰還を果たす。残酷にして意外、壮絶にして美しき終幕まで一気読み必至。
カミーユ警部三部作シリーズ、3.5作目の中編。時間軸は3作目の直前で、カミーユがパリでの爆破事件を追う。と思いきや、いきなり犯人が自首してくる超展開から心を鷲掴みにされる。
その後も当然、息もつかせぬ展開が延々と続き、犯人に翻弄され続けるいつものカミーユが見れて幸福だ。悲壮感も控えめなのも嬉しい。
残念な点は、守銭奴アルマンは居ないし、ルイは影が薄いこと。ギャグも小粒だった。本の薄さが原因だが、番外編なのでしかたない。
しかし、このシリーズのテーマだと思っている「死なない限り人生は続く。あなたはなぜ生きるのか?」という重さは健在。今回も読後感が切ない。チャンスは有ったじゃん、と言わざるをえないが、本人にとっては、もうポイント・オブ・ノーリターンを通り過ぎてる、という認識のすれ違い、解り合えない悲しさが後を引く。
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