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エンジニア採用を強化したいなら、エンジニアに魅力的な組織を作ることからはじめよう

いつもお読みいただきありがとうございます。

最近、エンジニア採用強化について相談したい・議論したい、というような相談を複数から受けています。元エンジニアでもありこういう相談を受けること多いですが、どんどん難しくなっていますね。

そこで今日はエンジニア採用について、僕なりの考えをまとめました。
今回は少し長めのnoteなのですが、最後まで読んで頂けると嬉しいです。

本題の前にエンジニア採用の客観的データを紹介します。 レバテック株式会社の調査によると、2022年12月のエンジニア・クリエイターの有効求人倍率は15.8倍となっています。 2022年11月の全職種における有効求人倍率は1.35倍(厚生労働省調査)となっており、ITエンジニア・クリエイター職の求人倍率は平均と比較してもすごく高い水準で推移していることがわかります。

15.8倍・・・これは驚きです。エンジニア採用がどんどん難しくなっているのが、数字からもみて取れます。

ではここから、エンジニア採用で成功するための基本事項を紹介します。

エンジニア採用が難しくなった背景を理解する

まずエンジニア採用がなぜ難しくなっているのか、その社会的背景を把握することが大切です。社会的背景を把握することで、採用課題の本質がわかり、課題解決方法が的を得やすくなるからです。

日本と世界は約30年で経済格差を生んだ

1989年と2023年の時価総額ランキングを比較するとその差が大きく異なります。1980年代の日本企業は時価総額ランキング上位の常連で世界で最も経済力のある国と見なされ、世界中の企業が日本企業型経営を参考にしていました。それに対して、2023年の時価総額ランキングを見ると、上位50社の中に日本企業は1社も存在していません。

ここまで構図が変化した原因は諸説ありますが、経済ジャーナリストの冨山和彦さんの記事「なぜ「世界に冠たる企業」は日本から消滅したか」では2つ原因を挙げています。

  1. 冷戦の終結とともにグローバル社会が急速に普及したこと

  2. デジタル革命が起きたこと

国々の枠を超えて経済・物流・情報が一気に動き出し、エレクトロニクス社会からIT社会に変化すると、日本は一気にグローバルの勢いに飲み込まれていきました。

世界の変化を目の当たりにしてきたエンジニアは、キャリア感についても変化していった

IT社会への劇的な変化を、エンジニアは最も目の当たりにしてきた職種のひとつです。30年前は日本のソフトウェア技術は世界とも争えるレベルにありました。しかしこの30年間でその構図は明らかに変化しました。ホストからオープンへの変化やオンプレミスからクラウドへの変化において、使用されるテクノロジーに日本産のものがどんどん少なくなっていきました。

さらに、日本の得意分野だったハードウェアであるPCやデバイスの主流も海外製となりました。インターネットサービスもグローバル全体で主導権の奪い合いが起き、財力とスピード力の圧倒的に強いシリコンバレー企業が最新技術を駆使したプロダクトを作り上げていきました。

エンジニアは、グローバルで起きている変化に無意識のうちについていくようになりました。その結果、ものの見方・価値観もグローバルの影響を受けるようになりました。キャリアに対する価値観も変化していきますが、上述のような影響もあり特にエンジニアは顕著な変化が起きていきました。

エンジニアにとっての入社・退職が「参画」に変わってきた

リーマンショックやコロナ流行など一時的な停滞はありましたが、日本のIT企業は成長し続けています。どの会社もエンジニアを必要としており、採用市場は常に競争状態、SESも引き続き堅調です。

キャリア感がグローバル化し始めたエンジニアは、人手不足で需要が高い情勢も相まって、キャリアに対する価値観がさらに変化していきました。
募集企業の情報がネット上に溢れ、頻繁にスカウトメールが届き、現職よりも魅力的な環境を選択する人が増えていきました。
また、実力のあるエンジニアはフリーランスという道を選ぶ人も出てきて、むしろその方が自由に働けて収入も良いなんてことも珍しくなくなりました。
個人のアウトプットをネット上で公開し、それを見たエンジニアチームの責任者がその個人をスカウト、魅力を感じて転職。そんな形で転職する人も増えていきました。

このようにエンジニアにとっての入社・退職は「参画」に変わってきたのです。そして、この雇用に対する捉え方の変化に合わせた採用を行う必要があり、それがエンジニア採用が難しくなっている大きな原因であると考えています。

今の時代のエンジニアの価値観に合わせた魅力的な職場を作っていく

ではどのようにすればエンジニアに魅力的な職場になっていくでしょうか。

正社員だけがすべてではない。フリーランスに魅力的な職場にする

フリーランスのエンジニアは、優秀なエンジニアのキャリアの主流となりつつあります。自分の市場価値に自信がある方であり、その分仕事への責任感も高い方です。このような方に魅力を感じていただける職場を作り参画してもらえる環境を作ると、プロジェクトの質がとても高くなります。

下請法や労働者派遣法にセンシティブだったSIerは過去の慣例の流れで、社員とそれ以外の雇用形態のエンジニアを明確に区別する慣習が今でも残っています。今の時代は法令遵守を維持しつつこの慣習を克服していかなければなりません。フリーランスがプロジェクトの中心的存在を担えるようにするなど、雇用形態に関する考え方を大きく変え、プロジェクトが強い体制となる斬新な取り組みが期待されています。

エンジニアにとって働きがいのある職場を作る

エンジニアが働きたいと思える職場とはなんなのか、という点を踏まえて、開発体制・使用する技術を大きく見直ししていく必要があります。例えば次のような環境を作ると、エンジニアにとっての働きがいが高まると言われています。

  • 最新のテクノロジーに触れることができる

  • 開発スピード・開発効率が高いチームを作る(DevOpsやスクラムなどの導入)

  • 優良企業のワクワクするプロジェクトに携わることができる

  • ハイスペックなPCが貸与されている

  • 能力の高い仲間とチャレンジできる仕事ができ、報酬も魅力的である

魅力的な報酬を支給する上で、現状の人事制度(報酬体系)がネックになるならば、人事制度の改定も視野に入れるべきです。人事制度を理由に採用の機会損失を続けていると、優秀なエンジニアが集まらないばかりか外に流出してしまうことになってしまいます。

働きやすさではなく、働きがいを追求する

上記以外には、心理的安全性の高い職場を作る、なんでも言い合えるフラットな組織にするといったことも候補に挙げられます。もちろんそれ自体は取り組みとして有効ですが、一歩間違えるとゆるい職場を作ってしまい、チャレンジの阻害要因となります。一体感を持ち信頼と尊敬のあるチームを作りつつも、野心的な目標を持ちチャレンジし続けるチームであり続けるべきです。働きやすさだけを追求すると、働きがいのない職場になってしまいますので注意しなければなりません。

エンジニアがワクワクする活動を行い、社外に発信する

このようにして、エンジニアが働きがいのある職場づくりを開始したら、次はその魅力をどんどん発信していきます。

発信の方法は様々です。一例を挙げてみます。

  • 自社のホームページに、エンジニアメンバーのインタビューを掲載する

  • 社内活動(開発チームのモブプロ、LT、社内ハッカソン、交流イベント)の活動記録をnoteやブログなどで発信する。使用した資料をspeakerdeckなどに公開する。

  • エンジニアが集まるセミナーやフェスに登壇する。

  • これらの活動を、採用担当者や広報担当者などのTwitterアカウントを通じて拡散して広く知ってもらう。

  • 社外メンバーの参加可能なTechイベントを主催する

ただし、気をつけなければならないのは、登壇するエンジニアの方の発言内容、SNSなどで発信する採用広報担当者のSNSリテラシーです。最近は登壇の様子がYoutubeなどで公開されるものが増えており発言内容が社外に拡散されます。またSNSで発信する内容は一歩間違えると誰かを傷つけたり会社の評判を落とすことになります。対外的活動を行う人は、会社を代表して発信している意識を持って取り組んでいく必要があります。

最後に

エンジニア採用強化というと、まずはエージェントフィーを上げよう・エージェントを開拓しよう・ダイレクトリクルーティングツールを増やそうとしがちです。これらの施策は採用チームがちゃんと動いていますというアピールがしやすくやっている感は出しやすいですが、それだけではうまくいきません。

エンジニア採用で成功したいならば、エンジニアが魅力を感じるチーム・組織・会社を作っていくことが何よりも重要です。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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