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新商品・新事業の企画には、「失敗の許容」がどうしても必要だ…という話

こんにちは、デザインスタジオトークアンドデザインの今西(@no_imanishi)です。

新商品や新事業に取り組む人にとって、失敗とはなんでしょうか。「失敗は成功のもと」というポジティブな言葉がありつつも、どちらかといえば、損失だとか、説明責任だとか、そういう話がちらつくのではないでしょうか。

なのですが、失敗こそが目標達成のための最重要ツールと思うに至ったので、お話したいと思います。

プロダクト開発に最も必要なものは「失敗」

プロダクト開発において、最も怖れるべきことはなんでしょうか?

私は、「欲しいと言ってくれるお客さんが誰もいない高品質なプロダクトを作ってしまうこと」だと思います。

実は私も欲しい人のいない高品質なプロダクトの開発メンバーの一員として働いたことがあります。これはとても恐ろしいことです。多くの開発費を投下し、しかしその回収の見込みが立たないということですから。

これを避けるためには、どうすればいいでしょうか?間違いないのは、これは喜んでくれるかな?と少しづつ確かめながら開発することです。

(誤解の無い様に付記しますが、お客に確かめながら開発することと、お客が欲しいと言ったものを開発することは、別のものです。欲しいと言われたものを開発すれば良いわけではありません。)

確かめると、いつも喜んでもらえるとは限りません。ダメだったね…ということが起こります。これは失敗でもありますが、学びでもあります。何は喜んでくれて、何は喜んでくれないのか、知見が蓄積されます。

プロダクト開発という営みの核は、お客をどうやったら喜ばせられるのか、学びを積み重ねていくことではないかと思います。

一度こうした視点に立つと、どうやったらお客が喜ぶのか学びがないまま、図面を書いたり、コードを書いたりするのは、大変無謀な行為に見えてきます。そして、そんな無謀なことを避けるにはどうすればいいか…その答えは「早く小さくきちんと失敗をする」ということになろうかと思います。

失敗を許容せずに、防ごうとすると、事態は悪くなる

失敗は無駄なことに見えます。色々な観点(懐の余裕の無さであったり、体面の問題だったり、心理的安全性の問題だったり、様々です)から、失敗しない様に圧力を受けることもあります。

そうした場では、失敗を防ぐためのレビューやチェックに多くの時間が費やされます。もちろん、学びの無い失敗は不要です。車のタイヤに空気が入っているかはチェックした方がいいです。パンク(=失敗)を敢えて経験する価値がないからです。ですが、これはお客が喜んでくれるのか…について、レビューやチェックを繰り返すと何が起こるでしょうか。

リスクの高い投資を伴う(新商品開発はまさにリスクの高い投資です)ときにはありがちですが、レビューの度にあれもこれもと指摘を受け、プランを修正し、またレビューし、プランを修正し…という無限ループが起こります。これをネガティブラーニングと呼びます。

私自身、経営状況の芳しく無い会社にいた際には、ネガティブラーニングに悩まされました。行く先々で、“失敗を避けるためのありがたいご指摘”を頂戴しているうちに、時間だけが過ぎていってしまいます。更に言うならば、それらの指摘の実態は「想像上の心配」であって、どの程度有効なのかは未知数です。

そうして、失敗を無くそうとすることで、莫大な時間とお金が失われることになります。一発必中を狙うと事態を悪くするとも言えます。

失敗をいかにマネージするか

一方で、いくら学びがあったからと言って、いつでもいくらでも失敗して良いわけではありません。より早く失敗をして、その学びを活用していく必要があります。

プロジェクトマネジメントとしての失敗の活かし方

失敗からの学びを活かすには、プロジェクトの中に上手く「似た仕事の繰り返し」を作り出す必要があります。

「繰り返し」は退屈の代名詞の様に言われますが、仕事においては、繰り返せば繰り返すほど効率がよくなります。初めの一回で失敗をし時間がかかったとしても、以降は得た学びをベースに早いペースで進められますし、さらに繰り返すことによる学習(改善)が加わり、どんどんスピードアップします。

繰り返しのできる手段を積極的に選ぶことは大切です。

例えば、一度放映が始まると修正が効かないテレビCMよりも、パフォーマンスを確認して修正できるウェブ広告の方が、失敗して学んで改善するという繰り返しを実現しやすいです。(※テレビCMとウェブ広告を同時に机上に載せてどちらにするか比較検討することは普通ありませんけれど)

工期やコストの超過が起こりやすい大規模なインフラ工事などでも、この効果は顕著です。

プロダクトの開発における失敗と学び

では、プロダクト開発においてはどうでしょうか?

時代遅れと言われたとしても、現実には工場で大量生産されるプロダクトは沢山あります。売ってみてだめだったから設計を調整して再生産しよう…というのは夢の柔軟性ではありますが、現実には量産開始までの過程でしっかりと顧客はこれで喜ぶのかを確かめておく方がはるかに低コストです。

よく言われる様に、設計が進んでから修正するよりも、初期段階で修正する方がはるかに低コストで済みます。「1:10:100の法則」(設計段階で発覚した問題解決に掛かるコストが1とすると、開発段階では10倍に、リリース後では100倍になる)とか「手戻りコストの法則」とか言われます。

なら、初期段階でお客さんが喜ぶ様に修正できているのかと言われると、これがなかなか出来ていないのが現実です。開発してしまってから、「これ、何が良いわけ?」となるケースは枚挙に遑がありません。
どうしてできないのかというと、初期の段階でお客から「評価」されていないからです。これでよかろうと思われる企画を、これで良かろうのままで次工程に進めてしまっているということです。評価を受けてああこれはダメだとしっかり失敗していれば、修正し、後々の10や100のコストをセーブすることができます。

失敗は、起きてしまった時に許そうというものではなくて、積極的に失敗する機会を設けるべきものと考えるべきです。しかも、繰り返し評価し失敗することで、効率的に学びが得られます。顧客を喜ばせるということは、多くの学びがなければ到底叶わないものですし、本当に役立つ学びの多くは失敗することでしか得られないので、失敗していないということは、学ばないまま欲しいお客さんがいない高品質なプロダクトを実現する道を突き進んでいるということになります。

早い段階から繰り返し失敗し学ぶとはどういうことか

大変有名なMVP(Minimum Viable Product =実用最低限の製品)の図があります。

引用出典:https://blog.crisp.se/2016/01/25/henrikkniberg/making-sense-of-mvp

新商品開発の際には、上の様な進め方はダメだよ、下の様にお客に評価を受けながら進めないといけないよ…という非常に示唆深い図です。ブログではその背景が解説されていますし、日本語訳もあるので、ぜひお読みいただきたい内容です。こうやって、少しづつ、どうすればお客は喜ぶのか学びながら新商品開発を進めることはとても大事なことです。まさに本稿の意図するところ、我が意を得たりという感じです。

その上で、現実には、こんなに一直線には進みません。実際には様々なトライをし、評価を受け、失敗をはらみながら、一歩づつ進んでいくことになります。

これはダメだった、あれもダメだった、こっちはお客が喜んだ、あぁこれがお客の望むことだったんだ、でもこうしたらもっと良さそう……これが新商品新事業における現実の学びだと思います。そして、こうして評価され失敗と学びを繰り返しながらお客に喜ばれるプロダクトの像を見出す営みこそが「企画」することだと言えるのではないでしょうか。

最後に

失敗は「起きても仕方ないけど、本当は無いに越したことはないもの」ではなく、「必要不可欠なもので、かつ重大な事態に陥らない様にマネージすべきもの」と認識を変える必要がある様に思います。
小さく早くきちんと失敗する」…このマインドセットへの変更だけでも、新商品・新規事業の企画に携わる多くの人を助けてくれる様に感じます。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

参考文献:



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