お酒が飲めないキャバ嬢が思う、ここで飲むしあわせ
はじめに。
わたしはキャバクラという夜の世界で、何も知らない未経験の小娘から、No.1というトップの場所にまでのぼりつめた経歴がある。
が。
お酒が飲めない。
いわゆる“夜の街”というものは、美しく着飾った人たちと一緒に楽しくお酒を嗜むことこそが売りであり1番の価値だと思う。
にも関わらず、わたしはお酒が飲めない。
今でこそコロナの影響で、大人数が集まって開く飲み会などは減っているけれど、そういう場で、
「最初に何飲む〜?」
「「「とりあえずみんな生で!」」」
「あ、わたしはウーロン茶で」
と、言いたいぐらいには、悲しいほどにお酒が飲めない。
まあ、お酒が飲めないと言っても、一滴も飲めないというわけではない。
シャンパンが開いたら、絶対条件として、ツーフィンガー(グラス指二本分)は必ず頂くようにはしていた。
シャンパンを頂くということは、お金ではなく気持ちなので値段は関係ない。どれだけ安くても、自分に開けて頂いたもの全てに、前述した自分ルールが発動する。
あとは、テンションが上がっていたら、自分のキャパシティを超えて飲むこともあるけど、大体営業後に後悔しながらトイレに籠ることになる。
そんなお酒が飲めないキャバ嬢であるわたしは、お酒を飲みに来た人たちが「楽しい!」と思ってもらえるように。
そして最終的に「ここでまた飲みたかったから」と再び来店していただけるように接客することがお仕事なわけです。
1つのテーブルが世界の全て
飲めないキャバ嬢が、楽しく飲んでいるお客様たちをもてなす上で、大切に心掛けていたことは
テンションを合わせる
ということ。
人々はアルコールを摂取すると、良くも悪くも視野が狭くなる。
だからこそ、飲む前は仕事のことやプライベートのことを色々ごちゃごちゃ考えていたとしても、飲んでいる時は陽気な気分になったり、逆にたった1つのことに焦点が当たってしまい、悲しくなったり落ち込んだりもする。
キャバクラで例えるなら
お客様がいる1つのテーブルが世界の全て
愛すべき酒飲みのテンションに合わせてあげるのだ。
まるでブロードウェイの女優!
シラフの時と比べて、お酒を飲むと無意識のうちにだんだんと自分の声量やリアクションが大きくなってしまうことは、誰しも経験があると思う。
テンションを合わせるということは
これらも合わせていくことと同義である。
…これ、本当に、自分が思う3倍くらいは大きな声を出さないと相手に伝わらない。
もしも喋り言葉を文章に起こしたのなら、びっくりマークが3つ付くくらい。(3倍なので)
大きなリアクションを魅せなければ伝わらないのだから、恥ずかしさなど感じる暇はない。
(新人キャバ嬢時代は、その恥ずかしさをいかに捨て去り、良い意味で馬鹿になりきれるのか、ということにすごく重きを置いていた。)
気分はまるで女優。
顧客満足度を高めよう
全員とは言わないけど、せめてわたしが関わったお客様全員には「ここで飲んで良かった!(=しあわせ)」と思ってもらうためには、テンションを合わせる以外にも必要となってくるものがある。
それは
目的を理解してあげること。
「この人はどのような目的でキャバクラに来ているのだろう?」という、人それぞれな部分の早期理解が大事だと思う。
つまり、顧客満足度を高めることだ。
ハンバーグが食べたい人に、オムライスを出してしまうのは論外。
ハンバーグを出すのも普通。
1番良いのは、とびきり美味しいハンバーグを出すことだと思う。
対極にある幸せ
キャバクラに来る人の目的を1つ1つ並べていくと、もはやキャバ嬢に向けたノウハウになってしまうので、今回はビジネスシーン(接待)のうちの2パターンに絞ってみた。
まずは、いわゆる上司、社長、取引先のお客さんなどといった、そのグループ内で1番権力のある人。
これは男性社会でも行われる接待と同じなので、わたしたちキャバ嬢が行うこともあまり変わらない。とにかく最大級にもてなすに尽きる。
どんなキャバ嬢も分かりやすく頑張る理由は、飲み場所を決定できる位置にいる人物だからです。
逆に、この方たちの対極にいる人たちもいる。
それが、グループ内の末端に位置する人である。
こういう方たちは、おおよそのキャバ嬢たちにも見落とされがちだけど、わたしはこういう層こそを大事にしてきた。
主役ではないから、ヨイショして持ち上げるような接客というより、細やかな気配り・気遣いがとても刺さる。
不必要にお酒を煽られていたら、グラスの中身をこっそりお水に変えるとか。
会話に困っていたら助け舟を出すとか。
何故こういうことまでするのかと言うと、また彼らも遠くない未来の飲み場所を決める人物だからです。
要するに育て行為。
なのでわたしは
「〇〇さん(偉い人)と飲むの1番楽しい!」と言いながら「××さんの顔を立てるために盛り上げるの頑張りますね」と言う。
両極端にいる人物をも心地よくすること、それがわたしのポリシーなのかもしれない。
#ここで飲むしあわせ
わたしはほとんどお酒が飲めない。
そのかわりに
“お酒を飲んでいる人たち”の空気を飲んで
口の中でじっくりと味わっている。
わたしもまた、お酒を楽しんでいる1人なのかもしれません。
どこかの街にいた元キャバ嬢より。
お酒が好きな全ての人へ、愛を込めて。