三ツ矢

読書と映画、たまにミュージカルの記録。マイペースに、お手柔らかに。

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最近の記事

#09 「逃亡者」中村文則

中村文則さんの作品との出会いは『王国』だった。 主人公が女の人で、物語の世界にすごく引き込まれた印象が残っている。 『王国』は少し希望が感じられる終わり方だった気がするが、『逃亡者』は希望もないし、読了後の爽快感も全くない。 あるのは絶望と理不尽さだけ。 何とも言えない感情だけを残して終わる、いい意味で体力と気力の要る小説だ。 第一章、第二章、第三章とあり、正直言って第二章はそれなりの知識も必要とされ、あまり描写的にも心地の良いものでもなく、読み進めるのがしんどかっ

    • #08 「52ヘルツのクジラたち」町田そのこ

      本屋大賞を受賞されたときから読んでみたくて、でも何だかんだ後回しにしてしまっていた。 けれど、今はこの作品を読んでよかったと心から思う。 この本を読んで、たくさんのことを考えた。 優しさ、強さ、弱さ、愛情、人生、心、身体、性 etc... 人を救うには、優しさと強さの両方が不可欠で、一つでも欠けてしまっていると、それはもうただのエゴにしかならないのではないかということ。 愛情ひとつ取ってみても、その人の全てを受け入れるのが愛情なのか、それともその人の幸せを願って正し

      • #07「ひと」小野寺史宜

        読みながら、自分も何かをちょっとだけ頑張ろうと思える作品だった。 主人公が若くして両親を亡くし、周りの人間に救われていく物語。 この作品は主人公の周りにいる人間をいい人だけで完結させるのではなく、嫌な人間もきちんと描いていて、そこがリアリティを感じさせる。 何もかもを諦めなければならない状況になり、だけどその環境の中で唯一譲れないものを見つけ、少しだけ自我をきちんと持てた主人公に、共感とそして親心のようなものを感じずにはいられない。 この作品を読んで思ったことは 人

        • #06「店長がバカすぎて」早見和真

          書店員を主人公にした小説 と聞けば、元書店員としては買わなければという感情が沸かないわけがない。 あれよあれよと読み進め、久しぶりにその日のうちに読み終わった作品。 物語はある書店の契約社員である主人公を中心に、関わる人たちとの些細な日常を舞台にして展開されていく。 書店員の給料が低い だとか 店長が使えない だとか 憧れている先輩社員がいる だとか 開店前はとにかく忙しい だとか 共感できる部分が多かった。 読みながら昔一緒に働いていた人たちのこと

        #09 「逃亡者」中村文則

          #05「同志少女よ、敵を撃て」逢坂冬馬

          2000円か〜高いな… と思っていた自分を殴りたい。 むしろ、これが2000円なのか… という驚嘆が今となっては正しい感情であると思う。 本当に映画を一本観たような読了感がある。 筆者が描く、緻密で細かい描写が、 その情景をありありと眼前で再生させる。 私たちが歴史の授業でしか見ることのなかった戦争を舞台にした作品。 戦争を体験したことのない作家が、これほどリアルに書くということは、たくさんの文献を読み漁り参考にし、そして自身の言葉で浄化していく必要があるということ(

          #05「同志少女よ、敵を撃て」逢坂冬馬

          実は書いてないけど、村上春樹さんの著書で青春三部作、ダンス・ダンス・ダンス、世界の終わりとハードボイルドワンダーランドを読みました。が、感想とか書く前に次の作品読みたい気持ちが勝ってしまった、、。

          実は書いてないけど、村上春樹さんの著書で青春三部作、ダンス・ダンス・ダンス、世界の終わりとハードボイルドワンダーランドを読みました。が、感想とか書く前に次の作品読みたい気持ちが勝ってしまった、、。

          #04「天国はまだ遠く」瀬尾まいこ

          瀬尾まいこさんの作品は、実は「そして、バトンは渡された」がはじめましてだった。 Twitterでこの本を紹介したツイートがかなりのいいねをもらっていて、気になった。 自分が今大切だと思っているものは、本当に大切か?と問いかけてくる、そんな作品だと思った。 全てをゼロにして、そこから自分が一番初めに何を求めるのか、考えてみて行動しても遅くはないのかもしれない。 主人公が、訪れた自然豊かな場所で、何もすることがなく、ここに私の居場所はない。と感じるシーン。 ここに私の居

          #04「天国はまだ遠く」瀬尾まいこ

          自分が読んだ本や観た映画から、何を感じ取り、何を考え、何を思ったのかを忘れないように、記録しようと思って始めたにも関わらず、書くのが早すぎると感情がまとまってないし、時間を空けすぎると何が書きたかったのか忘れてしまって、ちょうどいいタイミングというものが難しい。

          自分が読んだ本や観た映画から、何を感じ取り、何を考え、何を思ったのかを忘れないように、記録しようと思って始めたにも関わらず、書くのが早すぎると感情がまとまってないし、時間を空けすぎると何が書きたかったのか忘れてしまって、ちょうどいいタイミングというものが難しい。

          #03 「あのこは貴族」山内マリコ

          映画の評判が良く、どうせなら原作が読みたいと思い購入。 女性に焦点を当て、自分らしさとは何かを問いかけている作品だと思った。 「格差社会じゃない。階級社会。」 という言葉が一番衝撃を受けた。 私たちは生まれた時から階級が決まっていて、後天的につくられた格差の中で生きているわけではないと言うことなのだろう。 私自身も、学生時代にそう感じることが何度かあったし、スクールカーストも階級なのだろう。 学生を卒業し、社会人になってからも、私たちは属する階級の中で生きているのだ

          #03 「あのこは貴族」山内マリコ

          ♭01「THE FATHER」

          気になっていた映画。観てきました。 終わった後、すごく疲れていたと思う。 何が何だか、わたしにもわからなかったから。 すごく的確に、さまざまな人間の心情を描き出している映画だと思います。 特に、認知症の父と関わるアンの戸惑いや葛藤。これはすごく伝わってきました。 映画を見ながら、自分の祖父が認知症であったときのことを思い出し、「その接し方...わかる」と思った場面が何度もありました。 それからアンとアンの父に関わる人たちの戸惑いも。 認知症の人間にどう接していいの

          ♭01「THE FATHER」

          #02「かがみの孤城」辻村深月

          少しだけですが、ネタバレ含みます。 一番初めに「かがみの孤城」というタイトルを目にしたのは、単行本が発売されたであったと思う。 それから数年後、書店に文庫本が上下巻で並んでいるのを発見したとき、やっと来た!と思ったことを覚えている。 上巻を読み始めてから2日で読み終わり、下巻は買ったその日のうちに読み切った。 どうしても、ページをめくる手が止まらなかった。 「かがみの孤城」を読んでいて感じたことがある。 それは、人にとって記憶というものが、生きていくことの大半を占めてい

          #02「かがみの孤城」辻村深月

          #01 「モモ」 ミヒャエル・エンデ

          小学生くらいの頃は、若女将は小学生!シリーズを好んで読んでいた記憶があるが、児童書を大人になって読むのは初めてだった。 この本を手にとった理由は、エンデの「エンデの遺言ー根元からお金を問うことー」を読んだ中で、この本が何度も紹介されていて気になったからというものだ。 読んで見て、率直な感想。 おもしろい!!!! 全然、大人でも楽しめる。 続きが気になってページをめくる手が止まらない。 久々に通勤時間に本を読んだ。 なんと言っても"時間"がテーマになっていることが、大

          #01 「モモ」 ミヒャエル・エンデ