#02「かがみの孤城」辻村深月
少しだけですが、ネタバレ含みます。
一番初めに「かがみの孤城」というタイトルを目にしたのは、単行本が発売されたであったと思う。
それから数年後、書店に文庫本が上下巻で並んでいるのを発見したとき、やっと来た!と思ったことを覚えている。
上巻を読み始めてから2日で読み終わり、下巻は買ったその日のうちに読み切った。
どうしても、ページをめくる手が止まらなかった。
「かがみの孤城」を読んでいて感じたことがある。
それは、人にとって記憶というものが、生きていくことの大半を占めているということ。
例えば、主人公のこころは、城に行くようになるまでは学校に行かなくなってからも、ちょっとしたことがきっかけで、学校での出来事を思い出し、お腹が痛くなっていたりする。
ウレシノがマサムネに「みんなに一日だけ学校に来て欲しい」と言われて頭に思い浮かんだのは、二学期の初めに学校に登校し、友達だと思っていた人たちと殴り合いの喧嘩をしたこと。
そして、鍵と願いの秘密が明かされた時のフウカの
「私、みんなの記憶を失いたくない」
という台詞が、人々が記憶で生きているということの証明であるように思う。
そして、私もまたこの本を読みながら、自分が中学生だった頃の記憶を思い出しながら、主人公たち7人に感情移入をした。
物語の中で、選ばれて出会った七人の中学生たち。
きっと彼女たちは、城で出会うまではそれぞれの現実世界で生活し、その記憶だけで、その後の人生も生きていくはずだったのだろう。
だけれども、7人がかがみの世界で出会ったことによって、現実世界での記憶とかがみの世界での記憶で、人生を歩んでいくことになる。
明確には記載されていなかったが、最終的には、7人のうち1人以外はかがみの世界での記憶をなくしてしまっているのだろう。
けれども、何かに導かれるように、そこで得たつながりを無条件に感じ、またつながっていく。
そこには、本人が覚えていない記憶の中の何かが働いているのだろうと思う。
「かがみの孤城」は、私の記憶にいつまでも残っている。
そして、この物語を読んだ多くの人の記憶に残って欲しいと思う。
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