#06「店長がバカすぎて」早見和真
書店員を主人公にした小説
と聞けば、元書店員としては買わなければという感情が沸かないわけがない。
あれよあれよと読み進め、久しぶりにその日のうちに読み終わった作品。
物語はある書店の契約社員である主人公を中心に、関わる人たちとの些細な日常を舞台にして展開されていく。
書店員の給料が低い
だとか
店長が使えない
だとか
憧れている先輩社員がいる
だとか
開店前はとにかく忙しい
だとか
共感できる部分が多かった。
読みながら昔一緒に働いていた人たちのことを考え、今は誰一人として連絡先を知らず、全くつながりのないことに少しだけさみしさを覚えた。
それでも、やはり、今でもなお私は書店という場所が好きで、別にお客様と物語をつなぐだなんて大層な使命感とかなかったけれど、
ただ単に本を選びに来ている人を見るのが好きだったなと思った。
そして私も電話でお叱りの言葉をもらったり、クレジット決済でミスして、怯えながら処理したり、懐かしい気持ちが蘇った。
そしてラストに待ち構えていた二転三転する(?)トリック。
だいたい一つ目までは想像がついていたが、二つ目以降は想像しておらず、してやられた!と思った。
トータルして、すごく楽しい小説だと思う。
もちろん、生きていくためには働く必要があって、生活するためにはある程度のお給料が必要で。
それは誰もがわかっていることだけど、もう一度"好き"という感情だけで、素直に働いてみてもいいのかもしれないと、少しだけ思えた。
昔友達と働く上で何が大事かといったことを考えたけれど、その時でてきたのは
①やりがい
②お金
③人間関係(一緒に働く人)
の三つに絞り、この内の二つがよくないとダメだよねという結論に至った。
あながち間違いではないんじゃないかと思う。
この主人公も②のお金はないけれど、①と③はなくしかけては取り戻してなんとか働いている。
やっぱり、そんなもんなのかなと(笑)
今の私はどうだろう。
この仕事で得られるお給料に満足しているだろうか?
この仕事にやりがいは感じているだろうか?
この仕事を一緒にしている人たちのことが好きだろうか?
少しだけ、歩き続けている私の足を止めて、考えるきっかけをくれた。
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