香山リカ

長いこと医者をやってます。

香山リカ

長いこと医者をやってます。

    最近の記事

    職場へのクレームと表現の自由

    なんだかおだやかではないタイトルでごめんなさい。ある裁判の勝訴が確定したので、その報告です。 ご存じの方も多いと思いますが、2020年9月1日、医師の高須克弥氏が私などを愛知県警に刑事告発したと記者会見で公表しました。高須氏は、私などがツイッターで発信した内容が、当時、高須氏が会長となって進めていた愛知県知事リコール運動に対する「きわめて悪質な妨害行為」であり、地方自治法に抵触すると考えたのです。現在、この案件に関する書類は愛知県警から愛知県検察庁に送付されていますが、まだ

      • コロナ禍における自治体職員らのストレスについて

        東京や大阪などで緊急事態宣言がまた延長されることになりました。そのほかの地域でも緊張を強いられる不自由な生活が続き、多くの人がストレスを感じていることと思います。 私は、2011年の東日本大震災の直後から、被災地で救援、支援にあたる自治体職員(市役所、町役場、保健所や公設保育所などで働く方々、そして教職員)の心のケアにあたる機会を得ました。それからこの職種の人たち特有のストレスの問題に関心を持ち、いまも細々とかかわらせてもらっています。 東日本大震災のときは、さまざまな立

        • 総理官邸が陥っている「認知バイアス」が国民の命を危険にさらす

          今年はじめての投稿です。本年もどうぞよろしくお願いします。 最近「あっ」と2回続けて声をあげることがあったので、今回はそれについて書きます。総理や総理官邸が深刻な「確証バイアス」という認知のゆがみを起こしているのではないか、というあまり楽しくないお話です。 1度目は14日、いつもの木曜朝の習慣でコンビニで『週刊文春』といっしょに買った『週刊新潮』(1月21日号)を開き、冒頭近くの「『医療崩壊していない!』ーー『神の手』外科医が訴える『コロナの真実』」という特集タイトルを見

          • 対チャンネル桜裁判のご報告

            放送会社「日本文化チャンネル桜」(代表取締役社長・水島総氏。以下、チャンネル桜と表記)と同社制作番組の出演者に対して私が起こしていた民事裁判、このたび最高裁で勝訴が確定しました。最高裁はチャンネル桜側の上告を退けたということですから、一審、二審の判決つまり「名誉棄損で100万円の損害賠償」と決定したわけです。 この裁判で私が訴えたのは、チャンネル桜沖縄支局が作ってネットで放送している「沖縄の声」という番組です。同番組のキャスターだったK氏は2016年10月、番組内で私のこと

            反日、公金、ヘイト――学術会議、あいちトリエンナーレ、知事リコール運動

            日本の国立アカデミーであり、人文・社会科学、自然科学全分野の科学者の内外に対する代表機関である日本学術会議。全国87万人といわれる学者、研究者を代表する会員は210人です。 いま、その日本学術会議が推薦した新会員候補者のうち、6人の学者を菅義偉首相が「任命拒否」したことが大きな話題となっています。政権側はその理由を明らかにしていませんが、6人の候補学者は過去に政府の方針に対して批判的な意見を述べたことが指摘されています。報復、見せしめともいえるこの露骨な措置に、学者のみなら

            “人情”でコロナ検査しちゃいけないの?

            私はいま、立教大学の映像身体学科という文系学科の常勤の員だ。つまりそこの正職員。もともと医者だったのだが、大学教員になるときにそっちを常勤として、医者としての仕事は非常勤にすることにした。 でも、こんなことを言うと大学の教員としてちゃんと仕事してないんじゃないかと思われるかもしれないが、非常勤医として医療現場にいる時間もけっこう長い。授業やゼミ、会議のない時間はけっこういっぱいいっぱいに診療を入れている。とくに病院には夏休みも春休みもないから、一年を通して考えると、大学と医

            今回は医者としての真面目なお願い―「新しい医療崩壊」を防いでください

            今回は、これから起きると考えられる「新しい医療崩壊」の話を書きます。 前回は都知事選の最年少候補、スーパークレイジー君こと西本誠さんのことを最後に書くなど私にとっては楽しい投稿でしたが、今回はそうもいきません。全国で新型コロナウイルス感染症が拡大が止まらず、彼の代表曲「てんてんむし」を歌ってる場合ではなくなりました(でも興味ある人は、ぜひスーパークレイジー君の「てんてんむし」や「しぇいしぇい」のMV見てみてくださいね…あえてリンク貼りませんが。中毒性あるしどことなく昭和の哀

            小池百合子氏と『モダンガール論』

            今回はどうってことない雑談です。 1週間前の日曜日は東京都知事選の投開票日だった。事前に予想されていた通り、小池百合子知事の圧勝だった。投票率は55・00%で、前回2016年の59・73%を4・73ポイントも下回った。コロナ禍で街頭演説会なども極端に少なかったからとはいえ、盛り上がりに欠けた選挙だったことは否めない。 今さらだが、私も今回の都知事選には積極的な関心を持てず、ツイッターなどで知人たちが「〇〇さんを支持します!」と次々に表明をしているのを見ても、「すごいな…」

            自民党広報の"進化論”漫画に抗議します

            すでに多くの人が批判的に話題にしていますが、この自民党広報のツイッターアカウントから投稿された四コマ漫画には本当に驚きました。 そもそもこの「もやウィン」なるキャラクターが「進化論ではこういわれておる」として語っている、「最も強い者が生き残るのではなく最も賢い者が生き延びるのでもない。唯一生き残ることが出来るのは変化できる者である」というフレーズじたいが、チャールズ・ダーウィンの『種の起源』などの著作にあるものではなく、別の学者が1960年代に自己流で解釈して語ったものだそ

            なぜ私たちは”下世話”なのか―リアリティー番組から考える

            「リアリティーショー」と呼ばれるジャンルのテレビ番組に出演していた若い女性が亡くなった。番組を見た視聴者たちから彼女のSNSアカウントに寄せられていた誹謗中傷がひきがねになった、と言われている。あまりに痛ましいできごとだ。 リアリティーショーとは、テレビ黎明期からあった「台本なし、演出なしで出演者(通常は一般の市民や著名すぎないタレント)がさまざまな事態に直面するのを見て楽しむ」という形式の番組だ。第一号は、1948年にアメリカで始まった「Candid Camera」という

            ”コロナ村八分”は世界の恥でしかない

            英語が得意ではない私は、家での仕事のときの”BGM”としてCNNを流しっぱなしにしている。何か音がほしいのだが、音楽は好きなのでラジオをかけているとつい耳を傾けたり曲名を検索したりして仕事にならない。その点、英語放送なら「よくわからない音声、ときどきテーマ曲やCM」としか認識しないので好都合なのである。 という情けない話はさておき、仕事に飽きて画面に目をやると、ときどき「コロナで世を去った人たち」を番組内で紹介している。決して有名人ばかりではなく、一般の市民でも、写真を何枚

            組織を滅ぼす「権力中毒(The Intoxication of Power)」が政権に蔓延していることについて

            たしか小学校低学年の頃、いまは亡くなった父親が、テレビで国会中継を見ながらこんなことを教えてくれた。 「政治家という人たちはね、議長に『なになに君』って自分の名前が呼ばれて議場に響きわたると、"ああ、いい名前だ”とうっとりするっていうんだ。もしかするとそうやって議場で名前が読み上げられたいから、政治家になるのかもしれないね。」 父はそのことを、自民党の大物政治家が実際に語ったエピソードとして教えてくれたのだが、残念ながらその政治家の名前までは覚えてない。ただ、子どもごころに「

            君知るや口腔アレルギー症候群

            前回、帯状疱疹にかかった話を書いたら、多くの方から「おだいじに」とお見舞いの言葉をいただいた。私はとにかくからだが丈夫で、これまで大きなん病気にかかったことがない。なので、「ゆっくり休んでください」「つらいでしょう。大丈夫ですか」といったやさしい言葉をかけてもらうのはほぼはじめての経験で、恐縮しながらもなんともいえずうれしい気持ちにもなった。本当にありがとうございました。 その帯状疱疹だが、1週間で実はほとんど良くなった。憎らしいほど赤々としていた湿疹もいまはほぼ色が消えた

            私、ウイルスにやられました

             と言っても、新型コロナウイルスのことではない。私がやられた相手は、水痘・帯状疱疹ウイルスだ。早い話が、帯状疱疹になったのだ。  始まりは4月28日の夜だった。いま総合診療医・徳田安春氏とコロナについてZOOMで対談を行い、少しずつYouTubeで公開している。  その対談はとても有意義で、あっという間に時間がたつ。終わったあともテンションがやや高い状態がしばらく続くほどなのだが、その日はなぜか「ちょっと疲れた」と感じたのだ。「なんだか頭が痛いし寒気もするし、もしかしてカ

            1944年、沖縄愛楽園の「Stay Home」

             東京都は、今年の大型連休いわゆるゴールデンウィークを「いのちを守る STAY HOME 週間」と名づけ、都民にいっそうの外出自粛を呼びかけると発表した。在宅を楽しむための動画などもいろいろ準備して配信してくれるという。  新型コロナウイルス感染症はいまや感染経路を追えない市中感染の段階に入り、それを防ぐには「ウイルスの乗り物」である人間が動かないことしか方策がない。そのためには、今や世界の合言葉になっている「Stay Home」を「おうちにいてもいいよ」で「家から出ないで

            医療崩壊には3種類ある

             新型コロナウイルス感染症の拡大で、医療現場にもさまざまな影響が出ています。  「医療崩壊」という言葉をはじめて見たとき、私はなんとなく「コロナ肺炎の患者さんを入院させるベッドや診療する医者が足りなくなる、ということかな」と思ってました。実際に報道番組で「医療崩壊」というワードとともに流されるのは、イタリアやスペインなどの病院で、ベッド不足で病室に入れないコロナの患者さんたちが廊下のソファや床に横たわっている映像だったからです。  しかし、これは「第一次医療崩壊」だったの