八幡 大智/アルプス八幡農園
移住先の北アルプスで環境保全型農業を目指す
■プロフィール
大阪府のサラリーマン家庭で生まれる。屋外で学べる科目が体育と農業くらいしかなかったことや、母の実家である群馬県で子供の頃に自然に触れて農業に関心を持ったことで、国内唯一の私立の農業高校である三重県の愛農学園農業高校に進学。
農業の基礎や有機農法を学んだのち、沖縄県立農業大学校へ進学。卒業後は研修センターで2年半にわたって慣行農法を実践。
就農を考えた2010年、父・博己さんが北アルプスへの移住を計画したことをきっかけに、一家で長野県大町市に移住。有機農家で3年の研修を経て2013年に農園をオープン。
父親が営業と販売を担当し、Facebookで情報発信しながら個人宅配や地元スーパー、宅配業者など複数の販路を展開。「カラフル!ジョイフル!セーフティ!」を合言葉に家族5人で経営。
■農業を職業にした理由
高校と大学で農業を学び、いざ就農を考えた時に、慣行と有機の両方を学んできて、どちらも大変ならば、有機農業をやりたいという思いが強くなった。
慣行農法を学んだ沖縄で有機農業をやるとは言い出しにくいと悩んでいた。そんなところへ父親が定年退職後は、学生時代に登山で訪れた北アルプスで第二の人生をおくりたいと言い出したことがきっかけになって、家族のサポートが期待できる場所ならば、と移住を決意。
ハローワークで紹介してもらった有機農家に弟子入りして、親方と約束した3年間の研修期間を経て、2013年に農園をオープン。
知り合いから借りた標高約700mにある1ヘクタールの農地で、少量多品目の野菜を育てながら、自然への負荷を抑えた環境保全型の農業を続けている。
■農業の魅力とは
就農2年目には、取引先の卸売業者が倒産して販売代金が回収できないこともありました。
野生のサルやネズミによる食害、自然災害など、毎年いろいろなことが起こりますが、自然相手の仕事だからこそ、うまくいった時の達成感が大きく、やっていて飽きません。
就農して9年になりますが、研修先の親方は、「農業者は毎年1年生」だと話していましたから、就農歴が増えても、その年ごとにしっかりと取り組むことが大事です。
それでも僕らが作った野菜に高い評価をいただくと嬉しいものです。例えば、ピーマン嫌いなお子さんが「ここのピーマンだけは食べる」とか「ニンジンをスティックにして食べたら、もうスーパーのものは買えなくなった」などの感想をいただくと、もっと美味しいものを作ろうというやりがいにつながります。
■今後の展望
私たちの農園では、秋のうちにニンジンやイモ類等を収穫して貯蔵しますが、積雪量が毎年異なるので、凍ったり傷まないように保管する方法が永遠の研究課題です。
また、畑がある場所はもともと扇状地だった場所を水田から畑に転換しているので、排水性は改善されているのですが、その分、肥料が地下に流れ出して環境へ負荷をかけるおそれがあります。
資材費も高騰していますから、肥料については畑全体に撒くのではなく、マルチをかける場所や畝を立てる場所ひと畝ひと畝に撒くなど、コスト面、環境面の両方を考えて使用量を抑えるようにしています。