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「世界一うまいギタリストは誰だ⁈」−フュージョン編

こんにちは!
Everyday Fusion!!!、第7回目の連載でございます。

前回の記事での予告しましたように、今回のテーマは

「ギター・フュージョン」

つまり、ギタリストが主役となるフュージョンということで特集をしていこうと思います!

ギタリストのフュージョンというと、その筋の方ならまずは

Larry Carlton "Larry Carlton" (1977)
Lee Ritenour "Captain Fingers" (1977)
George Benson "Breezin' " (1976)
Pat Metheny Group "Still Life" (1987)
Jeff Beck "Blow By Blow” (1975)

あたりが浮かぶのではないでしょうか。どれもギターフュージョンという視点のみならず、フュージョン入門盤としても最適な大名盤たちですね!

しかーーーーーーーーーーし!!!

今回の記事では、単なるフュージョンの名盤紹介ではなく、ギターの「うまさ」に着目して特集を組んでいきます!!!

ギタリスト・作品の選定については、いわゆる「テク系」に分類されるギタリストを中心にしておりますが、単に「うまさ」と言いましても、その評価軸には様々なものが考えられますよね!

今回、筆者の独断と偏見で多くの作品を取り上げますが、評価の観点は以下の通り、多角的かつ総合的に考えていきます。

「うまさ」の評価基準

⑴ ギターを弾く技術そのもの(テク度)
⑵ フレーズの面白さ・バリエーション(フレージング力)

⑶ 作品のエモーショナルさ
⑷ オリジナリティー(誰かのフォロワー感があるか)
⑸ 個性の強さ(一聴してその人の作品と分かるか)
⑹ 大衆ウケするか
⑺ 総合的なオススメ度(ギタリスト視点で聴くべきか)

以上7つの視点について、筆者の知識やギタリストとしての経験を踏まえて、それぞれ(できる限り)5段階で客観的に書いていくことにします。

30人以上も選んでおり、分量も相当なものになっていますので、以下の目次を見ていただき、気になるギタリストから読んでいただいても構いません!

作品の選択には、ややマニアックなものを感じられる方もいらっしゃるとは思いますが、しばしお付き合いください…!

それでは参りましょう!

No.1  Guthrie Govan

"Erotic Cakes" (2006)

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早速!!!テク系のギタリスト好きで知らない人はまずいないでしょう!現代のテク系ギタリストの頂点と言っても過言ではない人物。その彼がこれまでに唯一リリースしているアルバムです。

ガスリーを聴くとあまりの巧さゆえギターを辞めたくなる、とも言われるほどの圧倒的な速弾きとその正確性、豊かなフレージングに多彩な曲と、全く飽きが来ない恐ろしい作品です。

テク系のギターインスト作品では必聴の逸品です。
では、特にオススメしたい曲をいくつかピックアップしましょう。

M1 "Waves"

ギターの指板を縦横無尽に使った、タイトル通りの波打つようなテーマが実に爽快なナンバーとなっています。そして、正確極まりない速弾きとあまりにも豊かなフレーズが随所で聴くことができます。

実際に弾くとわかるのですが、テーマだけでもコピるのに苦労します…

3分ちょうどの、ギターのみの速弾きフレーズからエンディングにかけてはもう圧巻としか言いようがありませんね。

M5 "Fives"

ここでは敢えて原曲ではなく、本人が実際に演奏している動画をご覧ください。ぜひ最後まで通して観ていただきたい!

……

……

観ていただけましたか?

そういうことなんですよ。

1分44秒以降のソロなんて人間業ではありません。この動画は非常に有名でして、そこまで有名ではなかった彼が、世界のトップギタリストとして認知されるきっかけとも言えるものでした。

【評価】
テク度 ★★★★★
フレージング力
 ★★★★★
エモーショナルさ ★★★★
オリジナリティー ★★★★★
個性の強さ ★★★★
大衆ウケ度 ★★★

総合オススメ度 ★★★★★

このアルバム、オリジナルの国内盤はすでにかなり貴重なものとなっており、Apple Music等のサブスクサービスでの配信は無いようですが、昨年別レーベルから再発売がされましたので、購入なさってみるのも良いでしょう。

ちなみに彼のいるトリオバンド、The Aristocratsが2020年6月に来日することが決定しています。興味のある方は、彼らの壮絶なプレイを間近で観てきてはいかがでしょうか?

(チケットは毎回ながら、けっこう強気な値段なのですが笑)

No.2  Greg Howe

"Introspection" (1993)

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アメリカ出身の変態フュージョン系ギタリストによるソロ2作目。

もともと、速弾きギタリストの登竜門であるSharapnel Recordsからデビューした彼が、音楽性を一気にフュージョンに寄せていった作品です!

彼の経歴やプレイスタイル等については、拙稿で詳しく書いておりますので、そちらも併せてご覧いただければと思います。

そんな彼の作品から代表曲、M1 "Jump Start"をお聴きください!

お得意のスライドやアーミングを駆使したウネウネとする独特のプレイスタイルは後進のギタリストたちにも影響を与えました。

やや荒削りな部分はあるものの、一瞬聞いただけで彼のプレイとわかる強い個性がにじみ出ています。

テク系のギタリストは必聴です!!

【評価】
テク度
 ★★★
フレージング力
 ★★★★
エモーショナルさ ★★
オリジナリティー ★★★★★
個性の強さ ★★★★★
大衆ウケ度 ★

総合オススメ度 ★★★★★

No.3  Brett Garsed

"Dark Matter" (2011)

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日本での知名度はかなり低いと思われる、隠れた超絶フュージョンギタリストによる、2011年発表のソロ作です。

ただ、ひとえに「超絶」といっても、普通のギタリストたちとは全く異なるタイプです。まずは、M4 "Avoid the void"をお聴きください。

お分かりいただけましたでしょうか?

音作りが優しく、かつ非常に官能的であり、曲としてもキャッチーで聴きやすいと感じられた方も多いのではないかと思います。

そう、Brett Garsedについては、決して弾きまくり全開!!というわけではなく、楽曲としての質の高さを前提に「ちゃっかり物凄いテクニックを涼しく弾きこなす」というタイプなのです。

そのため、一般の人がプレイを観て「この人、すげーー!」となるようなギタリストではないと思います。

しかし、彼の得意とする滑らかで美しいレガートや、ピッキングに加えて指弾きも加える「ハイブリッド・ピッキング」といった技術力の高さは凄まじいのです。ギターをよく弾かれる方には、よくお分かり頂けるのではないかと思います。

ここで彼の技術力の高さが伺える動画をご紹介します。
2分17秒から始まる彼のソロです。ぜひ、ソロのラインだけでなく彼の右手にも注目してご覧ください

絶妙にアウトしたりしますが、基本的に曲のコード進行に沿い、クロマチックを活用した滑らかなラインが秀逸極まりない、緊張感漂うソロです。

右手を見ていただければわかるのですが、フルピッキングは基本的には用いず、指弾きとレガートを頻繁に活用していることがよくわかると思います。

そんな彼のソロの国内盤CDはすでにレア物となっており、入手困難でプレミア価格ではありますが、サブスクでの配信がございますので、興味を持たれた方はぜひ検索してみていただければと思います!

【評価】
テク度
 ★★★★★
フレージング力
 ★★★★★
エモーショナルさ ★★★★★
オリジナリティー ★★★★
個性の強さ ★★★
大衆ウケ度 ★★★★

総合オススメ度 ★★★★★

ちなみに彼は1990年代に、T.J.Helmerichという、弦を直接叩いて音を出す「タッピング」という技術を極めまくった(しかも両手で)ギタリストとコラボした、非常に良質なフュージョンアルバムをリリースしています。以下の写真の下2枚です。

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こちらに関してはレーベルがすでに倒産しているため、現在は国内外を問わず入手は極めて困難で、配信もなく、著作権の関係で国内盤の復刻リリースもできないという、コレクター欲をそそる幻のフュージョン作です!

私は運よく両方とも手に入れることができましたが、売っているのを見かけたら、すぐに買うことを強く推奨いたします。

No.4  Allan Holdsworth

 "The sixteen men of tain" (1999)

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2017年に突然この世を去った超絶ギタリストによる、実質的には最後のソロ作です。日本での知名度もそれなりに高く、世界中にも多くのフォロワーがいる、まさに「ミュージシャンズ・ミュージシャン」という言葉が似合うギタリストです。

テク系のギターフュージョン作を集めているとよくわかるのですが、「ホールズワース系」という、ギタリストのタイプを表すれっきとした言葉があるくらい、彼の持つ後進のギタリストに対する影響力は大きいものです。この後にも「ホールズワース系」が多く出てきます。

ただ、異常なまでの完璧主義者であったようで、レコード会社との契約問題や離婚などであまりに困窮したため、自らの機材を売り払って生活していたということです。

加えて喫煙に多量の飲酒をしていたために健康を害し、作品の制作が進まない中で亡くなったという、まさに伝説的な人物です。

本作はギタートリオ(ギター、ベース、ドラム)で、トランペットがゲストでソロを担当している以外は全て3人による演奏です。

まずは本作品のタイトル曲をお聴きください。

いかがでしょうか?

イントロからもわかりますが、極めて壮大で広がりがあり透明で、ギターとは思えないほどの独特のサウンドであるということがお分かりいただけます。

アコースティック・ベースと4ビートのドラムをバックに、ジャズのルールに則って演奏されていますが、超個性的なギターの音、フレーズ、圧倒的な速弾きを披露し、もはやジャズを超越した曲となっています。

彼の音作りに関しては、使用している機材に特徴があり、特に本作でも用いられているSynthaxeという特殊なギター型シンセサイザーは特筆すべきものがあります。

その名の通り、斧の形をした独特の楽器になります。
様々な機材を駆使して、独特の世界観を作り上げていたのですね!

筆者は彼が好きすぎてこれ以上書くとキリがありませんので、機材や音楽性の詳しい解説については割愛いたします!!

では、彼が1984年に行った伝説的なライブより、彼の代表曲とも言えるナンバー、"Tokyo Dream"をお聴きください。こちらも3人とは思えない音の厚さと、ホールズワース氏による壮絶なギターソロが楽しめます。圧巻です。

【評価】
テク度
 ★★★★★
フレージング力
 ★★★★★
エモーショナルさ ★★★★
オリジナリティー ★★★★★
★★★★★
個性の強さ ★★★★★
★★★★★
大衆ウケ度 ★

総合オススメ度 ★★★★★

No.5  Shawn Lane

"Powers of ten" (1992)

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2003年に心臓の難病によって、わずか40歳という若さでこの世を去った伝説的な速弾きギタリストによるソロ1作目です。

本作の国内盤リリースは一切なく、配信などでも聴けず、CDはプレミア価格での取引になるという激レア作品となっております。

まずは彼がいかにヤバいギタリストであったか、ご覧ください。

意味がわかりませんね!

速さに関して言えば、前出のGuthrie Govenどころではありません。人間はこんなに速く指を動かせるものなんだという、生物的な限界を示されているような気がします。

フルピッキングなのに、音の1粒1粒が本当に綺麗であり、耳を疑うレベルです。テンポで換算するとどれほど速いんでしょうか…

速弾きだけに焦点が行きがちな彼ですが、その魅力は速弾きだけではありません。彼はここまでの速弾きが可能であるのにも関わらず、その楽曲が「フュージョン」として極めて質が高いという点です。

本作から1曲お聴きください。

いかがでしょうか?

実に美しい曲だと思われた方も多いのではないかと思います。

テクニックありきではなく、テクニックを背景とした楽曲としての質の高さが際立つその特徴は、前出のBrett Garsedと似ている部分があるように思います。ソロではもちろん所々耳を疑うような速弾きも聴けますが!!

エグいほどの技術力を持ち合わせながらこんなに美しい曲を書くという、ある種のギャップ萌えが素晴らしいんですね!

【評価】
テク度
 ★★★★★
フレージング力
 ★★★
エモーショナルさ ★★★★
オリジナリティー ★★★

個性の強さ ★★★
大衆ウケ度 ★★★

総合オススメ度 ★★★★

No.6  Richard Hallebeek

"RHP Ⅱ" (2012)

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オランダ出身「ホールズワース系」の超絶ギタリストによるソロ2作目です。過去、単独の来日公演は一度もなく、日本での知名度は残念ながら皆無であると言っても過言ではありません。

国内盤CDはリリースされていますし廃盤ではないのですが、なにせ知名度が低いこともあり、タマ数があまりに少ないため現在でも入手は難しいはずです。

本作は彼のバンドに様々なギタリストをゲストに迎えてソロを弾いてもらうという形態をとっており、Andy TimmonsGreg HoweGuthrie GovanKiko Loureiroといった、錚々たる世界的なギタリストの演奏も聴くことができます。

まずは本作から1曲聴いてください!

1分50秒から始まる最初のソロがHallebeek氏の演奏になります。独特の粘り気のある音と、前出のBrett Garsedの作品で登場した「ハイブリッド・ピッキング」を駆使した、指板を縦にも横にも使うという特徴的なソロを展開します。

作品全体としての雰囲気は、トリガーを使用したドラムが独特の目詰まりをしたような音をしているせいか、どこかアンニュイな雰囲気が漂いますよね!

ここで彼の技術力の高さが見られる動画をご紹介します。

スウェーデンのプログレッシブ・ロック系のキーボーディストであるLalle Larsson(ラレ・ラーション)の作品で弾いている様子です。ハイブリッド・ピッキングとレガートを全面的に使った超絶的なプレイが聴けます。

1分17秒からのフレーズではハイブリッド・ピッキングがとても分かりやすく観察することができます。2分15秒からのギターソロでは、通常のギタリストとは異なる、ハイブリッド・ピッキングを駆使した、あり得ないようなラインを軽々と弾いてしまっています

特に3分7秒からのフレーズは圧巻としか言いようがないですので、要チェックです!!

【評価】
テク度
 ★★★★★
フレージング力
 ★★★★
エモーショナルさ ★★
オリジナリティー ★★
★★
個性の強さ ★★★
大衆ウケ度 ★★

総合オススメ度 ★★★★

ちなみに、彼と直接連絡を取った際に言っていたことなのですが、彼は本作で「目詰まりしたような音」でドラムを担当しているSebastiaan Cornelissenがあまり好きではないらしく、新作ではドラマーを変えたと話していました…

実際、2018年リリースの最新スタジオアルバム "One Voice" ではドラマーがNiels Voskuil(読み方がわかりません…)に変えられており、プレイも絶賛していました。

ミュージシャン同士の人間関係も難しいものだと思わされましたね笑

No.7  Alex Machacek

"[Sic]" (2007)

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オーストリア出身、もともとジャズを学んでいたという「ホールズワース系」のギタリストによる2007年作です。

はっきり言います。

これは大衆ウケはしません笑

日本での知名度も皆無に等しく、相当にマニアックな音楽性をしている個性の強いギタリストです。Allan Holdworthのフォロワーという人脈で考えると、実は確固たるテクニックもあり有名ですが…

まずは彼の演奏を動画で見ていただきましょう!本作収録の曲です。

いかがでしょうか?

彼の音楽は私の中ではフュージョン(ハードフュージョン)に分類されますが、どこか室内楽的な重厚な雰囲気を感じます。

使用しているギターも非常に個性的ですよね笑
その筋の方には有名な、Strandbergというメーカーです。

これは「ヘッドレス」と呼ばれるタイプのギターで、Allan Holdworthも最晩年までこのタイプのギターを愛用していました

彼のシグネチャーモデルのページまでありますので、スペックや価格等気になる方はご覧ください。

本作はサブスクで聴くことはできないようで、YouTubeで聴くか、CDを買うかしかないようです。国内盤に関しても廃盤ではありませんが、流通している数が極端に少ないもので、入手が非常に困難なアーティストであることは間違いありません。

【評価】
テク度
 ★★★
フレージング力
 ★★★★
エモーショナルさ ★★
オリジナリティー ★★

個性の強さ ★★★★★
大衆ウケ度 ★

総合オススメ度 ★★★

ちなみにAlex Machacekが、Allan Holdworthのトリビュートで彼の楽曲を演奏している映像もありますので、こちらも要チェックですよ!!巧いです!

No.8  Richie Kotzen

"The Inner Galactic Fusion Experience" (1995)

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MR.BIGでPaul Gilbertの後任としての活躍や、ファンク・ソウル寄りの大名盤ソロ作で有名なギタリストが、タイトル通りフュージョンに舵を切った作品です。

ドラムはRingo Starrバンドのドラマーとしても活躍している名手、Gregg Bissonetteが担当し、野太い音で支えております。

本曲ではギターのみならず、ボーカルもベースもドラムもピアノも弾けるという、超マルチプレイヤーである彼が、ギターのメロディーにユニゾンして口ずさんでいるのも聴こえます。

実にアウトしているメロディーラインが素晴らしくクールです。彼のフュージョンにおけるプレイについて詳しく知りたい方は、特集のムックが発売されていますので、プレミア価格がついておりますが、ご購入なさってみても良いでしょう!

【評価】
テク度
 ★★★
フレージング力
 ★★★★
エモーショナルさ ★★★
オリジナリティー ★★

個性の強さ ★★★★
大衆ウケ度 ★

総合オススメ度 ★★★

No.9  M.V.P

 "Truth in shredding" (1990)

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この作品は事件です。

数あるテク系ギターフュージョンの作品の中でも、もっとも壮絶で、もっとも異色な作品であることは断言しておきましょう!!

まず、メンツに驚く。あのAllan Holdsworthと、一方向に連続してピッキングをする「スウィープ・ピッキング」を発明したFrank Gambaleの、超絶にもほどがある2人のコラボレーション

まずは、有名なBrecher Brosthersによる M1 "Rocks" のカバーをお聴きいただきたい。

本曲のFrank Gambale、Allan Holdsworth両氏のソロをコピーしているすごい人の動画もありますので、気になる方はご覧ください!

両氏とも本当に壮絶なギターソロを展開しております。

本作についてはあまりに凄まじい作品であるため、独立して1つの記事にする予定ですので、詳細はそちらに譲りたいと思います。

とにかく!

テク系ギターフュージョンを聴く上では避けては通れない史上最強のアルバムであると思います。必聴です!

【評価】
テク度
 ★★★★★★★★★★
フレージング力
 ★★★★★
エモーショナルさ ★★
オリジナリティー ★★

個性の強さ ★★★★★
大衆ウケ度 ★★

総合オススメ度 ★★★★★

ちなみに本作の国内盤は、オリジナル版、直後の再発版、2004年の復刻再発版とバージョンが様々あります。現在ではその全てが廃盤になっているようです。

またコレクションの自慢ですが、このアルバムへの愛が高じすぎて、型番の違うそれぞれのバージョンを全て集めてしまいました。左から1991年リリースのの国内盤オリジナル、1992年の再発盤、2004年キングレコードリリースの復刻盤となっております。

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No.10  TRI-Offensive

"TRI-Offensive" (2008)

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日本人の超絶フュージョントリオによる、最初で最後の作品です。メンバーは菰口雄矢(g)、岡田治郎(b)、小森啓資(dr)の3人。

変拍子が基調となるようなプログレ要素をふんだんに含んだ、とっても聴きごたえのある素晴らしい作品です。

メンバーは皆さんすごい方たちですが、何より特筆すべきはギターを弾いている菰口雄矢さん。彼のメジャーデビュー作であり、しかも当時、筆者と同じ20歳というから開いた口が塞がらない。

まずは、本作の中で最も有名であろうM1 "Fate of the Azure" をお聴きいただきたいと思います。

いかがでしょうか?

初めて聴く方はあまりに複雑な拍子に驚かれると思いますが、全体として完成度や楽曲の質が極めて高くなっております

3分40秒からの菰口さんのギターソロ、縦横無尽に指板を駆け回っていることが一聴して感じられ、「菰口雄矢 天才」の予測検索が出てくることにも大きく納得させられることでしょう。

【評価】
テク度
 ★★★★★
フレージング力
 ★★★★★
エモーショナルさ ★★★★★
オリジナリティー ★★
★★
個性の強さ ★★★★★
大衆ウケ度 ★★

総合オススメ度 ★★★★

菰口さんはその後、日本のフュージョン界で大活躍されており、TRIXのメンバーとして何作もリリースされておりますし、2014年にはMichael Landauをゲストに迎えたソロ作 "Picture" をリリースされました。

こちらはTRI-Offensiveのようにテクニック全開ではなく、いかにもフュージョンらしい非常に爽快な作品に仕上がっておりますので、興味のある方はぜひお聴きください!

詳しいプロフィールは菰口さんのサイトをチェックされると良いと思います。

No.11  David Fiuczynski

"Kif express" (2008)

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アメリカ出身のギタリストで、本邦では上原ひろみのプロジェクト、Sonicbloomのギタリストとしてご存知の方も多いのではないでしょうか。

本記事で選定しているアルバムの中で、間違いなく最も個性的な一枚です笑

一聴してわかる独特のオリエンタルな雰囲気を感じてください!

いきなり衝撃的なメロディーが流れてきて、思わず笑ってしまう人もいるかもしれませんね笑

そう、本作は彼のモロッコでの体験を元に作られたもので、本曲のイントロのギターは「マイクロトーン・ギター」と言われる極めて特殊なギターなのです。

わかりやすく言えば、微分音ピアノのギター版です!西洋音階では表現できない独特の音階が特徴的です。

本人がこのギターを解説している動画がありますので、興味のある方はぜひ。

このギターを用いた彼独自のスケール(音階)もあるようで、テクニックに裏付けされたオリジナリティー溢れる作品となっております。

本作はサブスクでも聴くことができるようですので、もう少しこの世界観を味わいたい方はぜひ検索してみてくださいね。

【評価】
テク度
 ★★★
フレージング力
 ★★★★
エモーショナルさ ★★★
オリジナリティー ★★
★★★
個性の強さ ★★★★★
大衆ウケ度 ★★

総合オススメ度 ★★★

No.12  HBC

 "HBC" (2012)

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HBCとはメンバーの名字の頭文字をとったもので、Scott Henderson(g)Jeff Berlin(b)Dennis Chambers(dr)という世界的な超大物セッションミュージシャンが集まったバンドです。

特筆すべきはギターのScott Hendersonのプレイで、徹底的な理論武装を背景に、アーミングも多用しウネウネした独特のフレーズを展開します。

速弾きこそ少ないものの、理論に裏付けられたフレージング力や音程の正確さといった技術力は極めて高く、独特の雰囲気を楽しめます。

本作収録で、Herbie Hancockのペンによるセッション曲、M1 "Actual Proof"をお聴きください。

ギターとベースは全弦半音下げですので、原曲とはキーが異なっています。

ギターソロを聴くとお分かりいただけますが、和音も多用していますね。ここまで紹介してきたギタリストとはまた異なるうまさの持ち主ですので、速さではないギターの技術を体感していただける傑作ではないかと思います。

ここでは詳細は割愛いたしますが、Dennis Chambersのドラム、Jeff Berlinのベースも凄まじいプレイを聴かせておりますので、注目して聴いてみても楽しめます。

【評価】
テク度
 ★★★
フレージング力
 ★★★★★
エモーショナルさ ★★★
オリジナリティー ★★
★★★
個性の強さ ★★★★★
大衆ウケ度 ★★

総合オススメ度 ★★★★★

筆者は昨年の10月、Scott Hendersonの来日公演を最前列で観ましたが、演奏中は常に右手にはアーム、足はボリュームノブ(ペダルではなく、ギターの音量をコントロールするためだけのノブが付いているものに足を乗せていた)にあり、いかに音を繊細にコントロールして演奏しているかが伝わってきました。

以下、その時の写真を乗せておきます。

No.13  Martin Miller

"The other end" (2013)

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現代のテクニカル系若手ギタリストの中でも、群を抜いて知名度を上げているのがこの人!JTC (Jam Track Central)という、インターネット時代の気鋭のギタリストを紹介するサイトで、現在もYouTube等に様々な動画を上げています。

昨年は同じibanezユーザーということで、Tom Quayleとともに来日してギタークリニックが開催されたことも記憶に新しいと思います。

Dream Theaterをはじめ、テク系メタルも弾きこなす人物で、本ソロ作からはM2 "An end in itself" という白眉の1曲をお聴きください!

いかがでしょうか?

楽曲の質が高く、かつフュージョンらしい爽快さ溢れるナンバーですよね。音の正確性ももちろん、とにかくフレーズの引き出しが多いという点も特徴でしょう。

本作はいかにもフュージョンという楽曲から、メタル、バラード、ポップ系など非常にバリエーションが豊かな作品が揃っております。

本作はインターネット時代らしく、CDでのリリースはほとんどないようで、基本的にはサブスクで全て聴くことができますので、要チェックです!!

【評価】
テク度
 ★★★
フレージング力
 ★★★★★
エモーショナルさ ★★★★★
オリジナリティー ★★

個性の強さ ★★
大衆ウケ度 ★★

総合オススメ度 ★★★

ちなみに、彼のピッキングに関して徹底的に分析している動画もありますので、ギタリストの方でその秘訣を知りたい方は、英語ですがぜひご覧になってみると良いかと思います。

No.14  Tom Quayle

"Spain"

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前出のMartin Millerとよくペアで出演することのある、JTC(JAm Track Central)で有名なテクニシャン。

まだアルバムといった作品としてのリリースはないですが、超絶的なフュージョンリックやアドリブを展開することで、界隈ではよく知られた人物です。

その彼がよく弾いている曲がSpain。Chick Coreaのオリジナルとして、ジャズのセッション曲としても定番の有名曲ですね!

まずフレーズの引き出しが本当に多く、かつレガートが極めて滑らかで美しいことが大きな特徴といえます。

さらに、Martin Millerと組んだこちらの動画。

3分10秒すぎがわかりやすいのですが、手元を見ない、ノールックでもの凄いアドリブを展開しています。意味がわからないです笑

適度にアウトする部分もあり、見本のようなギターソロです。

【評価】
テク度
 ★★★★★
フレージング力
 ★★★★★
エモーショナルさ ★★★
オリジナリティー ★★

個性の強さ ★★★
大衆ウケ度 ★★★

総合オススメ度 ★★★★★

No.15  Frank Gambale

 "Thunder from down under" (1990)

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オーストラリア出身、Chick Corea Elektric Bandでも長年ギタリストを務めている「スウィープマスター」

まずは本作からM9 "Robo-roo"を聴いていきましょう。

全体的にキャッチーで明るく、フュージョンらしい雰囲気が感じ取れるかと思います。しかし、2分20秒以降のギターソロで聴けるように、ものすごい音数をピロピロ〜〜と軽く弾いてしまうと。

先ほども「スウィープ・ピッキング(sweep picking)」という言葉を出しましたが、どういう奏法かということは以下の動画を見ていただければお分かりいただけるはずです。3分13秒以降がわかりやすいかと思います。

つまり、上下交互にピッキングをする(オルタネイト・ピッキング)ではなく、連続してひとつの方向に向かってピッキングをすることで、より効率的に弾こうとするテクニックということです。

Frank Gambale本人はこれを "speed picking" と呼んでいるようですが、要するに前記したスウィープ・ピッキングのことになります。

スウィープ・ピッキングというと、多用するとどうしても「テクニックをひけらかす」「ハッタリ」というようなイメージがつきがちだと思われますが、彼の場合はスウィープ・ピッキングを実に音楽的に使用し、スウィープの滑らかさゆえ、ギターのメロディーが1本の線のように紡ぎ出されるという点に大きな魅力があるのだと思います。

【評価】
テク度
 ★★★★★
フレージング力
 ★★★★
エモーショナルさ ★★★★
オリジナリティー ★★
★★
個性の強さ ★★★★
大衆ウケ度 ★★★★

総合オススメ度 ★★★★★

No.16  Andre Nieri

"Two tone sessions" (2016)

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ブラジル出身、新世代の超絶ギタリストとして、Martin Millerらと同じくJTC(Jam Track Central)で取り上げられている人物です。

近年はソロのみならずプログレ界隈で活躍しているオーストラリア出身のドラマー、Virgil Donatiのバンドやレコーディングでも重宝されています。

彼もMartin Millerと同様に、Dream Theaterのカバー動画を上げており、テク系にとって不可避の道をしっかり通過していることが伺えます。そのため速弾きのみならず、7弦ギターも使用し、変拍子も軽々と弾きこなせるという高度な技術を持ち合わせています。

ここで本作から、彼の代表曲 "Brazilian fusion" の映像をご覧ください。

この動画でもみることが出来ますが、前出のピック+指弾きを併用する「ハイブリッド・ピッキング」を多用するうえに、ソロをもはや完全に指弾きで弾いてしまうこともあるという、独特のスタイルを持ち合わせています。

以下の動画、2分35秒から始まるギターソロで確認することが出来ます。

絶妙にアウトしているところが実にクールで、速弾きに典型的に見られる「水平的」なラインのみならず、上から下まで多くの弦を使う「垂直的」な指板の使い方をしている点も、技術力とフレージング力の高さを感じさせます。

【評価】
・テク度
 ★★★★★
・フレージング力
 ★★★★★
・エモーショナルさ ★★★
・オリジナリティー ★★

・個性の強さ ★★★
・大衆ウケ度 ★★

・総合オススメ度 ★★★★

No.17  Marco Sfogli

"There's hope" (2008)

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イタリア出身、Dream TheaterのヴォーカルであるJames LaBrieのバンドでも活躍しているギタリストによるギターインスト名盤です。

本作に関してはフュージョンというより、メタル系のギターインストに分類されるのかもしれませんが、Virgil Donatiの作品にも参加するなど、メタルのみならずテク系ハード・フュージョンにも関わりのある人物ということで紹介いたします。

彼の代表曲というと、本作収録の M2 "Andromeda" がまず挙げられます。彼が実際に弾いている動画です。

いかがでしょうか?

4分27秒からのフレーズは圧巻の速弾きとメロディアスさで、かつ実に音の粒も揃っていて、個人的にも本当に好きな部分です。

プレイスタイルとしては、これまで何回も出てきた「ハイブリッド・ピッキング」は使用せず、フルピッキングとレガートが基本の、メタルタイプのテクニカル系ギタリストであると言えるでしょう。

あまりに難しそうでコピーしたこともないのですが、Dream Theaterをはじめ、テク系のメタルが好きな方は要チェックの1枚です。

本作はサブスクでも聴けますので、ぜひチェックしてみてください!

【評価】
テク度
 ★★★★★
フレージング力
 ★★★★
エモーショナルさ ★★
オリジナリティー ★★

個性の強さ ★★★
大衆ウケ度 ★★

総合オススメ度 ★★★

No.18  Jack Thammarat

"On the way"

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タイ王国出身のギタリストで、彼もまたJTC(Jam Track Central)でとても有名な人物です。

実は彼は10年以上のキャリアがあるにも関わらず、JTCなどで曲をシングルとして発表しているため、アルバムとしての作品は1枚もなく、今回取り上げる曲は、彼が有名になったきっかけであるコンテスト、"Guitar Idol" でも弾いていた曲です。

その彼が日本のギター専門誌、Young Guitar誌上でデモ演奏した動画です。

非常にスムースで美しく爽快なメロディー、耳に馴染むキャッチーなフレーズが随所で聴けるギターインストですね!曲調から、ギターインスト界の大御所であるJoe Satrianiの影響を感じさせます。

一見簡単そうに聴こえた方も多いかも知れませんが、実際にコピーしてみると、チョーキングの音程やリズム感、レガートの正確性といった、ギターを演奏するうえで基礎となるテクニックが完璧に求められるため、動画のようにミスなく弾くのには大変な努力が求められることに気付かされます。

派手なことはしていないが、基礎基本のテクニックの質を限界まで高めたギタリストであると言えそうです笑

もう1曲、実に美しく爽快なインストナンバーをご紹介しますので、気になる方は聴いてみてください!!!

【評価】
テク度
 ★★★
フレージング力
 ★★★★★
エモーショナルさ ★★★★
オリジナリティー ★★
★★
個性の強さ ★★★
大衆ウケ度 ★★★★★

総合オススメ度 ★★★★

No.19  藤岡幹大

"Trick disc" (2007)

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日本における「ホールズワース系」の天才ギタリストによる2007年作。Babymetalのバックバンド「神バンド」のギタリストを務めており、158cmと小柄ながら超絶的なプレイをすることから「小神」と呼ばれていました。

2018年1月、わずか36歳でこの世を去ってしまいました。

彼がいかに繊細にギターをコントロールしているかが伺える動画がこれです。

彼の魅力は超絶的な速弾きのみならず、Allan Holdworthを敬愛していたことからもわかるように、やっている音楽はメタルでもフュージョンやプログレを背景に持っているということだと思います。

そのため、繰り出されるフレーズを聴くだけでただのギタリストではないことがすぐに分かってしまいます。

神バンドのメンバーで演奏した際のソロ、ぜひご覧ください。最初のソロが藤岡さんです。その次に弾くのが大村孝佳さんですが、大村さんの場合は昔から典型的なメタル系の速弾きを得意としていますので、2人のスタイルの違いにも着目していただければと思います。

【評価】
テク度
 ★★★
フレージング力
 ★★★★
エモーショナルさ ★★★★★
オリジナリティー ★★
★★
個性の強さ ★★★★
大衆ウケ度 ★★

総合オススメ度 ★★★

No.20  CAB

"CAB 2" (2001)

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Dennis ChambersBunny Brunelといったフュージョンに関わりのあるミュージシャンで結成されたハード・フュージョンのバンドです。

注目したいのはギタリストのTony MacAlpineです。彼も前出した速弾きギタリストの登竜門であったShrapnel Recordsの出身で、メタル系を得意としていますが、ここではフュージョンらしい演奏を残しています。

彼はDream Theaterの元メンバーであるMike Portnoy(ds)Derek Sherinian(key)、そしてMR.BIGで知られるBilly Sheehan(b)とともにPSMSというスペシャルバンドで来日公演も行ないました。

これはその東京公演で演奏されたもので、Billy Cobhamによるフュージョン名曲の "Stratus" をカバーしています。

音色もコントロールして、テクニカルかつアウトもするなどフュージョンらしいソロを展開しています。3分25秒あたりのタッピングでは彼のルーツらしい、ネオクラシカル系のフレーズが聴けます。

ということで本作はギタリストのみならず、すべての楽器演奏者が楽しめるものであると思います!

【評価】
テク度
 ★★★★★
フレージング力
 ★★★
エモーショナルさ ★★★
オリジナリティー ★★

個性の強さ ★★★
大衆ウケ度 ★★

総合オススメ度 ★★★★

No.21  Andy Timmons

"Ear X-Tacy" (1996)

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アメリカ出身のロックギタリストによるギターインスト名盤です。

彼についても、フュージョンというよりロックというイメージを持たれる方が多いかとは思いますが、拙稿でも書きましたように、ドラマーのSimon Phillipsのソロプロジェクトである "Protocol" のメンバーとして録音も多数あり、フュージョン系にも強いギタリストです。

Simon Phillipsのバンドでの演奏を見ていただきましょう。

変拍子にも完璧に対応し、多彩なフレーズを途切れなく生み出していく姿はさすがとしか言いようがありません。

昨年の来日公演も観ましたが、クリーントーンと歪みの境目すらわからないような魔法のような時間でした。

本作からそんな彼の名バラードである "Electric gypsy" を前出のMartin Millerと共に演奏する動画を最後にご紹介します。

【評価】
テク度
 ★★★
フレージング力
 ★★★★★
エモーショナルさ ★★★★★★★★
オリジナリティー ★★

個性の強さ ★★★
大衆ウケ度 ★★★

総合オススメ度 ★★★★

No.22  Richie Kotzen / Greg Howe

"Tilt" (1995)

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前出のGreg HoweとRichie Kotzenがコラボした、弾きまくりのギターアルバムです。

もともとは、名だたる有名速弾きギタリストを多数輩出してきたレコード会社Shrapnel Recordsから、メタル系ギタリストとしてデビューした2人がコラボしたテク系フュージョン作で、それぞれ交互にオリジナル曲を収録しています。

特にオススメしたい曲として、Stevie Wonderの1976年の大名盤、"Songs in the key of life"収録の"Contusion"のカバーを挙げます。

M5 "Contusion"

オリジナルの雰囲気を保ちつつ、フュージョン度を高めて弾きまくり。

この2人、音楽的な背景が異なるためフレーズや弾き方のスタイルもかなり違っており、その差を前提にしてソロを聴くとより楽しめるのではないでしょうか!

基本的にRチャンネルとLチャンネルで2人のギターが分離されて収録されていますので、この2人をよく知らない方は各々のソロ作を聴いてみて、どちらが誰か当ててみるのも面白いですよ笑

利き茶ならぬ、「利きギター」というところでしょうか笑

本作品の国内盤CDはすでに廃盤ですが、比較的安価で手に入れることも可能ですし、サブスクでも聴くことができますので、興味のある方はぜひ!
コラボ作の続編もありますよ!

【評価】
テク度 ★★★★★
フレージング力
 ★★★★
エモーショナルさ ★★
オリジナリティー ★★★★
個性の強さ ★★★★
大衆ウケ度 ★★

総合オススメ度 ★★★

No.23  Scott McGil

"Ripe" (1999)

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アメリカ出身の「ホールズワース系」フュージョンギタリストによるソロ作。一聴してAllan Holdsworthのフォロワーであるとわかるくらいの影響を感じさせます。

ここ日本での知名度はゼロに近いギタリストであるとは思うが、荒削りながらプログレ的な知的な曲の中で、素晴らしいフレーズを聴くことができます。

ジャズロックの雰囲気を強く感じさせる作品ですね。

この作品の音源はYouTubeにはこれしかなく、サブスクでも聴くことができません。しかも、これも国内での流通数が極めて少なく、CDを手に入れることも困難でプレミア価格で取引されているレア物です。

手に入れられた方がいれば、M2 "The Ripe One" をぜひお聴きいただきたいです。Allan Holdsworthが好きな方にはたまらないアルバムです。

【評価】
テク度
 ★★★
フレージング力
 ★★★★
エモーショナルさ ★★
オリジナリティー ★★

個性の強さ ★★★★
大衆ウケ度 ★

総合オススメ度 ★★

No.24  國田大輔

"In my life" (2014)

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ESPといったスクールで講師も担当している日本人ギタリストによるソロ作で、前出のAlex Machacekや、Steve Huntといった大物をゲストに迎えて制作されたハード・フュージョン作品。

レコーディングメンバーも豪華で、T-SQUARE等のドラマーとしても知られる坂東慧氏や、前出のTRI-Offensiveでベースを務めた岡田治郎氏も参加しています。

ご覧いただきたいのは上原ひろみをゲストに迎えたM2 "Hemenway St."。一発録りとは思えない質の高さです。

昨年リリースの最新作では、さらに収録曲の音楽性が広がっている印象でジャパフューらしいものから、バラード、Alex Machacek的な室内楽的なものまで、本作 "In my life" 以上に楽しめること間違いありません。

詳しくはご本人のサイトをチェックしてみてください!

【評価】
テク度
 ★★★
フレージング力
 ★★★★
エモーショナルさ ★★
オリジナリティー ★★

個性の強さ ★★★★
大衆ウケ度 ★★

総合オススメ度 ★★★★

No.25  Tim Miller

"Trio Vol.3" (2017)

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アメリカ出身、これまた「ホールズワース系」のテクニシャンによるソロ3作目になります。

パッと聴いてみると、確かにAllan Holdworthの影響下にあることはわかるのですが、ギターの音作りは極めて個性的で、エレキギターのはずなのにアコギのような摩訶不思議な深い音をしています。

ピエゾ・ピックアップを使っているのでしょうか…?詳しくは知らないので、ご存知の方コメントなど入れてもらえると嬉しいです笑

Dream Theaterの出身校としても有名な名門、バークリー音大でも教鞭を執る彼のフレーズは、理論武装されていることもあり非常に知的と言いますか、一筋縄にはいかない独特の雰囲気を醸し出します。

ここまで読んで彼のことが気になった方、必聴ですよ!

この曲は彼のトリオ3部作の中でもかなりキャッチーで聴きやすいものだと思いますので、もう少しディープな(笑)感じの曲を聴いてみたい方は、以下の曲もお聴きください。

大衆ウケはしそうにないですが、ギタリストからみると非常にカッコイイ曲だと思うのですが、いかがでしょうか…?

彼は使用しているギターも実に個性的です。以下の動画ではこれまで何回も出てきました「ハイブリッド・ピッキング」を詳細に解説していますが、使用ギターの形状が独特ですよね!

ギタリストの方にとっては有用なレッスンのはずですよ笑

Allan Holdsworthも愛用していたヘッドレスタイプのギターですね。klein製の独特のボディーシェイプをしたモデルになります。

全く関係ありませんが、少し前にとても話題になったコメディー映画、"Deadpool"の監督もTim Millerという名前で、検索をかけるとそっちも方が先に出てきますよ笑

【評価】
テク度
 ★★★★★
フレージング力
 ★★★★★
エモーショナルさ ★★★★★
オリジナリティー ★★

個性の強さ ★★★★★
大衆ウケ度 ★

総合オススメ度 ★★★★★

No.26 Samuel Zechin

"Back on the rode" (2014)

画像23

ブラジル出身のギタリストで、彼もDream Theaterのカバー動画を上げており、Martin MillerAndre Nieriらと同じく、現代のテク系のメタルを通過してきたギタリストであると言えるでしょう。

そんな彼の現在のところ唯一のソロ作で、Virgil Dobati(dr)や元Dream TheaterのDerek Sherinian(key)といった大物をゲストに迎えて制作されたものになります。

おそらくパッと聴いてみると「ただのプログレッシブ・メタルじゃないか!」と思う方もいらっしゃるとは思いますが、5分30秒過ぎからのギターソロをお聴きいただくと、ただのメタルではないことがお分かりいただけると思います。

音楽性の系統としては前出のAndre Nieriと似ているものがあると思います。メタルからもプログレからも影響を受けつつ、フュージョン的なアプローチもでき、ラテンフレーバーも加えるという、実に様々なジャンルが見え隠れしますよ!!

Dream Theaterの好きな方にはぴったりの1枚です。サブスクで聴けますので、気になった方はぜひ検索してみてくださいね。

【評価】
テク度
 ★★★★★
フレージング力
 ★★★
エモーショナルさ ★
オリジナリティー ★★

個性の強さ ★★★
大衆ウケ度 ★★

総合オススメ度 ★★★

それにしてもDream Theater好きの皆さん、この曲の8分52秒からのアルペジオ、なんか聴いたことありませんか…?笑

思い出せそうで思い出せないので、ピンときた方、コメントなど下さい!!

No.27 Alessandro Benvenuti

"Sonic Design" (2002)

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イタリア出身のテクニカル系ギタリストで、彼もレガートを使用した極めて滑らかな速弾きを得意としています。

前出のRichard Hallebeekとプレイスタイルが似ており、ハイブリッド・ピッキングも多用、ややメタル寄りな部分は感じられますが、楽曲の質も高いものとなっています。

この作品はサブスクで聴くことができますので、気になった方はぜひ検索をしてみていただければと思います。

【評価】
テク度
 ★★★
フレージング力
 ★★★
エモーショナルさ ★★
オリジナリティー ★★

個性の強さ ★★★★
大衆ウケ度 ★

総合オススメ度 ★★★

ちなみに彼は前出のMarco Sfogliとともに、イタリアのフュージョン、プログレ系キーボーディストであるAlex Argentoの作品にも参加しております。

気になる方は ソロ作、"Ego"(2007)も要チェックです!

No.28  Mark Lettieri

"Spark and echo" (2016)

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日本でも大人気!昨年の来日公演も記憶に新しい、世界的ファンク・フュージョンバンドSnarky Puppyのギタリストによるソロ作です。

このアルバムからタイトルソングの演奏です。

普通にめっちゃうまいです笑

フレーズやスタイルがどこかJohn Mayerを感じさせるのは気のせいでしょうか?アウトしている箇所は実にフュージョンらしいですし、本作収録の他の曲を聴いてみますと、ファンクらしい曲もありますし、新世代の新しいスタイルのフュージョンが確立されていると言えるような作品に仕上がっています。

テクニック全開ではなく、楽曲の質、もっと言えばバンドサウンドも計算し尽くしているようなアレンジです。

Snarky Puppyのファンのみならず、広くギタリストに聴いていただきたい作品です。サブスクでも聴けますので、ぜひ検索してみてください!

【評価】
テク度
 ★★★
フレージング力
 ★★★
エモーショナルさ ★★
オリジナリティー ★★
★★★
個性の強さ ★★★★
大衆ウケ度 ★★★★

総合オススメ度 ★★★★

No.29  Lindsey Boullt

"Composition" (2007)

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日本での知名度はゼロと言ってよいでしょう。テク系のエスニック・フュージョン作です。

まずは本作からM8 "Taste and hate" をお聴きください。

ギターにお詳しい方なら感じられると思いますが、明らかにJohn McLaughlinのMahavishnu Orchestraの影響を感じるような、エスニックな雰囲気がします。

それもそのはずで、ヴァイオリンやシタール奏者までバンドに加えています。ヴァイオリンのJerry Goodmanにいたっては、Mahavishnu Orchestraのメンバーとしても活動していましたからね笑

そもそも、Mahavishnu Orchestraはインド音楽からの影響もあるため、独特のエスニックな雰囲気はインド由来のものかもしれませんね!

しかし、それだけではなく、元Dream TheaterのDerek Sherinian(key)の参加もあり、エスニック要素に加えて変拍子によるプログレ感もあります。さらに、30秒過ぎなどでLinsey Boulltによる速弾きも聴くことができ、実に多彩なジャンルのミクスチャーとして聴く価値は極めて高いのではないでしょうか?

本作の国内盤CDは極端に流通量が少なくレア物であると言えますが、サブスクでもYouTubeでも聴けるようですので、気になった方はぜひ調べてみてください!

【評価】
テク度
 ★★★
フレージング力
 ★★★★
エモーショナルさ ★★
オリジナリティー ★★
★★★
個性の強さ ★★★★★
大衆ウケ度 ★★

総合オススメ度 ★★★★

No.30  Prashant Aswani

"Revelation" (1997)

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インド系移民の家庭に生まれた、インド系アメリカ人ギタリストによるソロ作。

とにかく聴いてみてください!

お詳しく方なら気づかれたかもしれません。

そう、ほとんどGreg Howeですね笑

実は彼は前出のGreg Howe "Introspection" に多大な影響を受け、彼の門下生として指導を受けたという、筋金入りのGregファンなのです。

アウトフレーズやアーミングを用いたウネウネするような特徴的なフレーズは実にGreg Howeの特徴をよく捉えていると思います。

ただ、そのコピーにとどまらず、師匠であるGreg Howeより滑らかなプレイと展開しています。ピックアップメーカー、EMGのYouTubeチャンネルに数多くの演奏動画がありますので、ぜひチェックしてみてください!

個人的にはGreg Howeよりプレイに関しては技術力は高いのではないかと思っていますが、皆さんはどう思われますでしょうか?

【評価】
テク度
 ★★★
フレージング力
 ★★★★
エモーショナルさ ★★
オリジナリティー ★

個性の強さ ★★★★
大衆ウケ度 ★★


総合オススメ度 ★★★★

No.31  Vinai Trinateepakdee

"Move the sky" (2012)

画像30

前出のJack Thammaratと同じく、タイ王国出身のフュージョン系ギタリストによるシングルです。

彼もまたJTC(Jam Track Central)で有名なギタリストで、彼を代表する1曲となっています。

いかがでしょうか?

Jack Thammaratよりもロック色、テクニック色が強いかもしれませんが、実に爽快で気持ちのいいフュージョンナンバーに仕上がっていますよね。

プレイスタイルもロック的で、あまりハイブリッド・ピッキングといった奏法は多用せず、フルピッキングかレガートで弾くことが多いようです。

気に入った方はぜひ下の動画もチェックしてみてください。

【評価】
テク度
 ★★★
フレージング力
 ★★★★
エモーショナルさ ★★★
オリジナリティー ★

個性の強さ ★★★★
大衆ウケ度 ★★
★★
総合オススメ度 ★★★★★

No.32  Alex Hutchings

"Happy as Larry" (2009)

画像31

彼もまたJTC(Jam Track Central)では非常に有名なギタリストになります。

左足にギターを乗せるという、見るからにテクニシャンというようなプレイスタイルで豊富なフレーズを、実に軽やかに、かつドヤ顔で(笑)弾いています。

動画をご覧ください!

いちいちドヤ顔に目が行きますが、プレイ自体はめっちゃ上手いです笑

いかにもフュージョンというような気持ちのいいフレーズをレガートを多用して、とっても滑らかに弾いていきます。

これだけの実力者なのにアルバムという形でまとまった作品が出ていないのは少し残念ですし、サブスク等でも一切ないため、気になる方はJTCのチャンネルから様々な動画を見ていただけるといいのではないかと思います。

Larry Carltonのペンによる、フュージョン史上最大の名曲の1つである"Room335"をカバーしている動画もありますので、彼の超絶的なフュージョン・リックのみならずドヤ顔(笑)もぜひ観てみてください!

【評価】
テク度
 ★★★★★
フレージング力
 ★★★★★
エモーショナルさ ★★★★
オリジナリティー ★
★★
個性の強さ ★★★
大衆ウケ度 ★★

総合オススメ度 ★★★★★


以上、合計32作品、22,000字超という卒論並みの大変な分量になってしまいましたが、ここまでお付き合いいただいた方、ありがとうございます。

もちろん、ここでの評価はそのギタリストの本当のレベルなどとは限りませんので悪しからず。(某雑誌にも書いてありますよね笑)

テーマは「世界一うまいギタリストは誰だ?」などとしましたが、選定作品や評価には筆者の主観も含まれているはずですし、まだまだ書ききれていないギタリストもいますし、はっきり言ってその問いは愚問なのかもしれませんね。

冒頭でも書きましたが、今回はテクニカル系という部分に焦点を当てたギター・フュージョンの特集でしたので、やや主流から離れた部分があります。

また、ギター・フュージョンの「歴史的名盤」に焦点を当てた記事も書こうと思っていますので、また読んでいただければ幸いです!!

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