修善寺のマスターから学んだ、ちょっと遠くの温泉に浸かる「効果」
「何か嫌なことがあっても、ふらっと旅に出て、温泉浸かって『極楽、極楽』と言っているうちに、目の前のことなんてちっぽけなことだと感じて頑張れるもんだ」
これは修善寺で立ち寄った食堂 兼 カフェバーのマスターとの話の中で、マスターが発したことばのひとつだ。大学時代に聞いたらおそらくその意味を深くは理解できなかっただろうが、社会人の今ならはっきりと理解できる。「極楽、極楽」は魔法の言葉だ。そして温泉は、明日の心持ちを前向きにするものだ。
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久々に1人旅に出たくなった。ゲストハウスに泊まり、地域の方と話し、唯一無二の時間を過ごすような、そんな学生時代のような旅に出たくなった。
修善寺という地域との出会いはたまたまだった。東京から数時間で行くことができ、かつこれまでに行ったことがなかった場所、欲を言えば温泉に入れればなおいいかな。そんなことを考えながら調べていると、前から行きたいと思っていたゲストハウスが修善寺にあることが判明し、今回の目的地が決まった。
JRと伊豆箱根鉄道を乗り継ぎ、到着したのは午後3時ごろ。駅前の観光案内所で情報収集をしてから、目的地の修善寺温泉へと向かう。ゲストハウスは期待通りの素敵な場所で、フレンドリーなオーナーさんに相談すると、地域の情報もいろいろ教えていただいた。その中で夕食場所についての話になり、一人でもふらっと入れるところ、地域の方と話せるようなところを聞くと、とあるお店をご紹介いただいた。地域の方もよく足を運ぶ場所で、旅行客の中にはマスターに人生相談までしてしまう方もいるらしい…?地域のディープな夜を過ごせること間違いなし、そう直感で感じた僕は、目的である温泉に浸かった後、そのお店に向かうことに決めた。
オーナーさんのお話の通り、マスターは非常にフレンドリーだった。たまたまお店にお客さんがいなかったこともあり、カウンター席に座ると話が弾んだ。途中からは地域の常連の方も加わったが、旅行者かつ新参者にも関わらず、あたたかく迎えてくださった。どうやら、ゲストハウスのオーナーの方が勧めるからか、多くのゲストハウス宿泊者がそのお店を訪れているらしい。マスターも常連の方も、そんな1人旅客との交流を楽しみにされているそうでよかった。その日のゲストハウス宿泊者にたまたま1人旅の方がおらず、少々寂しい思いをしていた僕にとって、1人旅の満足感を十分に味わえたお店だった。
その話の中でマスターの口から出たのが、冒頭にある言葉だ。話の前後の文脈は詳細には覚えてはいないが、確か、「ちょっと前にこんな1人旅客の方が来て…」という文脈だったように思う。少々つらいことがあっても、東京から数時間、電車に揺られ、修善寺の温泉に浸かっているうちに、『ああ、自分はなんて小さなことで悩んでいたんだ…』と気づき、気持ちが軽くなる。温泉にはそんなリフレッシュ効果がある、というのだ。
この言葉には、帰りの電車の中で僕も大きく共感していた。最近は少々バタバタし、いろいろと仕事の悩みも出てきつつあったのだが、修善寺の有名な共同浴場「函湯」に浸かっているときも、ゲストハウスの方に教えていただいた穴場(?)の温泉に浸かっているときも、何も考えずにぼーっとする中でその悩みから離れ、修善寺から帰るときには「もうちょっと頑張ろう」という前向きな気持ちになっている。
もちろん、近場の銭湯や温泉でゆっくりするのもリフレッシュになるのだが、旅好きの僕だからか、「ちょっと遠くまで行く」ことで、十分なリフレッシュになる。ひと手間かけたその移動時間が、日常から非日常へ、そして非日常から日常への変化の「壁」をゆるやかにしてくれる。修善寺は東京から数時間、乗り換えも数回で行けるし、もし急ぎの場合は特急「踊り子」を使えばほぼ乗り換えなしで行ける場所。日常の中の非日常使いにぴったりだ。
ここ最近、家でも湯船に浸かることが多くなった。少々疲労がたまっているのだろうか。銭湯に行く機会も学生時代より増えた。大きいお風呂はやはり家よりもさらにリラックスできる。それでも解決しないときには、いや、そうでなくても数か月に一度は、ちょっと遠出して温泉に浸かりに行きたい。大小さまざまな悩みがあっても、そこで時間を過ごせば、ちょっと前向きになれるような気がするから。
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