ディバイデッドホテル 8/32
「この店に来て、トマトバーガーを食べないって、どうよ?」
フィッシュバーガーを頬張る加藤廉の顔を、田代信郎は、向かいの席から覗き込んだ。
「トマト、食えないんすよ」
田代は瞼を開いた。
「こいつァ、驚いた! ピーマンが嫌いな奴は、今まで何度も会ったことがあるけどよ、トマト嫌いははじめてだ」
「いや、その。嫌いなんじゃなくて、食えないんス」
田代は二、三度瞬きして加藤を見た。加藤は、分厚い一重瞼の下の小さな瞳を伏せ、張り出した頬を赤らめた。
「アレルギーか」
「面目ねえっす」