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文豪に学ぶ文章術。 #小雪「十頁だけ読んでごらんなさい。十頁たって飽いたらこの本を捨てて下さって宜しい。」

こんにちは。広報室の下滝です。

いよいよ11月も半ばを過ぎ、空は澄み渡って美しいのですが、吹き付ける風に身がすくみ、室内の暖かさにほっとする日々です。
寒い日には暖房のスイッチを入れて、暖かい部屋の中で音楽を聴いたり、本を読んだり。
外が寒いほど、部屋の中にいる幸せが感じられますよね。

そんな室内で、さて何をしようか…というときに、そろそろクリスマスカードや年賀状の準備をしないといけないなと思い始めた方もいるのではないでしょうか?

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久しく会っていない人たちへ宛てる言葉。
プリントされているイラストだけでは味気ないし、一言添えたい。
でも、なかなかいい文章が思い浮かばなくて、結局毎年同じ文言で送ってしまう。なんてことありませんか?

ひとまず、十ページだけ読んでみてください

今回ご紹介する「十頁だけ読んでごらんなさい。十頁たって飽いたらこの本を捨てて下さって宜しい。」は、そんな悩み解決の手助けをしてくれる一冊です。

肩ひじの張った細かい手紙の作法ではなく、相手にどんな言葉を届ければいいのか。芥川賞作家 遠藤周作がユーモラスに教えてくれます。

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もしかしたら、え?芥川賞作家?難しそう…。タイトル長すぎるし、内容も上から目線なんじゃないの?昔の人の文章ってだけで、小難しくて読みにくい気がする…と感じた方もいるかもしれません。

ですが、そう決めつけてしまう前に、とにかくページを開いて、“十ページだけ”読んでみてください。
きっと、意外な発見があなたを待っているはずです。

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面白おかしく学べる「手紙のコツ」

本書の面白いところは、作者が手紙を書くのがおっくうな人間であったり、文章が下手で酷評されたエピソードなどを含めて、様々な人の手紙にまつわる失敗談、成功談をエッセイのように綴っているところです。

「文章表現は~こうすべき!」など断定的ではなく、おっとりと面白がるように他人のラブレターを評して、これではデートの誘いを受けるわけがない。とさらっと述べて、それも的を射ているなと読み手に思わせるあたりはさすがです。

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拝啓からはじまり、敬具で終わる手紙が良いというわけではなく、大切なのはそこに込めた気持ちを“自分の言葉”で、“読む人の気持ちになって”書くこと。そこからどんな内容にするか考えていけば、手紙の五割はもうできたようなものだそう。

「名文を書こうと意識しないで。難しい文例をまねる必要もありません、そう考えると少しは気楽になりませんか?」と言われると、そうかも、と思わず頷いてしまいます。

思いやりの大切な病人への手紙、愛を伝えるラブレター、愛を断る手紙、お悔みの手紙、先輩や知人への手紙。

作者やその身近な人々が試行錯誤してきた様子を踏まえながら、どのように書けばいいのか。その作法をわかりやすく教えてくれます。

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文章修業ゲームに挑戦しよう

メッセージカードや手紙の他に、SNSが盛んな今、自分の気持ちを発信する機会が増えてきた方も多いと思います。

なんとなく書いて公開するけど、いつも同じ事ばかり書いてる気がする…ということはありませんか?
そんなときは、本書が教えてくれる、自分だけの表現を見つける「ようなゲーム」がオススメです。

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文章を書くのが嫌いだった作者が、文章修行のために編み出したこの「ようなゲーム」。

ゲームの内容を簡単に説明すると、例えば、夕陽を見るとき、どこに目がいくのか。この眺めをどう表現すれば「ありきたり」にならないか。
「~のような夕陽」という風に、「~ような」に当てはめて考えてみる小さな思考が、自分だけの言葉を見つけるトレーニングになっていくというもの。

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私も通勤電車の中でやってみましたが、最初は難しいなと思っていたものの、色々と思いつき始めると楽しくなってきて、見慣れていた景色がより美しく面白いものに見えると同時に、すごく身近に感じられました。

文章の表現を充実させる方法は、難解な本を読むことよりも、どのくらい日常を自分の目でしっかり「意識して」見ることなのかなと、大切なことを教わった気がします。

文章に苦戦しているという方は、時間のあるときに挑戦して、自分だけの表現を探してみてはいかがでしょうか。

届けよう「言葉の贈り物」

本書は執筆から四十六年間埋もれていて、作者の死後十年後に発見され、刊行に至りました。

作者は人を驚かせたり、面白がらせることが好きで「ユーモアは他者と結びつこうとする愛のあらわれである」とエッセイで述べていたそうです。

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そんなサービス精神が旺盛だった作者からの、他者と関わるきっかけになる「手紙の書き方」という贈り物。

誰か大切な人にあなたの想いを伝えたいときには、ぜひ手に取ってみてください。
そして、愛を込めたあなただけの文章を相手の心に届けてみませんか?

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-今回のここに注目!-
「自分でキャッチした、オリジナルな言葉を」

ありきたりの言葉で大事な気持ちを表現しないで。とはいっても、自分だけの表現ってどうやって考えるの?
そんな方はぜひ、文章修行ゲームで、一緒に自分だけの言葉を探しにいきましょう♪

※今回写真で使用したレターセット「月の船」は「暦生活のお店」で販売しています。
月の船をイメージした便箋に夜空の封筒。山のかたちのシールに宛名を書いて、山間に沈むお月様を送れるレターセットです。
他の種類もありますので気になった方は是非お店をのぞいてみてください☆

■十頁だけ読んでごらんなさい。十頁たって飽いたらこの本を捨てて下さって宜しい。

著者:遠藤 周作
出版社:新潮社
定価:本体430円(税別)
文庫本:190ページ
ISBN:9784101123387

■レターセット「月の船」
サイズ:224×162mm
枚数:便箋2種各4枚
封筒4枚 シール4枚


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