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言葉にならないものを、いとおしく思うようになった時のこと
毎日、フランスで過ごして、思い浮かぶことを書いている。
つくづく思うのは、「言葉ですべてが表現できるわけじゃない」ってこと。
言葉になる前のもやもや、ほわほわしたものが、いつも心と頭に漂っている。
◇◇◇
おしゃべりなわたしに対して、わたしの友人たちやパートナーは、そこまでおしゃべりじゃない。
半年くらい前、とあることでパートナーと話し合いをした時、彼の言っている意味がよくわからなくて、苛立ってしまったことがあった。
普段ならそこまで深入りしないけれど、その時の話し合いのテーマはとても大事なものだったので、インタビュアーになった気分で、いくつも、いろんな角度から質問をして、彼の言いたいことを探っていった。
おかげで、2人で納得できる結論に至ることができた。
質問をしながら、ゆっくりと確信を深めていくような、本当は在り処がわかっているけれど隠れていたものを見つけ出すような、不思議な感覚を通して、あるひとつのことに気づいていった。
"ああ、みんながみんな、すぐ言葉にするわけじゃ、ないんだ"
◇◇◇
わたしは言葉にするのが好きだし、好きだからこそ、仮に言葉にするのが難しいことに直面しても、苦もなく取り組める。
でも、みんながみんな、そうだというわけでは、ないんだ。
「よくわからない」と彼の意見を切り捨てていたら、2人が納得できる結論にはたどり着けなかっただろう。
わたしは、いつもちゃんと、相手がうまく言葉にできない部分を掬いとろうとしているだろうか。
言葉を使ってやりとりしていたって、言葉にならないもの、言葉になる以前のものがあることは、忘れちゃならないんだ。
相手の中にも、もちろん自分の中にも。
◇◇◇
わたしは、話すのも書くのも好きだから、「なんでも言葉にしたい」「思い浮かんだことは、すぐ他人に伝わるようにアウトプットしなくちゃ」と思っているところがある。
それは、大学院で、論文を書くための学びや練習をしてきたこととも、無関係じゃない。
浮かんだアイデアを、なるべくわかりやすく文章や図にして、「こんなの考えたんですけど、どうですか?」と他人にぶつけて、ディスカッションして、アイデアを磨いていく。
わたしにとって、大学院とはそういう場所だ。
インプットとアウトプットのサイクルをひたすら、そしてなるべく早く繰り返す、脳みそが汗をかくようなひりひりした感じも好きだ。
でも、こうやって、大学院からも、日本からも離れた場所に来て、ほわほわと感じたことを、ああでもない、こうでもないと、時間をかけて言葉にして、時には「もうちょっと時間がいるなー」と寝かせたりしているのも、同じくらい好きだ。
言葉と心、頭の、あらゆる側面をいとおしく思う。
そして、そんなことに気づくきっかけをくれたパートナーにも、感謝している。
◇◇◇
ヘッダーは、この街の河の写真です。
ゆっくり大きな河が流れていると、気持ちがいいです。
最後までお読みいただきありがとうございます。 これからもたくさん書いていきますので、また会えますように。