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超人に好かれすぎて偉人になってしまいそう#13

高学年① 客観を見せ「させる」


相手になかなか自分の考えが伝わらないと思うことが多い。相手に実感してもらうためには経験してもらうのが一番早い。

例えばキャビアを食べたことがない人に、「塩辛い」「クリーミー」「磯の香りがする」と言うより食べてもらうのが最善だろう。


そもそも何や磯の香りって、臭そう。誰もおいしそうなんて思わない。

かと言って、食べさせるなんてもったいない。高級珍味をわざわざ人のために。


人に体験「させる」と言うのはかなりその人の力量が試される。



ーーー



小学高学年に昇格。これからはお兄さんお姉さんだ。低学年の諸君かかってきなさい。

昇格した気分を表しているように新しいクラスが騒がしい。高学年昇格大会にでも優勝したのだろうこのクラスは。

新しい担任の「Ms.(ミズ)」は女性で若さが名残を見せる。

Ms.は柔らかい頭を持っていた。クラスのみんなの顔が均等に見たいといいみんなの机を教室の壁に沿わせてコの字に並べた。中心でMs.が授業をしている。このクラスではコの字がスタンダードになり、クラスメイトもそれを楽しんでいた。


そんな日常のなかの社会の授業。

「今日は自習です。」

このMs.の台詞はみんなには悪魔の囁きに聞こえた。

「遊んじゃえよ低学年の時の様には怒られねぇよ」

もちろんと言わんばかりにクラスが騒ぐ。高学年昇格パーティが始まった。

Ms.が居なくなると男児は走り回り、女子は椅子を移動させて、しゃべくり大会。自分もただ流れに身を任せ、何も考えずに、パーティーに参加した。これが自習というものだろう。

高学年になったのだから何も気にしなくていい、このコの中心で騒げ。


ふと気づくとコの字の中心にはMs.がいた。騒ぐ勢いを抑える暇もなく走る回る男児。石の様になる女子。できるものならこのまま時間をとめて自習をしたいとみんなが思う。自分も時を止めたかった。てかなんでおるんMs.。


「今、ちゃんと自習をしてたって人は手あげて。」


パーティーに参加していなかった三人ほどが手をあげた。三人はコの字の中心に招待され授業を受け始めた。え、このまま授業するの。

Ms.は三人にだけ聞こえるように話し、コの字の住民とは目が合わない。

ちょっと、授業なんやから全員にしないとあかんやろ、と言うか自習じゃなかったんかよ、急に現れるし、なんのサプライズや。ドッキリにしては意地悪やな。


そう思った自分は気づくと席を立って、Ms.のそばに立って抗議をしていた。


「授業を受けさせてください。」


「授業してるやん今!真ん中で。でも、自習はしてたつもり?自分はしてるつもりやったかもやけど。」



意地悪な言い方やな。でも確かに授業してる。

逆に自分の自習はMs.にどう見えたのだろうか。これが自習というものだと思っていた。

気づいた時には自分が騒いでいたことを客観視していた。



あとがき


久しく更新をしていなくてすみません。見てくださっている人には申し訳ありませんでした。小学校4年生の時の記憶を引っ張り出したこの思い出を書いていますが、なかなか自分の人格を形成している思い出だなと思います。

Ms.は人当たりが良くて、小学校の先生の中では初めて自分のこと下の名前で呼んでくれる人でした。よくたわいもない話をして自分で言うのもなんですが好かれていたと思います。

もう一つ小話にはなりますが、自分が諸事情で入院することがありました。大したことがない入院で三日もすれば退院できると言うものでした。しかし、Ms.の粋な計らいでクラス全員のメッセージを寄せ書きにしてプレゼントしてくれました。想像もしていないサプライズであったので興奮して喜んだことを覚えています。気さくで面白い人でありました。楽しい小学校生活をありがとうございました。

ただ、寄せ書きの内容には「元気でな!」「今までありがとう」などのメッセージが多数。俺は死なないし転校もしねぇわ。と、思った覚えがあります。寄せ書きをかく=さようなら、と認識しているのも無理もないと思います。小学生なら。


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