Hideto Nishitani

Virtuous Capital LLC : べンチャービジネス、ソーシャルインパク…

Hideto Nishitani

Virtuous Capital LLC : べンチャービジネス、ソーシャルインパクト起業家支援、コーポレートガバナンス

最近の記事

ウクライナ情勢の及ぼす影響

ウクライナ情勢に関する欧米のロシア経済制裁により日本企業や世界経済にどんな影響が及ぶのか、2014年のクリミア侵攻時の制裁を参考にシナリオ予測をしてみましょう。 「かつて見ない措置」とは バイデン米大統領による米軍派遣をしない「大きな制裁措置」とは何でしょうか? まずロシア金融機関を国際決済システムから排除し金融決済を不可能にすることが考えられます。対イラン制裁に倣いロシア中銀の国際準備資産($630 Billion)を凍結することもあるでしょう。これらは最終的手段とも言

    • 社外取締役の選定等の注目企業例

      味の素株式会社 味の素のコーポレート・ガバナンスの状況を、ガバナンス報告書に沿って見てみましょう。 ✓ 明確なパーパスに基づいた社会との共有価値経営 味の素は、会社のパーパスをすべてのステークホルダーへのメッセージとして明確にしています。「アミノ酸のはたらきで世界の健康寿命を延ばすことに貢献します」という理念のもと、事業を通じて社会価値と経済価値を共創して成長することをシェアードヴァリューとして経営する、と明確に発信しています。また、コーポレート・ガバナンスもこれに基づき設

      • ガバナンス上最適な社外取締役人数、構成比は

        コーポレートガバナンス・コードは、会社の持続的な成長と中長期的企業価値の向上のために、独立社外取締役(以下「社外取締役」)の活用を求めています。企業は、業種、事業規模・事業特性、機関設計、会社を取り巻く事業環境などを総合的に勘案して社外取締役の人数を決めるわけですが、プライム上場企業であれば少なくとも3分の1という選任要件を満たすとして、適切な社外取締役構成比率はどんなレベルなのでしょうか。 社外取締役の選任判断 基本的に、社外取締役は取締役会において自らの知見や経営経験に

        • 実効性高いガバナンスとは

          社外取締役の活躍によって、上場会社の取締役会が株主に対する受託者責任と説明責任に基づいた役割と責務を果たすという方向性に進みつつあると評価できるでしょう。これは、本来、コーポレートガバナンス・コード(以下「コード」)が基本原則の中で目指している考え方です。 経営戦略の方向性の示唆と経営陣に対する実効性ある監督 ガバナンスの要諦として、取締役会は、企業理念(パーパス)に基づいた戦略の大きな方向性を示し、適切なリスクテイクを行う経営環境を整え、独立した立場から経営陣に対して実効

        ウクライナ情勢の及ぼす影響

          家計簿・資産管理アプリサービスの課題

          家計簿、資産管理だけでなく、ダイエット、摂食栄養管理、メンタルヘルス等、個人向けの自己「管理」系アプリは、ユーザーが定着するかどうか難点は多いと思います。年頭の決意として、アプリの活用によって自己管理をしようと思ったユーザーが、「三日坊主」的にアプリを画面から消すケースは多いのが現実です。アプリビジネスは、何であれ、継続的課金収入の堅さが、そのビジネスモデルの価値を決するため、ユーザーのコミットメントを希薄化させない仕組みを作ることが肝要でしょう。 継続を促す仕組みの難しさ

          家計簿・資産管理アプリサービスの課題

          リサイクルのエコシステム創造

          3つの資本に基づくサステナブルな企業経営 リサイクルはサステナブルなビジネスの核となるバリューチェーンだ。今日の経営は、財務資本・人的資本・自然資本の3つの資本(Capital)を最適活用し、3P(Pofit, People, Planet)を経営のボトムラインとして積極的に社会課題に取り組み利益を上げていく、という企業姿勢に立つというのが、欧米有力企業の一般的な認識である。日本企業に多い「エコはCSRの一環」という発想は、米国ではもはや主流ではない。もちろん、リサイクルに熱

          リサイクルのエコシステム創造

          PFM×アドバイザー

          米国での「PFM x Advisory」(PFMA)について以下のとおり俯瞰する。いわゆる富裕者向けのプライベートバンキングではなく、30~50百万円の余資を持つ資産家を顧客とするPFMAサービスを念頭に置く。 ■利用データ PFMAの基本は、資産家のリスク・リターン選好度(寛容度)の把握である。その基本は、ライフスタイル、ライフプランの把握という、ファイナンシャルプランニングの根本をしっかりと顧客との間で確認することである。最近の傾向として、生き方の原点に立ち返り「資産家

          PFM×アドバイザー

          映画「Beyond Zero」-脱炭素を考える

          米国で注目されている脱炭素推進企業の映画がある。タイトルは「BEYOND ZERO」。81分のこの映画は、カーペット業界の一企業Interface社の脱炭素推進の試練の日々を描き、多くの企業から賞賛されている。ちなみにInterface社が脱炭素の活動を始めたのは1994年である。映画鑑賞後、カーボンニュートラル推進の議論を参加者で行ったので、以下、要点を記す。 自社の環境負担を減らすトップの決意明示が重要 脱炭素推進活動においてまず行うべきことは、経営トップと経営陣の脱炭

          映画「Beyond Zero」-脱炭素を考える

          「パーパス経営」の実践

          §企業活動のための資本(Capital)の新定義 今日の事業環境下、事業活動の展開に必要な諸資本と各ボトムラインは、以下のように定義できる。 ・Financial Capital (財務資本):Profit(利益) ・Human Capital(人的資本) :People(人) ・Natural Capital(自然資本) :Planet(地球) §企業活動をサステナブルに行っていくための基本概念 上記の諸資本を最適活用して事業活動を長期的に成長させていくために

          「パーパス経営」の実践

          「脱炭素推進」プロジェクト着手手順

          §「脱炭素推進」の第一歩 「脱炭素」を推進するためには、現時点でのおよその排出量を各主要部門(商品)毎に把握し、いわゆる「カーボンフットプリント・マスターデータ」を作成することが第一歩である。 §「脱炭素推進」の基本手順 脱炭素推進のためには次の5つのステップを踏むことが必要で、このステップに沿って組織的行動を取っていくことになる。 ①脱炭素推進活動の定義 脱炭素に向けて、全社的に推進するのか、効果の大きい特定部門(商品)を対象にするのか、上記のマスターデータに基づいて、

          「脱炭素推進」プロジェクト着手手順

          ロボ・アドバイザー (ウエルスナビ)

          ウエルスナビの成長は注目に値するが成長持続性は不透明だ。以下、日本人の投資耐性からみたロボアドバイザーの強みと弱みを見てみよう。 チャネル戦略 ウエルスナビの特徴はマーケティング戦略だ。三菱UFJ、横浜、イオン等の他、ネット銀行、ネット証券など8社の有力チャネルがある。顧客年齢、余資の規模、運用選好、リスク耐性度は様々だが、広いチャネルがあれば、ウエルスナビに関心を持つ顧客獲得は比較的容易なはずだ。銀行の投信等の対面販売では、運用成績悪化のクレームなど苦渋を舐めることは多い

          ロボ・アドバイザー (ウエルスナビ)

          二酸化炭素排出量取引価格(EU-ETS)の中長期的なトレンド

          EU-ETS(EECXM)は、年初の€32近辺から€60程度にまで価格が上昇した。ブルーンバーグ報道によれば、ヘッジファンド(Andurand Capital) は年内 €100の価格を予想しているという。 価格上昇には下記のような短期的要因があろう。 コモディティー市場、特に天然ガス価格は年初価格$2.58から8月末には$4.38まで高騰した。このガス価格高騰が石炭火力発電への再回帰を起こし、EU-ETSの需要が強まった。 また、ESG意識が高まりEU-ETS市場参加

          二酸化炭素排出量取引価格(EU-ETS)の中長期的なトレンド

          「バーチャルオンリー株主総会」の課題

          コロナ禍でリモートミーティングが急速に一般的になり、バーチャルオンリー株主総会「VAGM」の開催が可能となった。以下、主に米国におけるVAGMの現状とその在り方の議論をもとに、利点と問題点を俯瞰する。 VAGMの利点は、全国的、全世界的に株主の所在地を問わず参加が可能(時差の問題はあるが)なことだ。米国では、株主の総会出席率が以前より改善した会社は多い。また、総会の場で挙手により賛否を決めるのとは異なり、賛否票数が明確になって総会の透明度が高まった。また、感染拡大下でのVA

          「バーチャルオンリー株主総会」の課題

          Culture Amp(カルチャー・アンプ)

          Culture Amp(カルチャー・アンプ)が提供する従業員エクスペリエンス・分析プラットフォーム「Culture Amp」は、どのような点に特徴があるか。また、その可能性について見てみよう。 Culture Ampのプラットフォームは今後の「HRテック」の方向性を見るうえでおもしろいので、俯瞰してみよう。企業業績と生産性を高めるためには、社員のエンゲージメント(Employee Engagement:EA)を高めることが重要である。Culture Amp(以下「CA」)は

          Culture Amp(カルチャー・アンプ)

          ビジネスチャットの進化形

          今年4月に1億4500万ドルを調達した独Staffbase-従来の統合コミュニケーションプラットフォームと異なる成長の強みはどこにあるのだろうか。 Staffbaseが米国大企業の支持を広めている。欧州系企業だけでなく、米国でもジョンホプキンス大学、医薬品卸大手のマッケソンなどがユーザーになった。筆者が関わるHRテック(人事テック)の観点から、主にSlackなどのビジネスチャット(BC)と比較してStaffbaseの強みを見てみよう。技術的にBCで対応可能な点もあろうが、紙

          ビジネスチャットの進化形

          米国のCO2排出ネットゼロへの動き

          米国バイデン大統領がリードした4月の気候サミットで、パリ協定に復帰したことを契機に新たに国家としての目標を発表、「2030年までに2005年比で温室効果ガス(GHG)50~52%削減」とした。また、バイデン大統領は会議において、今後10年の重要性を強調し、各国が気候変動対策のための行動を起こしていくことを促した。この動きで特筆すべきことは、バイデン大統領のイニシアチブとして、ホワイトハウスがタスクフォースを組み、今後の検討に向けて、各関連官庁が横断的に検討を進めていくことがで

          米国のCO2排出ネットゼロへの動き