ウクライナ情勢の及ぼす影響

ウクライナ情勢に関する欧米のロシア経済制裁により日本企業や世界経済にどんな影響が及ぶのか、2014年のクリミア侵攻時の制裁を参考にシナリオ予測をしてみましょう。

「かつて見ない措置」とは
バイデン米大統領による米軍派遣をしない「大きな制裁措置」とは何でしょうか?

まずロシア金融機関を国際決済システムから排除し金融決済を不可能にすることが考えられます。対イラン制裁に倣いロシア中銀の国際準備資産($630 Billion)を凍結することもあるでしょう。これらは最終的手段とも言える制裁ですが、実施された場合にはロシアの国際取引に関わる全企業に影響が及び、日本企業のみならず国際金融市場に打撃的影響を与えます。インフレ亢進等コロナ後の経済運営に悩む米欧政権が取りたくない手段ながら、対NATOで強硬的姿勢のロシアに対峙する中で偶発的に強硬制裁に至るリスクはないとは言えません。

米政府が特定のロシア企業や大統領側近を米国愛国法上の対象に指定し取引停止するという選択肢もあり得ますが、「大きな経済措置」という方針の米大統領の面子上悩ましい対応です。制裁第一弾としての目先の脅しにはなり得ますが、この段階だけでは日本企業等への影響は限定的でしょう。

マクロ市場のさらなる混乱要因
ウイズコロナの経済回復過程で多品目で需要圧力が高まりロジを含む需給ギャップがインフレ圧力を高めています。本格的金融制裁による世界的影響はロシア依存度が高い、パラジウム、ニッケル、アルミニウム等、他の商品取引にも多大な影響を与え、日本企業に短中長期的に混乱を与えることが懸念されます。

プーチン大統領は柔道に通じたリーダーです。ロシア国境からNATOを西方に押し戻すことを戦略的な「攻め」とする一方、クリミア侵攻以降の制裁によるロシア経済への影響を抑えねばという「受け身」的国内事情もあります。米独の新政権体制を衝いたプーチン大統領の戦略的な体さばきに抗する、日米欧の対応の巧拙が日本企業等への影響の鍵を握っています。

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