社外取締役の選定等の注目企業例

味の素株式会社
味の素のコーポレート・ガバナンスの状況を、ガバナンス報告書に沿って見てみましょう。

✓ 明確なパーパスに基づいた社会との共有価値経営
味の素は、会社のパーパスをすべてのステークホルダーへのメッセージとして明確にしています。「アミノ酸のはたらきで世界の健康寿命を延ばすことに貢献します」という理念のもと、事業を通じて社会価値と経済価値を共創して成長することをシェアードヴァリューとして経営する、と明確に発信しています。また、コーポレート・ガバナンスもこれに基づき設計するという考えです。

✓ コーポレート・ガバナンス・コードの各原則を全て実施
✓ 2030年に目指す構造目標と過程のロードマップをKPI付きで明示
✓ ESG目標もあいまいな説明にせず、明確な項目と改善目標を提示
✓ これらに結びついた財務目標(配当性向を含む)を開示
✓ 社内取締役の中期業績連動型報酬には利益率等の他に、社員エンゲージメントやESG目標を導入

全取締役11名のうち、社外取締役は6名、女性取締役は3名。社外取締役の属性は、他の会社の経営経験者3名、学者、弁護士、公認会計士という構成で、取締役のスキルマトリックスも9項目にわたっています。

2021年6月の株主総会の議決に基づき、指名委員会、報酬委員会、監査委員会を設置、社外取締役が各委員長を担っています。報酬委員会は社外取締役のみにより組織され、指名委員会は5名のうち社外取締役が3名、4名の監査委員会は3名が社外取締役と、社外取締役が監督の座についています。

IRメッセージなどステークホルダーへの事業戦略の発信は、会社としてのパーパスとバリューとの整合性がはっきりとしており、中長期視点に立った経営姿勢は、ESGも曖昧なメッセージにせず数値目標付きで公表しています。「経営陣に中長期視点での株主価値、ステークホルダー価値の成長を促しつつ経営監督をする」という社外取締役の役割を明確にしているからこそ、これら一連のことが整合性を持ってできるのだと思われます。

味の素は、指名委員会等設置会社に移行して間もない状況ではありますが、今後の社会価値と事業価値の共創的成長と、さらなるガバナンスの進化に注目したいところです。

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