Dual Kaleidoscope 昇藤 10
出版という仕事柄、ああした奇怪な電話や脅迫まがいの文章が社に送られてくることは珍しくなく、昨日の部長に対するあの電話もそうした手合いだと判断され、取り立てて騒がれることはなかった。
実際、部長は辣腕キャリアウーマンとして何度か地元のメディアにも取り上げられているから、嫉妬した誰かが嫌がらせの電話の一本ぐらいしてくることは、そうおかしくもないだろうと僕も思っている。それに、あの部長があの程度のことであたふたするはずもなく、あの後も何事もなかったかのように仕事を続けていた。