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いい顔


毎日更新308日目。

今日は1週間ぶりの休み。

久しぶりの休みである。

たっぷりと寝て、昼ご飯を食べてから何回目か分からない「岸辺露伴は動かない」を観ながらゴロゴロした。

5月に公開される劇場版がめちゃくちゃ楽しみである。

そして充分にゴロゴロしてから出かける支度をし、富士見台駅に行ってカフェでネタを考えた後、練馬駅の方に自転車で移動した。

富士見台から練馬に行く道は、毎年この季節になると凄まじい数の桜で埋め尽くされる。

千川通りの桜並木は有名なのだ。

本当に辺り一面桜なので、圧巻の光景である。

僕はこの時期のこの道が大好きだ。

というか、こう見えて桜が好きなのである。

こんなに情緒を感じるものはない。

僕は昔から情緒を感じると「いい顔」をするクセがある。

まるで何かの物語の主人公になったかの様ないい顔をするのだ。

僕は自転車を止め、桜を眺めながら、物凄くいい顔をした。

我ながら凄くいい顔である。

2005年に発売されたケツメイシのさくらのMVに出てくる萩原聖人を完全に彷彿とさせる。

2人想い合いながら過ぎ去ってしまった恋を1人回想している切ないいい顔である。

僕はしばらくいい顔した後、ぼんやりとこう思った。


まあ、想い合った事ないけども。


彼女いない歴38年おじさんは再び桜並木の中を走る。

ここ数日の雨の影響か、道には大量の桜の花びらが落ちている。

いわゆる桜の絨毯である。

僕は桜の絨毯の上を走りながら、再びいい顔をした。

本当に凄まじくいい顔である。

桜の絨毯を2人手を繋いで歩いた帰り道、あの頃の事を思い出している顔である。

元気にしてるだろうか。

今は離れ離れになってしまったあの人の事を想う、さっきよりもさらに切ないいい顔である。

たっぷりといい顔した後、僕はまたぼんやりとこう思った。


まあ、2人手を繋いで歩いた事ないけども。

離れ離れというか、そもそも一緒になった事がないけども。


信号が赤になり、彼女いない歴38年おじさんは自転車を再び止めた。

すると風が吹き、桜吹雪が僕の前を舞った。

僕は急いでいい顔をした。

今世紀一番の物凄くいい顔である。

今にもあの人と奇跡の再会を果たしそうだ。

桜吹雪の向こうにあの人が立っていそうだ。

あの時の続きを始める事が出来そうだ。

史上最高のいい顔をした後、僕はやっぱりぼんやりこう思った。


まあ、あの人って誰の事か分からんけども。

未だかつて惜しいとこまでいった人もおらんのやけども。


信号が青になり、彼女いない歴38年おじさんは再び自転車を漕ぎ始めた。

ほんまに彼女欲しいなあ、、、と思いながら自転車を漕ぐ。

すると桜の花びらがフワッと自転車のカゴに落ちた。

それを見て、僕はもう一度いい顔をした。


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